世相閻魔帳

顕正新聞のコラム「世相閻魔帳」

検察審査会、安倍は「不起訴不当」と議決

世相閻魔帳⑫「顕正新聞」令和3年8月15日号

 安倍前首相の後援会が「桜を見る会」の前日に主催した「前夜祭」の参加者に対する飲食費用の補填問題につき、検察審査会検審)は、東京地裁特捜部が安倍を不起訴にしたことは「不当」と議決した(七月十五日付け)。特捜部は安倍を起訴するかどうかを改めて判断するため、安倍を再捜査することになる。

「桜」前夜祭問題

 「桜を見る会」とは、総理大臣が「各界において功績、功労のあった方々を招き日頃の労苦を慰労する」との名目で主催し、公費(税金)で飲み食いする公的行事である。
 常識を弁えていない安倍は、この公的行事を私物化して「各界において功績、功労のあった方々」に該当しない自身の後援会関係者を大勢招待した。安倍の事務所は後援会関係者に「『桜を見る会』あべ事務所ツアースケジュール」なるものを送付し、東京スカイツリー観光等を含むツアープランを複数提示していたという。
 安倍が「被疑者」となった理由は、「桜を見る会」の前日に安倍側が都内高級ホテルで開催した「前夜祭」において、先のツアー参加者(全員かどうかは不明)の飲食費用の一部(約七〇八万円)を安倍側が補填したという〝公職選挙法違反(犯罪)〟の疑惑が浮上し、全国の弁護士や学者ら約九四一名が安倍の刑事告発に踏み切ったからである。
 公職選挙法は選挙の公正さを担保するために、選挙区民への「寄附」を禁止している。無論、選挙区民の飲食費用を補填することは「寄附」に当たるため、安倍側が「前夜祭」に参加した後援会関係者(地元選挙区民)の飲食費用を補填したことは、公職選挙法違反(犯罪)になり得るということである。
 ところが、特捜部は安倍側が飲食費用を補填した事実を認定しておきながら、自らの怠慢に起因する証拠不足を理由に屁理屈をこね、安倍の秘書だけ略式起訴し、安倍本人については不起訴にしたのである。
 このふざけた判断を「不当」と断じ、手抜き捜査を行った特捜部はもちろん、被疑者である安倍に対しても厳しい批判を行ったのが今般の検審の議決である。

特捜部の忖度捜査

 検審の議決から明らかになったのは、特捜部が安倍に忖度し、国民を愚弄するような杜撰で手緩い捜査しかしていなかったということである。検審は特捜部に対して次のような捜査をすべきと指摘している。
 「被疑者安倍の犯意について、不足額の発生や支払等について、秘書らと被疑者安倍の供述だけでなく、メール等の客観的資料も入手した上で、被疑者安倍の犯意の有無を認定すべきである」と。
 実は、安倍は〝秘書が事務所にあった自分のポケットマネーを勝手に使って補填した〟などと弁明していた(勿論、安倍は横領の被害届等を警察に提出していない)。
 しかし、秘書らが親分である安倍のカネを無断で支出するなど常識的に考えてあり得ない。事前であれ事後であれ、秘書と安倍との間で費用補填につき何らかのやりとりがなされた可能性は非常に高い。
 ならば両者の間で交わされたメール等を入手し、安倍が費用補填という公職選挙法違反の事実を認識していたか否かを徹底的に捜査すべきであると、検審は指摘している。
 要は、特捜部は安倍が誰でもわかるウソを吐いているにもかかわらず、こうした当たり前に行うべき捜査すら行っていないのである。安倍の事務所への家宅捜索もせず、安倍への事情聴取も、安倍を不起訴にする数日前に、アリバイ作りとして一回任意で(強制ではなく「お願い」して)行っただけというお粗末ぶり。
 日産元会長カルロス・ゴーンなどをあの手この手で徹底的に追い詰めた組織と同じとは思えない。
 特捜部としては証拠不足を理由に安倍を不起訴にすることは決定事項で、その障害となる証拠や供述が出てくるのを防ぐため、意図的に必要な捜査をサボったのだろう。
 結局、検察は「厳正公正・不偏不党」などと大層な理念を掲げながら、その実態は権力者には媚び諂い、社会的弱者や気に入らない相手には容赦しない卑怯な組織というほかない。

安倍は責任を果たせ

 検審は被疑者である安倍のことも厳しく批判している。
 「政治家はもとより総理大臣であった者が、秘書がやったことだと言って関知しないという姿勢は国民感情として納得できない。国民の代表者である自覚を持ち、清廉潔白な政治活動を行い、疑義が生じた際には、きちんと説明責任を果たすべきであると考える」と。
 しかし、かかる議決を受けた安倍は被疑者の分際で「私としては今後、当局の対応を静かに見守りたいと思います」と、反省・謝罪もせずに涼しい顔で他人事のようなコメントをしたが、国民感情を逆撫ですることだけは相変わらず長けている。
 「アンダーコントロール」の大ウソで総経費三兆円以上と試算される東京五輪を招致し、リオ五輪の閉会式ではゲームキャラクター「マリオ」に扮するなど(演出費用は合計十二億円)、これまで狂ったように東京五輪を推し進めてきた「組織委員会名誉最高顧問」の安倍だが、開会式には欠席、五輪関係のSNS投稿も皆無と、存在感を消して悪目立ちしないよう図っている。何とも姑息ではないか。
 引き続き安倍の悪事を徹底的に追及し、逃げ切りを阻止しなければならない。(天皷)