世相閻魔帳

顕正新聞のコラム「世相閻魔帳」

安倍の手に堕ちた警察

世相閻魔帳⑰「顕正新聞」令和3年10月15日号

 本年九月、警察組織のトップ「警察庁長官」に中村格が、「警視総監」に大石吉彦がそれぞれ就任した。
 かかる人事は、安倍晋三前首相が「暴力装置」たる警察組織の私物化に成功した結果と評し得る。中村・大石ともに安倍の〝親衛隊〟とでも言うべき輩だからだ。

安倍の親衛隊

 中村は、安倍と昵懇の仲で安倍礼賛本を複数出版しているジャーナリスト・山口敬之(元TBSワシントン支局長)の伊藤詩織さんに対する「準強姦被疑事件」(レイプ疑惑)の際、裁判所が発付した山口の逮捕状を握り潰した前科を有する。
 簡単に説明すると、当時、警視庁の刑事部長だった中村は、当該事件を担当する高輪署員らが山口を帰国と同時に逮捕すべく「逮捕状」を携えて成田空港で待ち構えていることを知り、「安倍サマのお友達を逮捕させるわけにはいかない」などと考えたのか、慌てて山口の逮捕中止を現場に命令して従わせた。
 耳を疑うような話だが、中村自身「(逮捕は必要ないと)私が決裁した。(捜査の中止については)指揮として当然だと思います。自分として判断した覚えがあります」と、「週刊新潮」の取材に対して全く悪びれずに回答している。
 その一方、中村は安倍の秘書の息子がゲームセンターでケンカに巻き込まれたというだけで、殺人等の凶悪犯罪を担当する捜査一課の精鋭部隊を投入、加害者を迅速に逮捕させることで安倍への忠誠心をアピールしてみせた。
 安倍の関係者が「卑劣な性犯罪」の被疑者となれば、逮捕状を握り潰して街中を我が物顔で闊歩することを許容、一方で安倍の関係者が「ゲームセンターでのケンカ」に巻き込まれれば警察権力を容赦なく行使して相手を逮捕…中村の判断は明らかに異常だ。
 中村は、少なくとも安倍の関係者が絡む事件では真相究明ではなく「安倍が喜ぶ結果の実現」を目指し、恣意的に警察権力を行使していると言い得る。
 他にも、中村は安倍政権下では菅官房長官(当時)の秘書官も務めていたが、テレビの報道番組等で安倍政権を批判する発言等を見つけ次第、テレビ局に猛抗議するという迷惑千万な行動に及んでいたという。
 古賀茂明氏(元経産省幹部官僚)によると、古賀氏がテレビ朝日の報道番組で「I am not ABE」と掲げて安倍を批判したところ、中村は激怒してテレビ朝日の幹部に直接抗議のメールを送信、その内容は激烈な言葉で古賀氏への非難を綴ったものだったという。
 情けないことに中村から抗議を受けたテレビ朝日は震え上がり、局幹部が対応策を協議して古賀氏の降板を決定してしまった。圧力をかけて安倍批判の言論を封殺してみせた中村の所為は明らかに常軌を逸している。
 「警視総監」に就任した大石も、平成二十四年から約六年間にわたって首相秘書官として安倍を支えた安倍親衛隊の一人。
 大石は秘書官を務めた後、県警の本部長などを経ずに一気に警察庁の「警備局長」という異例の大抜擢、令和元年の参院選では全国都道府県警トップに宛てて「警護に当たっては、警察の政治的中立性に疑念を抱かれることのないよう十分配意すること」などと異例の通達を出し、応援演説中の安倍にヤジを飛ばしただけの一般市民を次々と容赦なく強制排除した。
 中村・大石という安倍親衛隊が警察ツートップに揃って就任し、今後警察全体を統括指揮していくという事態は、国家・国民にとって「悪夢」としか言いようがない。

論功行賞人事

 問題の警察関係の人事はこれだけではない。本年に入り、安倍と関係の深い人物が〝論功行賞〟で警察の重要ポストに就いているように見受けられる。
 一例を挙げれば、二月十五日付けで「埼玉県警本部長」に就任した原和也は、大石と同じく安倍の秘書官を務めた安倍親衛隊の一人だ。原は本部長就任後も安倍への「恩返し」を欠かさない。
 と言うのも本年九月、原が統括指揮する埼玉県警は、国会で「桜を見る会」等の安倍に関する疑惑を徹底追及してきた共産党の山添拓参議院議員を「鉄道営業法違反」の容疑で書類送検した(その後「不起訴処分」となった)。
 山添議員が何をしたのかと言えば、昨年十一月、埼玉県内で鉄道関連のイベントが開催された際、いわゆる勝手踏切(私設の踏切。全国に一万七千箇所もある)を列車が接近していない時間帯に、通行可能な道と誤解して約一秒程度で渡っただけ。
 厳重注意で終えてよさそうなこの小さな事件を、わざわざ事件発生から約十一か月も経過した時点で書類送検する必要性はない。
 原の狙いは「総選挙直前」というタイミングで野党共闘にダメージを与え、安倍の傀儡が率いる自民党の選挙大勝利をアシストすることにあったと窺われる。

安倍を排除せよ

 令和二年、森友・加計・桜・河井等の自身に関する疑惑を捜査機関(警察と検察)に追及されることを何よりも恐れる安倍は、被疑者を裁判にかけるか否かの判断権を有する「検察」のトップに「官邸の番犬」こと黒川弘務を据えようと、検察庁法の改正を目論んだ。
 しかし、黒川の賭けマージャン問題発覚によって安倍の企みは脆くも崩壊、疑惑追及を恐れるあまり安倍は仮病を使ってそそくさと退陣。
 後釜に据えられた傀儡の菅は、安倍の意向を汲み、先述のとおり「警察庁長官」など警察の重要ポストに安倍親衛隊を配置、捜査機関の一角たる警察を実質的に安倍の支配下に置くことに成功した。
 結局のところ、新型コロナから国民の生命をまともに守れなかった菅政権は、安倍の政治生命を守るためだけの存在だったといえる。
 新たに自民党総裁に就任した岸田文雄も安倍の傀儡。森友事件の再調査実施を仄めかして安倍の逆鱗に触れ、慌てて前言撤回するようなブレブレの日和見野郎だ。
 安倍が隠然たる力を保持している以上、もはや警察は安倍の〝秘密警察〟として反安倍勢力の取締り等を任務とする私的組織に成り下がるだろう。まさに暗黒時代の到来、諸悪の根源たる安倍を政界から追放しない限り事態は何ら変わらない。
 一刻も早く、無恥・無能・無責任の三拍子揃った亡国の政治家・安倍晋三を政界から排除しなければならない。(天皷)