橋下徹と維新は安倍の補完勢力

世相閻魔帳㉜「顕正新聞」令和4年3月25日号

 近年、日本維新の会の創業者である橋下徹のメディア露出が甚だしい。昨年1年間のテレビ出演回数は250回超というから驚きだ。
 橋下と言えば、「2万%出ない」と断言していた大阪府知事選(平成20年1月)に出馬して当選、その後、大阪市長や「大阪維新の会」と「日本維新の会」の代表等を務め、現在は政治評論家・弁護士として活動している。
 橋下が大阪府知事選に出馬する約1年前に出版した著書「まっとう勝負!」(小学館)には、「政治家を志すっちゅうのは、権力欲、名誉欲の最高峰だよ。……自分の権力欲、名誉欲を達成する手段として、嫌々国民のため、お国のために奉仕しなければならないわけよ」、「ウソをつけない奴は政治家と弁護士にはなれないよ!」、「ウソをつかない奴は人間じゃねえよ」等の記述がある。
 また、橋下の著書「図説 心理戦で絶対負けない交渉術」(日本文芸社)には、「私は、交渉の過程で〝うそ〟も含めた言い訳が必要になる場合もあると考えている。自身のミスから窮地に陥ってしまった状況では特にそうだ」、「たとえ話で論理をすり替え相手を錯覚させる!」とあるが、橋下は詭弁家で多弁・強弁と言い得るし「詐欺師」と評する評論家もいる。
 その具体例を挙げれば、維新の党是である「大阪都構想」(権限の強い政令指定都市である大阪市を廃止・解体し、権限の弱い特別区に分割する構想)について、橋下はテレビで反対派と議論した際(平成27年5月1日)、「反対派は大阪市がなくなると言うが、なくなるのは大阪市役所と大阪市という住所表記だけだ」との詭弁を展開して「大阪市廃止」という重大な事実を誤魔化した。
 当時、橋下及び大阪維新の会が精力的に行っていたタウンミーティングに参加したある評論家は、橋下のやり口を「心理学の手法を応用した巧妙な詐欺である。その場では検証できない数値や嘘を積み重ねていくので、ある程度の教育を受けた人でも事前に情報や知識がなければ騙されてしまう」と記している。結局、「橋下らの狙いは大阪市民からカネを騙し取り、府の借金返済に流用したり、湾岸部にカジノを建設し、そこへアクセスする交通網を整備することだろう。そこに莫大な利権があることは容易に想像がつく」(「新潮45」2015年11月号)と痛烈に喝破している。
 そんな橋下だが、現在「めざまし8」(フジ)、「日曜報道 THE PRIME」(フジ)等のテレビ番組にレギュラー出演し、インターネットテレビ「Abema」(代表取締役社長は安倍応援団の「新経済連盟」において副代表理事を務める藤田晋)では「NewsBAR橋下」という冠番組も持ち、ツイッターのフォロワー数(橋下の投稿内容を受け取っている人数)も約270万人(国内40位)と、極めて強い発信力を有するに至っている。
 今回は「なぜ、橋下がテレビへの露出が多いのか。それは誰にとって好都合か」について考えてみたい。

橋下と安倍の蜜月ぶり

 そもそも、橋下と維新は自民党と同じく憲法改正を目指す改憲勢力であるため、共に協力し合って改憲を進めるという意味において、橋下と維新は〝自民党の補完勢力〟と言える。
 実際、維新は昨年10月の衆院選において、安倍の悪政等に嫌気が差して自民党に投票する気が失せ、さりとて野党にも投票したくない者たちの受け皿となって41議席も獲得し、改憲勢力議席を大きく伸ばす結果となった。
 無論、その背景には橋下が連日メディア等で野党を徹底的に叩く一方、維新をPRないし擁護していた影響も大きいだろう。
 また、橋下は大阪市長時代の定例会見(平成27年1月15日)で、改憲を目指す安倍に協力できることは何でもするとして、安倍の補完勢力になる旨を堂々と宣言している。いわく
 「憲法改正は絶対必要ですね。もう安倍総理しか、もうできないと思いますね。……総理も大変だと思いますけど、なんとか成し遂げて頂きたいなと思いますね。まぁその予行練習ですよ、大阪都構想は。……憲法改正における国民投票と同じような形でね、これから住民投票やるわけですから
 「(安倍への協力は)できることは何でもしたいと思いますけどね」と。
 さながら極右団体「日本会議」のシンパのような発言だが、注目すべきは、橋下が「大阪都構想」を憲法改正における国民投票の「予行練習」と位置付けていることだ。橋下と維新からすれば憲法改正を想定した「予行練習」の回数は多いに越したことはない。
 平成27年に「大阪都構想」の是非を問う住民投票を行って否決された後、維新の連中は懲りずに令和2年にも再び住民投票を実施(結果はまた否決)したが、その背景には「予行練習」という思惑が少なからずあったのだろう。
 さらに令和2年6月、橋下は自身の冠番組に安倍を招き、安倍に憲法改正の必要性等を熱弁させているが、これが安倍と結託して改憲を推し進めるための一環だったことは疑いない。
 加えて、橋下は盟友である維新代表の松井一郎(現大阪市長)と共に、平成27年から5年連続で当時官房長官だった菅義偉と年末に会食をしているが、その場に安倍が出席したことも何度かあり、4人で憲法改正等について議論している。
 なお、橋下は「靖国神社に首相と陛下に参拝いただくことが絶対目標です。そのための手段として靖国の国立化。もともとこのような施設は宗教法人管理ではなく、国立にすべきものです」(令和元年7月2日)などとツイッターで主張したこともあるため、橋下の思想的立場は改憲して「神国日本」を目指す日本会議と親和性が高いようにも窺われる。

維新幹部も安倍と昵懇

 ちなみに、維新代表の松井も安倍と昵懇の仲だ。
 平成24年2月26日、日本会議のダミー団体「日本教育再生機構」の理事長で安倍のブレーンといわれる八木秀次と、同機構大阪の会長でその後「日本会議国会議員懇談会」の事務局長を務めた遠藤敬(現維新の国対委員長)の両名が企画したシンポジウムにおいて、安倍と松井は仲良く対談している。
 しかも、対談後の打ち上げには、安倍の側近で、日本会議事務総長・椛島有三の同志である衛藤晟一や、松井と親しく、「日本会議国会議員懇談会」の副会長を務めた馬場伸幸(現維新の共同代表)らも出席している。要は、安倍と維新の蜜月を深めることがシンポジウムの真の目的だったわけだ。
 また同年6月、松井は、当時「日本会議国会議員懇談会」の会長だった平沼赳夫(現自民党衆院議員)が最高顧問で、安倍が代表を務める右派議連「創生『日本』」の総会にもゲストとして出席・講演している。
 余談だが、平沼は日本会議の母体たる邪教生長の家」の教祖・谷口雅春の信奉者であることを公言しており、かつては維新で国会議員団代表を務めていた。

巧みな世論誘導に警戒

 このように橋下・維新と安倍の蜜月は言うまでもなく、維新幹部らも日本会議と繋がりを有している。今後、これらの輩は憲法改正を強力に推し進めていくだろう。実際、松井と馬場は「(令和4年の)参院選と同時に国民投票を」などと主張している。
 そうした主張を国民の多数意見に昇華させるべく、強力な発信力をフル活用して巧みに世論を誘導する役割を担っているのが橋下なのだろう。橋下の出演番組の多くはフジテレビだが、このこととフジサンケイグループ代表・日枝久が安倍のゴルフ仲間ということが全くの無関係とは考えがたい。
 時には改憲以外のテーマで政府の政策等を批判してみせる橋下のことを、国民の多くが「中立的で真っ当な政治評論家」と認識し、その言説を無警戒で受け入れている傾向にあるが、かかる状況を見てほくそ笑んでいるのが安倍や日本会議というわけだ。
 橋下自身が積極的に「神国日本」を目指しているかは知らないが、安倍と結託して改憲を推し進める橋下の言説には警戒する必要がある。(天皷)