安倍・橋下の「手のひら返し」

世相閻魔帳㉞「顕正新聞」令和4年4月15日号

 本年3月19日、安倍晋三元首相は「近畿大学」の卒業式に出没した。ちなみに近畿大学といえば、安倍のお友達で内閣官房副長官経済産業大臣等を歴任した世耕弘成の祖父が創立した大学で、現在は弘成が理事長を務めている。
 式場には仰々しい効果音と映像が流れ、壇上のスクリーンには「稀代のリーダーが卒業生に贈る」として安倍のこれまでの経歴がこれ見よがしに延々と紹介された。「稀代のペテン師」の間違いではないかと思いを巡らせていると、聴くに堪えないヘタクソな安倍のピアノ演奏の映像が流れ始めた。すると、舞台袖からニヤニヤと気持ち悪い笑みを浮かべた安倍が登場した。
 この異常なまでの自己顕示欲に吐き気を催しながら講演を聞いてみると、安倍は第一次安倍政権の失敗をダラダラ語った後、「大切なことは、そこから立ち上がることです。そして失敗から学べれば、もっと素晴らしい」と、あたかも第二次安倍政権が失敗から学んで素晴らしい成果を残したかのような口振りだった。北方領土を巡る対ロ外交で屈辱的な醜態を晒した御仁がロシアによるウクライナ侵攻を横目に〝どの口が言う〟と言いたい。

屈辱的外交を反省せず

 本コラム「プーチンに佞媚な安倍の屈辱外交」(本年3月5日号)でも記したとおり、安倍は〝プーチンに諂えば北方領土を返還してもらえる〟との大甘な見通しを立て、飼い犬のごとくプーチンに媚を売り続けた。余談だが安倍が食事をする様子を撮影した動画を見ると、彼は「犬食い」で「迎え舌」、正しい箸の持ち方も知らないようだ。育ちの悪さが窺われる。
 平成29年、安倍はプーチンの飼い犬(秋田犬)に「ペロッとなめていただいた」と敬語を使い、北方領土共同開発の名目で、なぜかロシア人の健康増進を図る「肥満予防医療プログラム」等を含む約3000億円もの巨額な経済支援を打ち出し、ついには公衆の面前で
 「ウラジーミル。君と僕は、同じ未来を見ている。行きましょう。ロシアの若人のために。そして、日本の未来を担う人々のために。ゴールまで、ウラジーミル、2人の力で、駆けて、駆け、駆け抜けようではありませんか」と気色悪いポエムを披露した。
 こうした安倍の諂い外交は全く功を奏さず、プーチンは令和元年9月6日に「(北方領土第二次世界大戦で)スターリンがすべてを手に入れた。議論は終わりだ」と一方的に宣言して翌年にロシア憲法を改正、北方領土を絶対に返還せず、今後一切日本との交渉にも応じないと決定した。これ偏に安倍のプーチンに対する諂いと無能さが原因と言わねばなるまい。
 かかる外交上の大失態を演じたにもかかわらず、安倍は微塵も反省していなかった。
 本年3月22日に発売された安倍応援メディアの「月刊Hanada」(5月号)のインタビューにおいて、安倍はまたぞろプーチンとの関係を「平和条約交渉をより大きく進めることができた」などと唖然とするウソをつき、〝27回もプーチンと会談して「いったい何をしていたのか」「騙されたのか」等の非難の声をどう受け止めるか〟という趣旨の質問に対しては、「何度も会談するのは当然であり、非難の意図が全くわかりませんね」と逆ギレする始末。
 また、同インタビューで安倍はロシアのウクライナ侵攻に関し、「ロシアが武力行使をするかどうか考えている間に、米国もウクライナも、もっと早く明確に対応すべきでした。……(バイデン米大統領は)もっと早くにロシアに接触し、交渉を始めておくべきでした。つまり、相手(プーチン)の意志を見誤ったのです」などと自身がプーチンに完全に手玉に取られたことを棚に上げ、上から目線で非難しているのだからどうかしている。

ウクライナにすり寄る

 プーチンに媚びる安倍の悪い癖は、ロシアのウクライナ侵攻が始まった本年2月24日以降も完全に抜けてはいなかった。
 同月27日のテレビ番組で安倍は、「(プーチンは)領土的野心ではなくロシアの権益の防衛・安全の確保という観点から行動を起こしている」と、「それを私は正当化するわけではない」と言いつつもプーチンの行動に一定の合理性を認め、遠回しにプーチンを擁護。先の月刊「Hanada」のインタビューでも安倍は同趣旨の発言をしている。
 また、安倍は3月12日に岸田首相の特使として訪問したマレーシア国内の大学で約35分間にわたり講演し、終盤に僅か50秒だけ申しわけ程度にウクライナ侵攻について言及。しかし、プーチンに忖度してか「ロシア」「プーチン」「侵攻」等の言葉は一切口に出さず、「ウクライナにおいて我々が目にしている危機は、力による一方的な現状変更の試みであり……反対の声を上げていくべきです」と抽象的で生温い批判しかしないという腑抜けぶりだった(だが、NHK等のマスコミは安倍が同講演でロシアを厳しく批判したかのような報道をしているから理解に苦しむ)。
 ところが、3月半ばからウクライナのゼレンスキー大統領がアメリカ・イギリス・カナダなどの議会でオンライン演説し、3月23日には日本の国会でも行い、それらに世界の人々が肯定的な反応を示していることが分かるや否や、安倍は自身と「同じ未来」を見ていたプーチンとの懇親などなかったかのようにゼレンスキー大統領にすり寄り始めた。
 日本の国会での同大統領の演説翌日、安倍は自身のツイッター(SNS)に「日本はウクライナ国民と共にある」等の短文とともにゼレンスキー大統領とのツーショット写真を投稿し、唐突に〝ゼレンスキー大統領との蜜月ぶり〟をアピールし始めたのだ。
 だが、これまでの安倍の諂い対ロ外交がプーチンを増長させ、今般のウクライナ侵攻の遠因の一つになったと見る余地もある。つまり、安倍はウクライナから〝プーチンの手先〟と名指しで非難されて然るべき立場にあるのだ。
 そうであれば、安倍はウクライナに寄り添っているかのようなパフォーマンスを演じる前に、まずはゼレンスキー大統領とウクライナ国民に対して謝罪すべきだろう(もはや謝罪して済む問題ではないが)。

橋下徹の「手のひら返し」

 安倍と同じくゼレンスキー大統領の国会演説の翌日に、ロシアのウクライナ侵攻に関する持論を大幅に修正した人物がいる。安倍の補完勢力と評すべき橋下徹(弁護士・政治評論家)だ。
 従前、橋下は〝ウクライナは降伏すべき〟〝(ウクライナ国民は)国外退避しろ〟等の主張をテレビ番組等で繰り広げ、ツイッターでは「ウクライナとともにあると威勢よく言っていた国会議員は直ちにウクライナに行って戦え」(2月27日)などと無茶苦茶な投稿をしていた。
 しかし、橋下はゼレンスキー大統領の国会演説の翌日、「ウクライナ兵の決死の戦闘に敬意。終結するまでロシア軍を叩き潰すしかない」などとツイッターに投稿。これまでの〝降伏すべき〟等の主張とは正反対の主張を展開し始めたのだ。「手のひら返し」と言う他ない。
 思うに、安倍や橋下などは自身の確固たる信念等に基づいた主張をしているのではなく、国民のウケを狙い、メディアで話題になりそうなやや突飛な主張をしてみせているに過ぎず、だからこそ、情勢が変われば平然とそれまでとは正反対の主張をすることができるのだろう。
 利己的な安倍や橋下などの腐った政治家や評論家が跋扈し、政治や世論を主導する姿には暗澹たる思いしか湧かない。(天皷)