世相閻魔帳

顕正新聞のコラム「世相閻魔帳」

またぞろ出てきた「桜を見る会」の違法行為

世相閻魔帳㊵「顕正新聞」令和4年6月15日号

 安倍晋三が首相在任中に118回も国会で虚偽答弁をした「桜を見る会」前夜祭問題に関し、「しんぶん赤旗 日曜版」(本年5月29日号)が新たな疑惑をスクープしたため、その内容等を本コラムで取り上げておく。

桜前夜祭問題

 桜前夜祭問題とは、安倍事務所が「桜を見る会」の前日、都内の高級ホテルに後援会関係者等を招待して豪勢な「前夜祭」を開催し、参加者から徴収した会費で足りなかった分の費用(合計約708万円)を補てんしていたというもの。
 なぜこれが問題かと言うと、安倍側が前夜祭に参加した後援会関係者(選挙区民)の会費を補てんすることは公職選挙法公選法)が禁止している違法な「寄附」に当たるとして、「公選法違反」という犯罪が成立する可能性があるからだ。
 そのため、全国の弁護士や学者ら約941名が安倍を刑事告発したところ、東京地検特捜部は安倍が否定していた「安倍側が会費を補てんした事実」を認定した。
 しかし、安倍が罪に問われることはなかった。腑抜けな特捜部は安倍の権力を前に腰砕けとなって手緩い捜査に終始したばかりか、〝秘書が勝手に事務所のカネで補てんした〟という常識的に考えてあり得ない安倍のウソを聞き入れて安倍を不起訴とし、安倍の公設第1秘書だった配川博之を「政治資金規正法違反(不記載)」という微罪で略式起訴することで終結させてしまったのだ。
 自らに累が及ぶのを避けるために〝秘書が横領した〟と言わんばかりのウソを平然と吐いた安倍のペテン師ぶり(安倍は配川を辞職させた後、すぐに私設秘書として復職させている)、また、権力に屈したにもかかわらず未だ「厳正公正・不偏不党」などと看板倒れの理念を掲げている検察の厚顔無恥と腑抜けぶりには憤激が込み上げてくる。

大量の酒で隠蔽工作

 さて、今回のスクープで明らかになったのは、〝安倍側が会費を補てんしただけでなく、会場に大量の酒を持ち込んで参加者に振る舞っていた〟という事実だ。
 選挙区民に酒を振舞うことが違法な「寄附」に当たり得ることは論を俟たないが、注目すべきは安倍側が大量の酒を持ち込んだ動機だ。この点について、会場となったホテル側との契約交渉を担当した安倍の東京事務所の秘書は、取調べで次のように供述したという。
 「(会費の)不足分を、安倍代議士個人や安倍代議士の関係政治団体が負担することになれば、前夜祭に参加した地元の有権者に対する寄附に該当し公職選挙法に違反するおそれがあることは分かっていました。そのため、私は、前夜祭の会場でホテルから提供される飲食の代金を抑えるため、前夜祭の会場にお酒を持ち込んだ」と。
 要するに、安倍側は会費の補てんが「公選法違反」という犯罪に当たり得ることを重々認識した上で、補てん額を抑えるために大量の酒を会場のホテルに持ち込むという「隠蔽工作」を行ったというのだ。違法寄附(会費の補てん)を、違法寄附(持ち込んだ大量の酒を振舞う)で隠蔽しようとする精神構造には恐れ入る。

サントリーが無償提供

 赤旗のスクープはそれだけにとどまらなかった。なんと安倍側が振舞った大量の酒は「サントリー」から無償提供されたものだったのだ。
 サントリー赤旗の取材に対し「会の開催については、安倍議員事務所から教えていただきました。多くの方が集まる会だとお聞きし、弊社製品を知っていただく良い機会と考え、この会に協賛させていただいた」、酒の代金は「無償」、その金額は「15万円程度」などと回答したという。
 しかし、政治資金規正法は企業の政治家個人への寄附(酒の提供も寄附に当たる)を禁じているため、サントリーが政党でも政治資金団体でもない安倍の後援会に酒を提供したことは違法な寄附に当たり得る。
 大体、サントリー(秘書部)は安倍事務所から直接連絡を受けている以上、宣伝目的で酒を提供したという説明は俄かに信じ難い。〝違法企業献金〟との認識が相当程度あったはずだ。
 ちなみに、東京新聞が同業他社を取材したところ、キリンは「たとえ要請があっても政治家に無償で製品を提供することはない」と説明し、アサヒも「お客さまにお金を支払って購入していただくものなので、政治家のパーティーなどに提供することはない」と話したという。サントリーの無償提供が大問題であることは明白だ。
 なお、安倍側の政治資金収支報告書にはサントリーから寄附を受けた事実について記載が無いという。そうなれば「政治資金規正法違反」に当たり得る。
 安倍が政治家失格であることは言わずもがなだが、こうした事実を全て把握しながら安倍を不起訴とした検察の罪は極めて重い。

新浪社長はアベ友

 実は、サントリー新浪剛史社長は、加計問題の加計孝太郎(加計学園理事長)らと同じく〝アベ友〟と言い得る人物なのだ。
 平成26年にサントリーの社長に就任する前から新浪社長は安倍と距離が近いと評され、第二次安倍政権では「産業競争力会議」や「経済財政諮問会議」の民間議員に起用されたほか、プライベートでも休日に安倍とゴルフに興じ、夫人同伴でクラシックを鑑賞する仲だという。そうした関係からかは不明だが、サントリー自民党政治資金団体に毎年500万円前後も献金している。
 また、政府・自民党は平成27年度と平成28年度の二度にわたりビール類の酒税見直し(ビールを減税する一方、発泡酒と「第三のビール」を増税し、将来的にビール類の税額を一本化する)の先送りを決定したが、それらの決定がなされる直前、安倍と新浪社長そして酒税を担当していた麻生太郎財務相(当時)が会食・懇談等をしていた。要するに、発泡酒と「第三のビール」の出荷比率が高いサントリーはそれらが増税されると販売量が落ちて大打撃を受ける可能性があったため、安倍がお友達の会社であるサントリーを守ろうと公正・公平が要求される政治を私物化し、酒税見直しの先送りを決定した疑いがあるのだ。
 こうした両者の関係性や酒税見直しの先送り決定等が、サントリーが前夜祭で酒を無償提供したことに繋がったと考えられる。実際、安倍と新浪社長は平成30年及び平成31年の前夜祭約1週間前に面談、会食をしていたことが判明している。その場で以て「隠蔽工作」としてタダ酒を振る舞うことについて謀議していたのではないか、と疑われても文句は言えまい。
 しかし、テレビ・大新聞等の大手メディアは政権と大スポンサーであるサントリーに忖度し、サントリーの言い分をそのまま垂れ流しているだけ。権力や強者の不正を批判しない一方、弱者叩きは徹底的に行う昨今のメディアの劣化ぶりは目に余る。
 各界功労者の慰労を目的として税金で飲み食いする「桜を見る会」を私物化し、人気取りのために後援会関係者や著名人、芸能人、さらには反社会的勢力と見られる人物や悪徳マルチ商法で逮捕された「ジャパンライフ」の元会長等までも招待したほか、「前夜祭」では公選法に抵触し得る行為に及ぶと同時にその隠蔽工作まで周到に行っていた安倍とその取り巻きたちは、日本にとって「害悪」でしかない。
 冷酷非道な安倍の逃げ切りを許さないためにも、「桜を見る会」に関する数々の大問題を引き続き徹底追及していく必要がある。(天皷)