ヘッジファンドの餌食になる日銀

世相閻魔帳㊹「顕正新聞」令和4年7月25日号

 六月度総幹部会において浅井先生は
 「円安がさらに進行すれば、エネルギー・食糧などの輸入によりインフレがますます昂進する。これを抑えるには金利を上げる以外にはないが、金利を上げれば国債が暴落して資産が劣化する。よって日銀はいま進退両難に陥っている
 「債務超過に陥った中央銀行が発行する通貨など、世界の市場が信認するはずがない。かくて日本はまもなく制御不能ハイパーインフレに陥る
 と指導下されたが、本年6月より日銀にとって忌まわしい事態が発生している。
 それは海外ヘッジファンドデリバティブ空売り等の様々な手法を用いて絶対利益を追求するファンド。世界の相場の乱高下を加速させる要因となっている)が日銀に対して攻撃を仕掛け始めたのだ。以下、概要を述べる。

日銀対ヘッジファンド

 ヘッジファンドは、世界的なインフレ昂進により各国の金利が上昇する中、日銀がその流れに逆らって長期金利が上がらないよう利回りを指し値して高値で国債を買い入れる政策(イールドカーブコントロール=本来は市場で決まる長期金利を日銀がコントロールしようとする特異な政策)を続行していることに着目。
 「現在の日銀の政策は世界的・歴史的に見て非常識。このような政策を長く続けられるはずがない。間もなく日銀は政策変更を余儀なくされる」との見通しを立てたヘッジファンドは、日銀が長期金利の上昇を抑え切れなくなった際に巨額の利益を得られるよう「日本国債」の先物等を使って売り浴びせる攻撃を仕掛けてきた(国債価格を下落させ、金利を上昇させたい)。
 これに対し、日銀は自らが設定した防衛ラインの金利長期金利上限0.25%)に抑え込むまで毎営業日国債を無制限に買い入れる「指し値オペ」で対抗(国債価格が下落しないように買い支え、金利上昇を抑え込みたい)。
 結果、本年6月の日銀の国債買入額は、それまで月間として過去最大だった平成28年4月の11兆円を大きく上回る16兆円にまで膨らみ、国債発行残高に占める日銀の保有割合も50%を突破した。異次元金融緩和でブクブクになった日銀は相当追い込まれていると言えよう。
 実際、ヘッジファンドは6月の複数日に一時的とはいえ日銀の防衛ラインを打ち破り、長期金利を0.3%超まで急騰させた。あるヘッジファンドの代表は「(日銀は)75%の確率で年内にイールドカーブコントロールを放棄するだろう」、「リスクとリターンを比較したときに、日本国債売りは魅力的なトレード」と強気の姿勢を崩していない。
 もしヘッジファンドの攻撃に日銀が対抗できず敗北すれば、国債価格が下落(長期金利は急騰)して政府の下請けとなって爆買してきた多額の国債に含み損が発生し、日銀は実質的な債務超過に陥る。そのため、日銀は是が非でも国債を無制限に買い続けて金利上昇を抑え込まなければならないのであるが、このような歪な政策をいつまでも続けられる筈がない。
 たとえ日銀がヘッジファンドとの戦いに勝利しても、依然として金利が上昇した途端に日銀が債務超過に陥るという状態は何ら変わらず、日銀が金利上昇を抑え込んでいる間に各国との金利差が拡大して円安がさらに進行し、輸入に頼っている日本は物価が高騰して庶民生活はますます苦しくなる。
 イギリスの中央銀行であるイングランド銀行は平成4年、著名な投資家であるジョージ・ソロス率いるヘッジファンドが、イギリス経済が低迷しているにも拘わらずポンド(イギリスの通貨)が過大評価されているとの考えに基づき、ポンドを大量に空売りした際、懸命にポンドを買い支えたが最終的にはポンドの大暴落を止めることができず敗北した。
 その結果、ソロスのファンドは10億から20億ドル(当時の為替で1200億円から2400億円)の利益を得て、ソロスは「イングランド銀行を潰した男」と評されるようになった。日銀がかつてのイングランド銀行と同じ道を辿る可能性は十分ある。
 以上、今般の日銀とヘッジファンドとの戦いを譬えれば「放っておいても遅かれ早かれ死ぬ運命にある『死に体』の日銀が、弱った獲物の肉を狙う『ハゲタカ』のごときヘッジファンドから襲撃を受けている」、「負ければ死、勝っても容体が悪化して死期が早まる」といったところであろうか。

安倍の大罪

 そもそも「異次元金融緩和を止めたら金利が上昇して日銀が債務超過に陥る」という崖っぷちの状況に日本を追い込んだ元凶は、安倍晋三元首相が打ち出した経済政策「アベノミクス」に他ならない。
 安倍の下請けとなって異次元金融緩和を黒田日銀がダラダラと続行した結果、日銀の保有する国債は本年6月30日時点で542兆円という異常な額にまで膨張してしまった。
 本年6月28日付の日本経済新聞によれば、6月15日に日銀が保有する国債が一時、含み損に陥ったという。みずほ証券の試算では長期金利が0.65%に達した場合、日銀が保有する国債の含み損が日銀の自己資本10.9兆円を上回り、「実質的な債務超過とみなされるリスクがある」という。
 また、ブルームバーグの試算によると、日銀が市場の圧力に屈してイールドカーブコントロールを放棄して、日本国債金利が1%上振れした場合、日銀は29兆円の含み損を抱えることになるという。
 畢竟、アベノミクスなるバカげた政策は日銀の財務内容を著しく悪化させ、政府の財政赤字をGDP比260%超という世界最悪の状況にして、日本を破産寸前の状態にしてしまったのだ。
 債務超過に陥った中央銀行が世界の信認を失うことは疑いない。そのとき、円は暴落し、制御不能ハイパーインフレが日本を襲うことになる。しかも日本の経済崩壊は国内だけに止まらず世界に及び、「前代未聞の大闘諍」たる第三次世界大戦を誘発する。
 本年1月、浅井先生は「米国の利上げが始まる本年こそ、日本が金融崩壊・経済崩壊へ向かうターニングポイントになる」と指導下されたが、「アベノミクス」というペテン政策を推し進めた安倍晋三の大罪は計り知れない。(天皷)