世相閻魔帳

顕正新聞のコラム「世相閻魔帳」

汚点として歴史に刻まれた「安倍の国葬」

世相閻魔帳52「顕正新聞」令和4年10月15日号

 本年9月27日、国民の約6割が反対する中、安倍晋三の「国葬」が日本武道館で実施された。
 国葬に法的根拠が無いとか、費用が高額という点を強調して反対の声を上げる人が多く見られたが、そもそも安倍は悪政の限りを尽くして日本の亡国を決定付けた輩であるゆえに国葬に値しないのである。
 自民党衆院議員の村上誠一郎(元行政改革担当相)は、安倍のことを「財政、金融、外交をぼろぼろにし、官僚機構まで壊した。国賊だ」と評し、国葬への反対と欠席を表明したが、これが今回の国葬に際して政治家がとるべき当然の行動と言えよう。
 一方、安倍礼賛記事ばかりの極右雑誌は「国葬反対派はバカか売国奴」と題する記事等を掲載し、SNS上の狂信的なアベ信者に至っては国葬当日に「安倍晋三は日本の神となった!」「人としての安倍さんはおわり今日から日本を護る神として安倍晋三は生きる」などと投稿する始末。嘆息の他ない。

安倍は売国奴国賊

 そもそも安倍は、霊感商法合同結婚式等の反社会的行為で日本を食い物にし、日本人の拉致や日本へのミサイル発射を繰り返す北朝鮮との結び付きまで指摘されている統一教会とズブズブの関係にあり、その総裁・韓鶴子に敬意まで表していた。
 また、安倍は北方領土を巡る交渉において、終戦直前に北方四島を略奪して日本人に非道・暴虐の限りを尽くし、今なお不法占拠を続けるロシアのプーチンに媚び諂うという屈辱的な外交に終始した挙句、北方四島を事実上〝献上〟してしまった。
 これら日本の政治家にあるまじき恥ずべき所行に及んだ安倍が「売国奴」であり「国賊」であることは、もはや誰の目にも明らかだ。
 かかる事実を無視黙殺し、安倍の国葬に反対する人々に「バカか売国奴」などとレッテルを貼って攻撃していた安倍応援団こそ「バカかつ売国奴」と言えよう。

国葬強行の狙い

 思うに、自民党の面々が安倍の国葬を強行した狙いの一つは、国葬の場で皇族や海外要人が安倍の遺影に向かって頭を下げたり献花したりする事実を以て、無智な国民に「安倍は偉大な人物」と誤解させ、数多の悪政や疑惑に蓋をすることにあったのだろう。まさに、安倍のドス黒い疑惑を闇に葬る「黒葬」というわけだ。
 しかし、安倍の国葬は大失敗に終わり、その狙いは不発に終わった。「日本人として恥ずかしくなった」という声まで飛び交う有様で、朝日新聞国葬後に行った世論調査では、国葬実施を「評価しない」は59%、「評価する」は僅か35%に過ぎなかった。
 以下、国葬当日の会場の様子を簡単に振り返る。

グダグダな「酷葬」

 開始時刻になると葬儀委員長の岸田と安倍の遺骨を抱えた安倍昭恵がガラガラの会場に入場。驚いたことに、国葬と言いながら、喪主は「国」ではなく「安倍昭恵」だったのだ。これでは「家族葬」ではないか。
 黙とう等が終わると、会場のスクリーンにあたかも安倍が日本を良い方向に導いたかのような欺瞞と虚飾に満ち満ちた内容の「プロモーションビデオ」が約10分も流れ、その後、岸田や菅義偉前首相らの弔辞等がダラダラと続く。
 開始から約2時間が経過してようやく海外要人の献花が始まったが、ろくに事前説明がなかったのか、献花台の前で困惑し周囲の様子を確認しながら献花する人、面倒くさそうに手早く片手で投げるように献花する人の姿も見られた。
 終には献花を終えた人がなかなか会場から出られず行列ができてしまい、それが献花台の前まで伸びて献花が一時中断する事態に。約2万人の警察官を動員して大規模な交通規制をしていたにもかかわらず、会場前での交通整理をまともに行えず、海外要人が迎えの車にスムーズに乗れなかったというのだ。
 そのため終了時間がどんどん押してしまい、最終的に終了時間は予定より1時間以上もオーバー。時間を持て余して居眠りしたり、大声で談笑したり、安倍の遺影を前にスマホで自撮りしたり、「いつまで待たせるつもりだ。早く献花させろ!」と怒鳴り出す者までいたという。何ともお粗末な「酷葬」だ。

グロテスクな菅の弔辞

 国葬の企画・演出等を担当したのが平成27年から5年連続で「桜を見る会」の会場設営を担当していた政府御用達のイベント会社であったことや、G7(主要7か国)の現職首脳が一人も国葬に参列しなかったため「弔問外交」どころではなかったこと等、言いたいことは山ほどあるが、ここでは「感動的」と称賛された菅の弔辞を取り上げておく。
 「あなたの判断はいつも正しかった。安倍総理。日本国は、あなたという歴史上かけがえのないリーダーをいただいたからこそ、特定秘密保護法、一連の平和安全法制、改正組織犯罪処罰法など、難しかった法案を、すべて成立させることができました」
 「あなたは、常に笑顔を絶やさなかった。いつも、まわりの人たちに心を配り、優しさを降り注いだ」
 「安倍総理、あなたは、我が国日本にとっての、真のリーダーでした」等々。
 菅は、悪政の限りを尽くした安倍の判断を「いつも正しかった」と嘯き、安倍のせいで公文書改ざんを強要された近畿財務局職員の赤木俊夫氏が自殺に追い込まれた際に悔やみの一言も述べなかった安倍の人柄を「まわりの人たちに心を配り、優しさを降り注いだ」と評し、国会での数多の虚偽答弁、国政の私物化、公文書の隠蔽・改ざんや統計偽装、悪法の強行採決等に及んだ安倍を「歴史上かけがえのないリーダー」「日本にとっての、真のリーダー」と持ち上げているのだ。
 また、菅が弔辞の最後に〝山県有朋が長年の盟友である伊藤博文を偲んで詠んだ短歌〟を盛り込んだ点が好評だったらしいが、この山県の短歌は安倍の後ろ盾だったJR東海・名誉会長の葛西敬之が本年5月に亡くなった際、安倍が葛西に宛てた追悼文の中に登場していたという。要するに、菅の弔辞は〝使い回し〟の代物というわけだ。
 しかも、山県は天皇の権威で国民皆兵の軍事国家を作り上げるべく、「天皇のために命を捧げよ」を理念とする国家神道の教典とも言うべき「教育勅語」を作らせ、これを全国民に徹底させた軍国主義の権化のような輩である。
 かような山県の短歌を国葬の弔辞に盛り込んだ菅の感覚はいかがなものか。さすがは安倍と二人三脚で「神国日本」を画策していた輩だけのことはある。安倍が成し得なかった「神国日本」を実現させようと密かに再登板でも目論んでいるのだろうか。

歴史の汚点

 浅井先生は安倍政権の6つの悪政に加え、安倍が東京五輪の招致を巡るスキャンダルで中心的役割を果たしたこと、さらには国家・国民を忘れて己の名利のために国家権力を濫用していたこと等を指弾された上で、「このような安倍晋三国葬にするなど、とんでもない間違いである」と断じられたが、過半数の国民による反対の声を押し切り、安倍の悪行と疑惑に蓋をするための国葬を強行したことは〝日本の歴史に深く刻まれた汚点〟と言わねばなるまい。(天皷)