安倍・自民党と「電通」の癒着構造(1)

世相閻魔帳56「顕正新聞」令和4年11月25日号

 前号の本コラムでは、安倍晋三国葬における菅義偉前首相の弔辞に日本最大の広告代理店「電通」が関与していたかのようなコメントをしたテレビ朝日の玉川徹氏が、コメンテーターを務めていた情報番組から実質降板に追い込まれた件を取り上げた。
 だが後述するとおり、電通は広告代理業の範疇を超えて政府の事業や大規模イベントまで仕切っている上に自民党との関係も深い。
 そのため玉川氏が安倍を偉人のごとくPRしようとした先般の国葬電通が関与していると誤認したことは致し方ないと言えなくもない(無論、玉川氏が裏取りをすべきだったことは論を俟たない)。
 今回は、政府等が行う事業をめぐり屡々その名があがる電通とはいかなる会社か、そして安倍・自民党電通との関係等について簡単に論じたい。

広告代理店とは

 そもそも広告代理店とは、広告宣伝活動(PR活動)をする企業だ。具体的には広告主(企業等)の代わりに広告(テレビCM等)を立案・制作し、当該広告を放送ないし掲載する「広告枠」をテレビ・新聞・ラジオ・雑誌・ウェブサイト等の媒体から買い付けて確保する業務のほか、PRイベントの企画・開催、市場調査等も行う。
 広告は、視覚・聴覚を通じて否応なしに当該広告に接した者に何らかの感情を抱かしめ、その思考・行動に影響を与え得る。それが巨費を投じて広告を打つ広告主の狙いである。
 つまり広告代理店の仕事とは〝国民の思考・行動を広告主の望む方向に誘導する広告を制作し、誘導効果が最大となる形で当該広告を国民に触れさせ、広告主の意図や狙いを実現すること〟と言えよう。

原発推進広告

 その悪しき成功例だったのが、電力会社と電通等の広告代理店が長期間にわたり大規模かつ巧みに展開した「原発推進」広告だ。
 電力会社等は「石油に代わるエネルギーの開発が急務です」「漁業の石油を確保するためにも省エネルギー原子力発電が必要です」「いまや、原子力発電もクルマ、カメラなどと並んで世界に誇れる技術です」などとデカデカと広告を打っていた。
 その結果、大多数の国民は「原発がなければ電力不足に陥る」との危機感や原発の「安全神話」、さらには「原発によって生活が豊かになる」との誤った認識を無意識のうちに刷り込まれ、あの福島第一原発事故が発生するまで原発の危険性に意識を向けなくなっていた。
 なお電力会社等は原発事故後も「私たちの使っている電気の約8割が火力発電」「一つに頼るよりも幾つかに分散したほうがいい」との詭弁で原発を推進するCMを懲りずに垂れ流している。
 また政府は電通に大金を投じ、原発事故の処理で発生する放射性物質トリチウムのほかストロンチウム90、ヨウ素129、セシウム135など複数)を含んだ汚染水(政府は「アルプス処理水」と呼称)の海洋放出を正当化するPRも行わせた(人の体内をプカプカと漂う「トリチウム」という〝ゆるキャラ〟の動画やチラシを作らせた)。実に度し難い。

電通とマスコミ

 電通は「出版社やテレビ局は、電通に逆らえば、まるで輸血を止められた病人のようになる」(大下英治電通の深層」)と言われるほど、マスコミに大きな影響力を有している。
 ことにテレビ局は収入のほぼ全てをスポンサー企業からの広告料に依存しているため(新聞で言うところの購読料が民放テレビ放送には無い)、仮に電通が広告を引き上げれば収入激減で経営破綻しかねず、生殺与奪の権を握られていると言える。
 ゆえにテレビ局は電通を叩くような報道は絶対にしないし、できない。
 平成27年に電通の女性新入社員が過労自殺をする事件が発生した時でさえ、マスコミは通り一遍の報道を行っただけで電通の責任を徹底追及しなかった。

〝政商〟電通

 今や電通は単なる広告代理店ではなく、政権中枢に食い込む政商(政府や政治家と結託して特別な利権を得ている商人)と化し、「持続化給付金」の事務事業(経産省)やマイナポイント事業(総務省)など、巨額の税金が投じられる政府の事業や大規模イベントの仕切りを行い、しかも巧妙なスキームで莫大な利益を上げている。
 世間でも少し騒がれたが、電通は持続化給付金の事務事業を活動実態の不明な法人を介して受注した(再委託を受けた)後、受注額より低廉な額で子会社等に再々委託することで法外な差額分を「中抜き」し、莫大な税金を吸い上げていた。
 電通が仕切った直近の事業で最大のものが「東京五輪」だ。東京五輪を巡る汚職事件で起訴された東京五輪招致のキーマンの組織委元理事・高橋治之は電通の元専務であり、電通本社も本年7月に東京地検特捜部から家宅捜索を受けている。
 著述家の本間龍氏(広告代理店「博報堂」の元社員)は、著書「東京五輪の大罪」で東京五輪電通の関わりを次のように記している。
 「電通は2020東京大会のすべてを取り仕切っていた。すべてとは、招致活動からロゴ選定、スポンサー獲得、山のように放映されていたテレビやラジオCMをはじめとする五輪広報・広告活動、聖火リレー、全国で展開される予定だったパブリックビューイング(PV)をはじめとする五輪関連行事、そして五輪・パラリンピックの開閉会式と全日程の管理進行等、文字通り『すべて』である」
 「これが何を意味するかというと、五輪マークがついていたCMや広告、関連グッズにはすべて電通が介在し、その利益もすべて電通に集中していたということだ。これは極めて異常な状況で、過去の開催国でこうした例はなかった。まさしく『五輪の私物化』と言えるような状況であり、東京大会とは、まさに『電通の、電通による、電通のためのイベント』と言っても過言ではなかった」と。
 招致活動の際に話題となった滝川クリステルの「お・も・て・な・し」、さらには安倍の「アンダーコントロール」の大ウソも、全て電通が用意したものと言われているが、五輪招致を己の政治的実績にするために嘘八百を平然と全世界に発信した安倍の人間性には反吐が出る。余談だが安倍の妻・昭恵は電通の元社員だ。

安倍と電通

 この電通を、五輪招致に限らず様々な場面でフル活用してきたのが安倍である。自民党は平成30年だけで国民の税金を原資とする政党助成金から「宣伝広報費」の名目で6億円超も電通とグループ会社に支出している。
 また第二次安倍政権以降、安倍は首相官邸の情報発信等を担う内閣官房の「内閣広報室」に毎年電通の社員を出向させ、官邸のツイッター、インスタグラム、ユーチューブ等のSNSアカウントの運営をさせている。
 さらに安倍は平成25年6月に電通が元請けとなって発足したプロジェクトチーム「Truth Team(T2)」に自民党及び参院選立候補予定者に対するネットでの書き込みを常時分析・監視させ、目障りなコメントを様々な方法で削除させ、世論を誘導した。
 かくして自民党は平成25年7月の参院選で圧勝。一部報道によれば、その後も自民党は毎年電通を通じて同様のことを続けているという。

「神国」実現に向けた広告戦略

 以上を踏まえれば、未だに少なからぬ国民が日本を亡国に導く政策ばかり実行した安倍を知らず知らずのうちに「何となく」支持・評価している理由の一つが〝安倍が血税を使って電通に行わせた「洗脳」に近い狡猾なプロパガンダの賜物〟と言える。
 広告を打つ広告主(安倍・自民党)には必ず何らかの意図(政治的意図)がある。そして前述のとおり、広告代理店(電通等)は国民の思考・行動を広告主の望む方向に誘導する広告を制作する。
 それをテレ朝の玉川氏は安倍の国葬における菅義偉の弔辞をめぐり「僕は演出側の人間ですからね、テレビのディレクターをやってきましたから。それはそういうふうに作りますよ、当然ながら。政治的意図がにおわないように、それは制作者としては考えますよ。当然これ、電通が入ってますからね」とコメントしたのだ。「電通等」のくだり以外は実に的を射ている。
 そして安倍の最たる政治的意図は〝憲法を改正して日本を「神の国」にすること〟だった。実際、自民党電通に依頼して憲法改正国民投票に向けた大規模な広告戦略(世論形勢)を計画していたという。
 この点については次回以降詳しく論じる。(天皷)