世相閻魔帳

顕正新聞のコラム「世相閻魔帳」

「欠陥議員」杉田水脈の「製造物責任」と「使用者責任」を問う

世相閻魔帳60「顕正新聞」令和5年1月15日号 

 昨年12月度総幹部会の席上、浅井先生は在日コリアンアイヌ民族に対し下劣極まる差別発言を繰り返す杉田水脈自民党安倍派の衆院議員)が総務政務官に抜擢されていることに言及された(その数日後、岸田首相は杉田を事実上更迭した)。
 今回は「欠陥議員」杉田水脈の「製造物責任」と「使用者責任」の所在等について簡単に述べる。

伊藤詩織さんを中傷

 杉田水脈の人物像は、元TBSワシントン支局長で「安倍礼賛本」を複数出版している山口敬之が平成27年4月、酩酊状態にあって意識のない伊藤詩織さんに性的暴行を加えた事件に関する杉田の言動を見れば多言を要しない。
 山口が性的暴行に及んだ事実は伊藤さんが山口を訴えた民事裁判の判決で認定され、山口は約330万円の損害賠償を命じられている(同判決は昨年7月7日付けで確定)。
 しかし事件発覚当時、安倍応援団は同胞の山口を庇うため被害者の伊藤さんを徹底的に攻撃し貶めた。杉田も例外ではなかった。
 杉田はイギリスの公共放送局BBCの取材に対し「彼女(伊藤さん)の場合は明らかに女としての落ち度があった」「こういうのは男性(山口)のほうがひどい被害をこうむっているのではないかと思う」などと平然と語ってみせたのだ。

下劣な攻撃にも加担

 また杉田は「はすみとしこ」(安倍応援団のヘイト漫画家)による伊藤さんへの攻撃にも積極的に加担した。
 投稿内容を紹介することすら憚られるが、はすみは山口を擁護する目的で伊藤さんを模した女性とともに「そうだデッチあげよう」「枕売って泣くボロい商売」等の文章が描かれたイラストや「自分の望みが叶わないと相手をレイプ魔呼ばわりした卑怯者」「カネをつかまされた工作員」などと伊藤さんを貶めるツイートを投稿し、あたかも伊藤さんが山口を陥れるために虚偽の性被害を訴えているかのような印象操作を行った。
 まさに品性下劣の一言に尽きる。真っ当な人間性を有する者であれば、はすみの投稿には底知れぬ嫌悪感を覚えるはず。だが杉田は違った。
 むしろ杉田ははすみに同調し、インターネット上の番組ではすみと共演して下劣なイラストを題材に伊藤さんを貶めたほか、はすみのゲスなツイート(計25件)に好意的・肯定的な感情を示す「いいね」を押していたのだから唖然とする。
 そして昨年10月、東京高裁は杉田がはすみの下劣なツイートに「いいね」を押したことは「社会通念上、許される限度を超える侮辱行為」と認め、杉田に伊藤さんへの損害賠償として55万円を支払うよう命じた(厚顔無恥な杉田は最高裁に上告等の申立てを行っている)。

人間性を疑う発言の数々

 その他にも杉田は令和2年9月の自民党の会合で性暴力被害者の相談事業をめぐって「女性はいくらでも嘘をつけますから」などと平然と言ってのけたり、在日コリアンアイヌ民族に対する差別発言を公然と行ったりしている。
 平成28年に杉田がブログやSNSに投稿した記事には「小汚い格好に加え、チマチョゴリアイヌの民族衣装のコスプレおばさんまで登場。完全に品格に問題があります」「同じ空気を吸っているだけでも気分が悪くなるくらい気持ち悪く、国連を出る頃には身体に変調をきたすほどでした」「彼らは、存在だけで日本国の恥晒しです」などと記載されている。
 「存在だけで日本国の恥晒し」なのは他ならぬ杉田の方だろう。

欠陥議員の製造過程

 そもそも杉田は平成29年に自民党から出馬する以前は「日本維新の会」をはじめ複数の政党を渡り歩くも当選したのは平成24年の総選挙1回だけで(選挙区では落選、比例復活)、平成26年の総選挙では最下位で落選している。つまり杉田は小選挙区での当選が望めない人望の薄い政治家なのだ。
 もともとノンポリだった杉田は落選中、右翼界隈に媚びを売る活動を展開した。例えば平成28年、杉田は邪教幸福の科学」元常務理事の釈量子(幸福実現党々首)らと共に、国連欧州本部で開かれた女子差別撤廃委員会の会合前に「慰安婦問題」に関する自説をスピーチしたという。
 そうした杉田の右翼活動に目を付けたのが安倍晋三日本会議の旗振り役・櫻井よしこだった。
 安倍は「杉田さんは素晴らしい」と言い、配下の萩生田光一を使って杉田に自民党からの出馬を打診したという。
 また櫻井よしこも杉田に自民党から出馬するよう後押ししていた。
 余談だが櫻井は昨年12月に開催された「すぎた水脈さんを育てる会」なる集会で登壇して満面の笑みを湛えながら杉田を激励したり、杉田の誕生日会をセッティングしてツーショット写真を撮影したりと、まるで愛娘のごとく杉田を溺愛している節がある。
 思うに、櫻井にとってトンデモ発言を繰り返す杉田こそ自身が育てた理想の議員、いわば「最高傑作」なのだろう。櫻井のドス黒い本性が垣間見える。
 かくして平成29年以降、杉田は小選挙区ではなく安倍のお膝元・山口県を含む自民党比例中国ブロックで比例単独候補として出馬し、杉田個人ではなく自民党が獲得した票によって2度も議席を得ている。
 要するに、安倍は選挙区では「検品」ではじかれる杉田を、検品のない比例単独候補という特別優遇レーンに乗せてやることで、欠陥だらけの杉田を2度も国会に「出荷」したのだ。
 杉田水脈という欠陥議員の「製造物責任」が安倍や櫻井らにあることは明白だ。

杉田の役割

 なお「FRIDAYデジタル」(昨年12月2日付け)に掲載された「安倍晋三が『育てた』政治家・杉田水脈が差別発言を繰り返す理由」との記事には「自民の長老議員」の興味深い話が記載されていた。
 「極端に右翼的な発言をする政治家。その役割を果たすことで、杉田は議員バッジが保障されている。小選挙区には出馬せず、比例のみで議員を続けているのはこのためです。差別的な発言を繰り返していては、一般国民からは顰蹙を買うばかりですが、一部支持団体にとっては重宝する存在です」と。
 引用中の「一部支持団体」に日本会議が含まれていることは言うまでもない。
 また杉田は平成28年8月に「幸福の科学統一教会の信者の方にご支援、ご協力いただくのは何の問題もない」などとツイートしている。杉田は先に述べたとおり幸福の科学のほか、反日カルト・反社会的邪教集団の「統一教会」とも接点がある。
 具体的には平成31年、杉田は統一教会のダミー団体「平和大使協議会」の下部組織「熊本ピュアフォーラム」なる団体の講演会に講師として参加していたのだ。同団体の事務局長・稲富安信は統一教会関連の政治団体国際勝共連合 熊本県本部」の代表者である。
 まとめると杉田の役割は、世間の批判を気にして自民党議員が口にしたがらない〝自民党支持邪教団体(日本会議統一教会)等の主義主張に沿った差別的言動〟を積極的に行って自民党組織票を獲得することにあると言えそうだ。

岸田の使用者責任

 岸田は昨年8月、杉田を総務政務官に任命した。安倍の「忘れ形見」のような杉田を政権の要職に充てて使用した岸田の狙いは最大派閥・安倍派への配慮だろう。所詮は己の政権維持のためだ。
 だが総務省は「ネット上の誹謗中傷対策」や「アイヌ政策」等も担当している省庁である。平然と他者を誹謗中傷し、アイヌを愚弄する杉田を同省の政務官に任命するなど、タチの悪い冗談でしかない。
 しかも杉田は総務政務官に就任した後も社民党々首の福島瑞穂を名指しして「LGBT(性的少数者)以上に気持ちが悪い」とした他者のツイートに「いいね」を押しているから度し難い。
 閣僚の辞任ドミノと首相秘書官に起用した長男による〝官邸極秘情報流出疑惑〟で頭を抱える岸田は、無謀にも杉田を総務政務官に任命したことを「適材適所」と言い張って保身を図ったが、最終的には杉田を事実上更迭せざるを得なくなった。
 ロクでもない議員しか見当たらない日本の政界と岸田の人を見る目の無さと無能ぶりにはホトホトうんざりする。
 岸田は閣僚を更迭するたびに「任命責任を重く受け止めている」と口先だけの釈明に終始するのではなく、自ら責任を取って総理大臣を辞めたらどうか。(天皷)