世相閻魔帳

顕正新聞のコラム「世相閻魔帳」

迷走・漂流し続ける岸田文雄

世相閻魔帳61「顕正新聞」令和5年1月25日号

 岸田文雄首相の迷走が止まらない――。
 岸田は年頭記者会見で「異次元の少子化対策」なるものをブチ上げたが、この名称は「異次元金融緩和」の完全なパクリ。〝何が「異次元」なのか全く分からない〟との批判が噴出するなか、「国が遅い。その一言です」と吠える東京都知事小池百合子に、18歳以下の子供に月5000円を給付する案に続き、0~2歳の第2子の保育料完全無償化を発表され、コケにされる始末。鳶に油揚げをさらわれた格好だ。
 また岸田は成長と分配の好循環による格差是正を中核とする「新しい資本主義」を掲げていたが、結局、格差拡大を加速させる安倍政権の政策を踏襲している。没個性の岸田は他人のマネしかできないらしい。
 そんな岸田は昨年10月、政治経験ゼロの長男(岸田翔太郎・31歳)を首相秘書官に抜擢するという誰もマネできない〝公私混同の情実人事〟を断行して岸田らしさを発揮してみせたところ、各方面から非難が殺到。
 当然である。首相秘書官は、安倍政権では〝影の総理〟と言われた今井尚哉(元経産官僚)が務めた要職であり、政治経験ゼロのボンボンに務まる役職ではないからだ。もしこれが〝世襲の準備・箔付け〟という理由であったら、岸田は真正のバカだ。
 案の定、翔太郎が首相秘書官に就任してから間もなく、翔太郎から民放女性記者への〝官邸極秘情報流出疑惑〟が浮上した(翔太郎と民放は否定)。
 「週刊文春」(令和5年1月5・12日号)には
 「翔太郎は飲み会や合コンが大好きで、テレビ局の記者に女子アナを紹介してくれと頼んでいたことも。商社マン時代は彼女がいたが、今年に入って『彼女が欲しい。出会いがないんだよ』ともらすこともありました」
 という翔太郎の知人の証言が掲載されていたが、仮に翔太郎が女性記者に気を引こうとして官邸の極秘情報を流出していたとしたら大問題だ。彼女が欲しいのであればとっとと首相秘書官を辞めて、夜な夜な合コンに精を出せばいい。

閣僚等の「辞任ドミノ」

 岸田に「人を見る目」が無いことは閣僚の「辞任ドミノ」を見れば説明の必要もない。
 最初に倒れたドミノは山際大志郎自民党麻生派の前経済再生担当相)だった。
 山際は反社会的邪教集団「統一教会」系の集会に参加して教祖の韓鶴子と写真撮影までするなど、統一教会とのズブズブの関係が相次いで発覚したにもかかわらず、保身のために「記憶にない」を連発してゴマカシ続けた。
 あまりに往生際の悪い山際は与党内からも「瀬戸際大臣」と呼ばれるようになり、昨年10月24日に辞任した。
 次いで倒れたのは葉梨康弘自民党岸田派の前法相)。
 葉梨は「法相は朝、死刑(執行)のはんこを押す。昼のニュースのトップになるのはそういうときだけという地味な役職だ」との不謹慎発言のほか、「法相になってもお金は集まらない。なかなか票も入らない」などと述べていたことが発覚。
 世間の注目とカネと票を集めることしか頭にない葉梨は〝ハナシ〟にならない。だから政権にとって〝ヨウナシ〟となり、昨年11月11日に辞任した。
 次いで倒れたのは寺田稔(自民党岸田派の前総務大臣)。
 寺田を巡っては「週刊文春」が7週にわたり寺田の妻の政治団体による脱税疑惑や令和3年秋の衆院選での買収疑惑など「政治とカネ」の疑惑(計10件)を報じていた。
 厚顔無恥な寺田は辞表提出を拒み続けたが、昨年11月20日に辞任を余儀なくされた。
 その後に倒れたのが秋葉賢也自民党茂木派の前復興大臣)。
 秋葉に関しては令和3年秋の衆院選で公設秘書が報酬を受け取って選挙運動に従事した公選法違反疑惑のほか、秋葉の政治団体が秋葉の妻と母親に対し地元事務所の賃料として計約1400万円も支払っていたことが判明。昨年12月27日に辞任した。
 そして秋葉と同じ日に総務大臣政務官を辞任に追い込まれた杉田水脈自民党安倍派)。杉田の下劣・破廉恥ぶりは前号の本コラムで取り上げたとおりだ。
 自民党に人材が払底しているにしても、辞任に追い込まれた議員らはどれもこれもまともではない。このような輩を何食わぬ顔で大臣に据えた岸田の眼力の無さは異常だ。

無為無策のコロナ対応

 岸田は政権維持のため国家・国民を蔑ろにして自民党の有力議員(派閥)に配慮せざるを得ないのだろう。
 例えば、岸田は統一教会との明らかな関係が露呈しても「記憶にない」を連発した山際を、経済再生担当相から辞任させた僅か4日後に自民党の新型コロナ対策本部の本部長に就くことを認めた(指名したのは山際と同じく統一教会とズブズブの萩生田光一)。
 岸田は「その人物の経歴・経験を踏まえ総合的に判断」などと答弁したが、国民を愚弄しているとしか言いようがない。
 恐らく岸田は自民党副総裁の麻生太郎の派閥に属する山際を無下に扱って麻生が機嫌を損ねると自身の立場が危うくなると考えたのだろう。だが記憶喪失の山際が国民の命と健康にかかわるコロナ対策などできるわけがない。
 岸田が首相に就任した令和3年10月4日時点における国内のコロナ死者総数は1万7749名だったが、その後、増加の一途をたどり、現在の「第8波」では死者数が過去最多を記録し、その総数は6万6297名(本年1月25日現在)に上っているが、その原因の一端が岸田にあることは言うまでもない。

統一教会問題

 また昨年8月、岸田は統一教会との関係を断ち切る(断ち切ったように見せる)ことを目的に内閣改造を行った際、統一教会とズブズブだった経産相萩生田光一自民党政調会長にスライドさせた。
 自民党の最大派閥・安倍派の有力議員である萩生田の反感を買えば「岸田降ろし」が始まりかねない。それゆえに岸田は萩生田を政調会長という要職に充てたのだろう。
 しかし萩生田は過去に統一教会の八王子教会で
 「私もご父母様(文鮮明韓鶴子)の願いを果たせるように頑張るから、皆さんも一緒に頑張りましょう」
 「一緒に日本を神様の国にしましょう」
 などと訴えたり、昨年夏の参院選前にも同教会を訪問したりと、日本人から巻き上げたカネを核ミサイル開発に余念がない北朝鮮に提供している〝反日カルト〟の統一教会とまさに「蜜月」の関係にある。
 かかる萩生田を政調会長(党として如何なる政策を打ち出すかを取りまとめる責任者)に充てるとはどうかしている。
 しかもだ。岸田は昨年11月、統一教会の被害者救済の法案提出に向けた自民党内での調整を萩生田に行わせたのだから唖然とする。あたかも泥棒に法律を作らせるようなものだ。
 昨年末に成立した法人寄附不当勧誘防止法が「抜け穴」だらけで実効性がほとんどなく、およそ「被害者救済法」とは評し難い法律になってしまったのも無理もない。
 要するに、岸田は国家・国民のことなど考えていないのだ。

「首相」になることが目的だった岸田

 外相や防衛相などを経て首相になった岸田の「人生最大の挫折」は「東大に3年連続で不合格になったこと」だという。
 また岸田は首相就任前の令和元年、出演したテレビ番組で「首相になったら何をしたいか」と問われて、開口一番「人事がしたい」と回答したというから開いた口が塞がらない。
 岸田の人物像を考察するに、結局のところ国を憂える気持ちも確固たる信念も政策も無く、ただ漫然と「政治家」という家業(祖父も父も衆院議員)を継ぎ、「首相」になることだけを目指して政治家としての人生を歩んできたと思われる。
 そうして初当選から約30年後、ついに「首相になる」目標を達成した岸田は、ただ安倍政権の政策等を踏襲しながら迷走・漂流を続けているのである。
 アメリカからの強い要請を受けて「敵基地攻撃能力」を保有する防衛政策の大転換を行うとも、「立正安国」という根本対策を知らず対症療法に終始している以上、国は亡ぶ。まして岸田のような愚図の宰相が国の舵取りをしていれば尚更である。
 国会答弁等で「検討する」を連発する岸田は〝検討使〟と揶揄されているが、そろそろ自身の出処進退を検討したほうがよい。(天皷)