安倍・自民党と「電通」の癒着構造(1)

世相閻魔帳56「顕正新聞」令和4年11月25日号

 前号の本コラムでは、安倍晋三国葬における菅義偉前首相の弔辞に日本最大の広告代理店「電通」が関与していたかのようなコメントをしたテレビ朝日の玉川徹氏が、コメンテーターを務めていた情報番組から実質降板に追い込まれた件を取り上げた。
 だが後述するとおり、電通は広告代理業の範疇を超えて政府の事業や大規模イベントまで仕切っている上に自民党との関係も深い。
 そのため玉川氏が安倍を偉人のごとくPRしようとした先般の国葬電通が関与していると誤認したことは致し方ないと言えなくもない(無論、玉川氏が裏取りをすべきだったことは論を俟たない)。
 今回は、政府等が行う事業をめぐり屡々その名があがる電通とはいかなる会社か、そして安倍・自民党電通との関係等について簡単に論じたい。

広告代理店とは

 そもそも広告代理店とは、広告宣伝活動(PR活動)をする企業だ。具体的には広告主(企業等)の代わりに広告(テレビCM等)を立案・制作し、当該広告を放送ないし掲載する「広告枠」をテレビ・新聞・ラジオ・雑誌・ウェブサイト等の媒体から買い付けて確保する業務のほか、PRイベントの企画・開催、市場調査等も行う。
 広告は、視覚・聴覚を通じて否応なしに当該広告に接した者に何らかの感情を抱かしめ、その思考・行動に影響を与え得る。それが巨費を投じて広告を打つ広告主の狙いである。
 つまり広告代理店の仕事とは〝国民の思考・行動を広告主の望む方向に誘導する広告を制作し、誘導効果が最大となる形で当該広告を国民に触れさせ、広告主の意図や狙いを実現すること〟と言えよう。

原発推進広告

 その悪しき成功例だったのが、電力会社と電通等の広告代理店が長期間にわたり大規模かつ巧みに展開した「原発推進」広告だ。
 電力会社等は「石油に代わるエネルギーの開発が急務です」「漁業の石油を確保するためにも省エネルギー原子力発電が必要です」「いまや、原子力発電もクルマ、カメラなどと並んで世界に誇れる技術です」などとデカデカと広告を打っていた。
 その結果、大多数の国民は「原発がなければ電力不足に陥る」との危機感や原発の「安全神話」、さらには「原発によって生活が豊かになる」との誤った認識を無意識のうちに刷り込まれ、あの福島第一原発事故が発生するまで原発の危険性に意識を向けなくなっていた。
 なお電力会社等は原発事故後も「私たちの使っている電気の約8割が火力発電」「一つに頼るよりも幾つかに分散したほうがいい」との詭弁で原発を推進するCMを懲りずに垂れ流している。
 また政府は電通に大金を投じ、原発事故の処理で発生する放射性物質トリチウムのほかストロンチウム90、ヨウ素129、セシウム135など複数)を含んだ汚染水(政府は「アルプス処理水」と呼称)の海洋放出を正当化するPRも行わせた(人の体内をプカプカと漂う「トリチウム」という〝ゆるキャラ〟の動画やチラシを作らせた)。実に度し難い。

電通とマスコミ

 電通は「出版社やテレビ局は、電通に逆らえば、まるで輸血を止められた病人のようになる」(大下英治電通の深層」)と言われるほど、マスコミに大きな影響力を有している。
 ことにテレビ局は収入のほぼ全てをスポンサー企業からの広告料に依存しているため(新聞で言うところの購読料が民放テレビ放送には無い)、仮に電通が広告を引き上げれば収入激減で経営破綻しかねず、生殺与奪の権を握られていると言える。
 ゆえにテレビ局は電通を叩くような報道は絶対にしないし、できない。
 平成27年に電通の女性新入社員が過労自殺をする事件が発生した時でさえ、マスコミは通り一遍の報道を行っただけで電通の責任を徹底追及しなかった。

〝政商〟電通

 今や電通は単なる広告代理店ではなく、政権中枢に食い込む政商(政府や政治家と結託して特別な利権を得ている商人)と化し、「持続化給付金」の事務事業(経産省)やマイナポイント事業(総務省)など、巨額の税金が投じられる政府の事業や大規模イベントの仕切りを行い、しかも巧妙なスキームで莫大な利益を上げている。
 世間でも少し騒がれたが、電通は持続化給付金の事務事業を活動実態の不明な法人を介して受注した(再委託を受けた)後、受注額より低廉な額で子会社等に再々委託することで法外な差額分を「中抜き」し、莫大な税金を吸い上げていた。
 電通が仕切った直近の事業で最大のものが「東京五輪」だ。東京五輪を巡る汚職事件で起訴された東京五輪招致のキーマンの組織委元理事・高橋治之は電通の元専務であり、電通本社も本年7月に東京地検特捜部から家宅捜索を受けている。
 著述家の本間龍氏(広告代理店「博報堂」の元社員)は、著書「東京五輪の大罪」で東京五輪電通の関わりを次のように記している。
 「電通は2020東京大会のすべてを取り仕切っていた。すべてとは、招致活動からロゴ選定、スポンサー獲得、山のように放映されていたテレビやラジオCMをはじめとする五輪広報・広告活動、聖火リレー、全国で展開される予定だったパブリックビューイング(PV)をはじめとする五輪関連行事、そして五輪・パラリンピックの開閉会式と全日程の管理進行等、文字通り『すべて』である」
 「これが何を意味するかというと、五輪マークがついていたCMや広告、関連グッズにはすべて電通が介在し、その利益もすべて電通に集中していたということだ。これは極めて異常な状況で、過去の開催国でこうした例はなかった。まさしく『五輪の私物化』と言えるような状況であり、東京大会とは、まさに『電通の、電通による、電通のためのイベント』と言っても過言ではなかった」と。
 招致活動の際に話題となった滝川クリステルの「お・も・て・な・し」、さらには安倍の「アンダーコントロール」の大ウソも、全て電通が用意したものと言われているが、五輪招致を己の政治的実績にするために嘘八百を平然と全世界に発信した安倍の人間性には反吐が出る。余談だが安倍の妻・昭恵は電通の元社員だ。

安倍と電通

 この電通を、五輪招致に限らず様々な場面でフル活用してきたのが安倍である。自民党は平成30年だけで国民の税金を原資とする政党助成金から「宣伝広報費」の名目で6億円超も電通とグループ会社に支出している。
 また第二次安倍政権以降、安倍は首相官邸の情報発信等を担う内閣官房の「内閣広報室」に毎年電通の社員を出向させ、官邸のツイッター、インスタグラム、ユーチューブ等のSNSアカウントの運営をさせている。
 さらに安倍は平成25年6月に電通が元請けとなって発足したプロジェクトチーム「Truth Team(T2)」に自民党及び参院選立候補予定者に対するネットでの書き込みを常時分析・監視させ、目障りなコメントを様々な方法で削除させ、世論を誘導した。
 かくして自民党は平成25年7月の参院選で圧勝。一部報道によれば、その後も自民党は毎年電通を通じて同様のことを続けているという。

「神国」実現に向けた広告戦略

 以上を踏まえれば、未だに少なからぬ国民が日本を亡国に導く政策ばかり実行した安倍を知らず知らずのうちに「何となく」支持・評価している理由の一つが〝安倍が血税を使って電通に行わせた「洗脳」に近い狡猾なプロパガンダの賜物〟と言える。
 広告を打つ広告主(安倍・自民党)には必ず何らかの意図(政治的意図)がある。そして前述のとおり、広告代理店(電通等)は国民の思考・行動を広告主の望む方向に誘導する広告を制作する。
 それをテレ朝の玉川氏は安倍の国葬における菅義偉の弔辞をめぐり「僕は演出側の人間ですからね、テレビのディレクターをやってきましたから。それはそういうふうに作りますよ、当然ながら。政治的意図がにおわないように、それは制作者としては考えますよ。当然これ、電通が入ってますからね」とコメントしたのだ。「電通等」のくだり以外は実に的を射ている。
 そして安倍の最たる政治的意図は〝憲法を改正して日本を「神の国」にすること〟だった。実際、自民党電通に依頼して憲法改正国民投票に向けた大規模な広告戦略(世論形勢)を計画していたという。
 この点については次回以降詳しく論じる。(天皷)

権力に阿諛追従するマスコミの罪

世相閻魔帳55「顕正新聞」令和4年11月15日号

 原発問題や森友・加計・桜といった安倍に関する疑惑、各種政策の問題点等を政権に忖度せず真っ当に批判していたコメンテーターがまた一人、実質〝降板〟に追い込まれた。
 テレビ朝日の報道番組「羽鳥慎一モーニングショー」に毎回出演し、コメンテーターを務めていた玉川徹氏(同局社員)のことだ。
 玉川氏は本年9月28日放送の同番組で、世間からは「感動的」と称賛されていた安倍晋三国葬における菅義偉前首相の弔辞について「政治的意図がにおわないように、制作者としては考えますよ。当然これ、電通が入ってますからね」と日本最大の広告代理店「電通」が関与していたかのようなコメントをした。
 しかしその翌日、玉川氏は「電通は全く関わっていないということがわかりました」と前日の発言を訂正し、謝罪した。

安倍応援団のダブルスタンダード

 そうしたところ、主に安倍の国葬を支持していた評論家やネトウヨ等の安倍応援団が鬼の首を取ったように「デマを流した玉川を降板させろ」と猛烈な批判を一斉に開始した。
 本年3月に公職選挙法違反疑惑で刑事告発された自民党参院議員の西田昌司までも「玉川氏個人の謝罪ですむ話ではなく、テレビ朝日のあり方が問われる」「極めて重大な問題で、国政の場でも強く提起したい」などと色を作して喚き出す始末。
 だが、ちょっと待ってほしい。安倍応援団の面々は、首相在任中に国権の最高機関たる国会で「桜を見る会」問題だけで118回も虚偽答弁をした安倍に批判の一つでもしたのか。辞任を迫るどころか、むしろペテン師の安倍を擁護し、安倍のウソを追及する野党議員等を却って攻撃していたではないか。
 また橋下徹(政治評論家・弁護士)や三浦瑠麗(自称「国際政治学者」)など政権擁護を繰り返すコメンテーターの事実誤認やデマと評すべきコメントもスルーしている。
 しかるに今般、単なる事実誤認のコメント(しかも翌日に謝罪・訂正)をしただけの玉川氏には「デマを流すな」と猛批判し、テレビ朝日に圧力をかけて玉川氏の降板を迫った。こうした異常とも言える安倍応援団のダブルスタンダードには反吐が出る。
 かくして10月4日、テレビ朝日は玉川氏を「10日間出勤停止」の謹慎処分とし、番組関係者2人も譴責処分とした。

アベ友が仕切る審議会

 しかし、その後も玉川氏に対する批判は止まらず、同月6日に開かれたテレビ朝日の「放送番組審議会」でも、審議委員から「勘違いでは済まない」「(玉川氏は)もう画面には出ないほうがいいと思う」などと玉川氏を厳しく批判する意見が相次いだという。
 だが審議会の顔ぶれを見ては〝さもありなん〟と思わずにはいられなかった。
 審議会の委員長は安倍と昵懇で「日本の国は安倍さんじゃなきゃダメだ」と発言していた見城徹。見城はレイプ犯・山口敬之の安倍ヨイショ本をはじめ、安倍応援団が安倍を支援するために拵えた書籍を複数出版している「幻冬舎」の社長だ。
 他の委員も、首相公邸で見城らと共に安倍と秘密裏に食事したり、首相の安倍を自宅に招いたりするほど安倍と親密だった秋元康(作詞家)のほか、安倍応援団の「新経済連盟」で副代表理事を務める藤田晋サイバーエージェント社長)など、アベ友がやたらと多い。
 結局、玉川氏は謹慎処分明けの同月19日、同番組のレギュラーコメンテーターを実質的に降板する意向を表明した。

これまでのメディアへの圧力

 第二次安倍政権発足以降、メディアが官邸等からの圧力に屈し、厳しい政権批判を行うコメンテーター等が降板に追い込まれた事例は幾つもある。
 たとえば「報道ステーション」(テレビ朝日)のコメンテーターだった古賀茂明氏(元経産官僚)は平成27年1月、同番組で「I am not ABE」などと発言した後、当時、官房長官だった菅の秘書官を務めていた中村格(安倍銃撃事件で引責辞任した前警察庁長官)が番組関係者に「古賀は万死に値する」といったショートメールを送信するなど圧力をかけたという。古賀氏はその2カ月後に降板となった。
 同年11月にはアベ友や日本会議と親和性が高い上念司(経済評論家、加計学園が運営する岡山理科大学客員教授)や小川榮太郎(〝森友・加計事件は朝日新聞の虚報・捏造であり戦後最大級の報道犯罪〟という趣旨の安倍擁護本を執筆し、朝日新聞から訴えられて敗訴した御仁)などが名を連ねる団体「放送法遵守を求める視聴者の会」が、「NEWS23」(TBS)のメインキャスターで安倍を批判していた岸井成格氏をバッシングする内容の全面意見広告を「読売新聞」と「産経新聞」に掲載し、岸井氏を降板に追い込んだ。
 平成28年3月には「クローズアップ現代」(NHK)のレギュラーキャスターを番組開始時から務め、番組内で当時官房長官だった菅に対して安保法案に関する質問を粘り強く行った国谷裕子キャスターの降板が決定した。その背後には官邸の圧力があったと噂されている。
 かくして今やマスコミは自ら政権の意向を忖度し、率先して政権擁護を繰り返すコメンテーター等を番組に多く起用する為体。何とも情けない。

卑怯な報道姿勢

 最近はマスコミの卑怯な報道姿勢も目に付く。
 たとえば、現在マスコミは歴史的な円安について連日報道しているが、こうした事態に陥ることはアベノミクスが始まった約10年も前から分かりきっていた話だ。
 しかるにマスコミはアベノミクスをずっと好意的に報じ、無智な国民を〝アベノミクスで日本経済が回復できる〟と欺いた。そして未だにアベノミクスの失敗を正面から報じようとしない。
 批判を忘れたマスコミは単なる政権の「広報」機関でしかない。安倍とマスコミは共犯関係にあると言ってよい。
 また政治家と統一教会の癒着に関する報道姿勢も同様だ。
 マスコミは、統一教会とズブズブで総裁の韓鶴子との写真撮影にも応じるなどしていた山際大志郎自民党衆院議員)を連日槍玉に挙げて報道し、同人を経済再生相辞任に追い込むことに一役買ったが、山際と統一教会が結びついた背景に、安倍とは別ルートで統一教会と繋がりを有していたと思しき菅の存在があることを殆ど報じていない。
 加えてマスコミは、細田博之衆院議長)や萩生田光一自民党政調会長)がそれぞれ山際以上に統一教会と濃密な関係を有していた疑惑に関する報道もピタリと止めてしまった。
 細田は令和元年10月、韓鶴子が出席した統一教会のダミー団体のイベントに出席。最前列の中央に着席していた細田韓鶴子が会場に入場すると起立して拍手を送り、「韓鶴子総裁の提唱によって実現した、この国際指導者会議の場は大変意義が深い」「今日の会議の内容を安倍総理に早速報告したい」などとスピーチして韓鶴子を持ち上げた。
 萩生田光一は過去に統一教会の八王子教会で「私もご父母様(文鮮明韓鶴子)の願いを果たせるように頑張るから、皆さんも一緒に頑張りましょう」「一緒に日本を神様の国にしましょう」などと訴えていたと、元信者等が暴露している。
 日本を食い物にする反社会的邪教集団のトップに賛辞を送り、尚かつセクハラ疑惑まで浮上している細田衆院議長という「三権の長」に居座り、また〝統一教会の理想実現のために頑張る〟と宣う萩生田が政権与党である自民党政調会長(党として如何なる政策を打ち出すかを取りまとめる責任者)の地位に就いていることは、山際が閣僚であったこと以上に大問題だろう。ところが、マスコミはこれらの問題を徹底追及しない。
 ちなみに、菅・萩生田はいずれも過去に報道機関等に圧力をかけた疑惑がある。所詮、マスコミは真に問題とすべき巨悪に対しては圧力を恐れて黙殺し、その代わりに叩きやすそうな人物をスケープゴートにして徹底的に叩くことで己の職責を全うしているかのように国民の前で演技しているに過ぎない。
 「権力の監視者」たる使命を忘れたマスコミの存在が腐敗した権力の自浄作用を失わせていく。マスコミは卑怯で弱腰な報道姿勢を改めるべきである。(天皷)

日本の経済・財政・金融を壊したアベノミクスの大罪

世相閻魔帳54「顕正新聞」令和4年11月5日号

 本年1月、浅井先生は「米国の利上げが始まる本年こそ、日本が金融崩壊・経済崩壊へ向かうターニングポイントになる」と指導下されたが、インフレ昂進を受けてアメリカをはじめとする海外の中央銀行が金融引き締めに向かうなか、それに反して日銀の黒田東彦総裁が強力な金融緩和を粘り強く続ける姿勢を示したことで、本年3月以降、外国為替市場ではつるべ落としのように円安が進行している。
 この間に円安や物価高の影響で倒産に追い込まれた企業の数も増加。本年10月のロイター企業調査で〝1ドル145円超の円安には対応不可能〟との認識を示した企業が75%に上ったことを見ても、このまま円安が進めば倒産に追い込まれる企業は増加していくだろう。
 本年10月15日、米国のバイデン大統領が「ドルの強さに関しては心配していない」「アメリカ経済は物凄く強い」とドル高を容認した一方、黒田総裁は同月17日の衆院予算委員会で日本経済の下支えのため「金融緩和を継続することが適当」との考えを改めて示した。
 すると同月21日の夜には1ドル151円94銭という平成2年以来およそ32年ぶりの円安を更新した。第二次安倍政権発足前の平成23年10月の円相場は1ドル75円。当時と比較すると円の価値は半分になってしまった。
 今後も日米の金利差がさらに拡大することを踏まえた円売りが一段と進むことが想定される。

進退窮まる政府・日銀

 円安を止めるには、現状のマイナス金利を解除して政策金利を上げ、長期金利を0%から0・25%程度に誘導するイールドカーブコントロール(日銀が国債を買い入れて利回りが上がらないようにする特異な政策)を変更するしかない。
 しかし金利が上がると国債価格は下落するため、政府の下請けとなって爆買いした多額の国債に含み損が発生し、日銀は実質的な債務超過に陥ってしまう。
 また1200兆円を超す債務をかかえる政府の金利負担が増加し、財政破綻が現実味を帯びてくるため、日銀は現行の政策を易々と変更できない。
 そこで政府・日銀は本年9月より、「円買い・ドル売り」の為替介入を24年ぶりに実施して円安を止めようとしたが、多額の外貨準備を費やしたこの為替介入の効果は僅かの日数で消滅してしまった。
 まさに現在の日本の経済状況は進退窮まり、「金利上昇を許容すれば日銀が債務超過に陥って金融崩壊・経済崩壊」、「金利を上げなければ円安がさらに進行し、エネルギー・食糧等の輸入品の価格が高騰し、インフレがますます昂進」という痛し痒しの状況にある。
 なぜ日本がかかる状況に追い込まれたのか。その原因こそ、安倍晋三と黒田総裁が二人三脚で推し進めた世紀の愚策「アベノミクス」に他ならない。
 安倍は「通貨の番人」たる日銀にその使命を放棄させ、政府の下請けとして国債を爆買いさせて禁じ手たる事実上の「財政ファイナンス」を行わせ、また株高を演出するために上場投資信託ETF)を通じて大量の日本株も買わせた。ために日銀は前述のとおり、進退両難の状況に陥ってしまった。

「日本バーゲンセール」

 しかるに岸田首相は猶もアベノミクスを容認し、国民生活を苦しめる円安を食い止めようとするどころか、もはや打つ手なしの状況に開き直って「円安のメリットを生かす」などと妄言を吐き、安倍と同じくインバウンド(訪日外国人を誘致して消費を促すビジネス)を拡大して経済再生を図るという愚策を真顔で打ち出す始末だから呆れる他ない。
 要するに岸田は外国人観光客等の「爆買い」に期待し、彼らに日本を安く買い叩かせる「日本バーゲンセール」を行うと宣言したわけだが、これは発展途上国の発想である。
 しかも円安局面を利用したインバウンドの拡大によって外人から安く買い叩かれるのは、日本で販売されている商品やサービスだけに止まらない。外資系企業は低賃金で雇われている日本の優秀な技術者等を割安で獲得し、また世界の投資家等は日本の不動産や企業を安く買い叩き始めている。
 実際、北海道や沖縄といった日本の人気観光地の不動産はすでに中国人等に爆買いされているが、今後こうした動きが加速すると見るべきだろう。

日本の国力は衰退

 しかし現段階では先端技術産業を発展させて経済再生を図ることも望めない。輸出大企業はアベノミクスによる「低金利・株高・円安」という〝胡座をかいていても儲かる環境〟に甘んじてしまい、その間に技術力や競争力が低下し、今や日本の国力は東アジアの国・地域との比較においても劣後するほど衰退してしまったからだ。
 世界知的所有権機関(WIPO)が本年9月に発表した「世界技術革新ランキング」で日本は13位だが、韓国は6位、中国は11位と日本より上のランクである。
 またスイスの国際経営開発研究所(IMD)が本年9月に発表した「世界競争力ランキング」で日本は昨年から3つランクを落として過去最低の34位(中国は16位、韓国は27位)。ちなみに平成元年から平成4年まで、日本は同ランキングで4年連続1位だった。
 同じくIMDが本年に発表した「世界デジタル競争力ランキング」でも日本は29位と低迷(韓国は8位、台湾は11位、中国は17位)。日本の国力の衰退ぶりは顕著だ。
 なお近年、日本は目先の経済的利益につながる応用研究に集中投資し、すぐに成果の出ない基礎研究を軽視する方針を採っているが、基礎研究をおろそかにして応用研究の成果が出るとは考え難い。そのため今後しばらく日本では技術革新が起きない可能性もある。
 無論このバカげた方針を打ち出したのも安倍だ。

アベノミクスの大罪

 畢竟、アベノミクスゾンビ企業を多く生み出して日本の産業を空洞化させた挙げ句、日銀の財務内容を著しく悪化させ、政府の財政赤字をGDP比260%超という世界最悪の状況にし、日本を破産寸前の状態に追い込むものでしかなかった。
 もはや日銀が債務超過に陥るのは不可避だろう。そのような中央銀行の紙幣など市場の信認を失い、円は瞬く間に暴落し、日本は制御不能ハイパーインフレに襲われる。そして日本の経済崩壊は国内だけに止まらず世界に及び、「前代未聞の大闘諍」たる第三次世界大戦を誘発する。
 「アベノミクス」という亡国政策を推し進めた安倍の罪は余りに重い。(天皷)

安倍を喪い凋落著しい日本会議

世相閻魔帳53「顕正新聞」令和4年10月25日号

 安倍晋三の横死以降、「反日カルト」「反社会的邪教集団」というべき統一教会による政界汚染の実態や安倍とのズブズブの関係がクローズアップされているが、統一教会と同じく政界に深く食い込み、統一教会以上に安倍と蜜月の関係にあった団体の存在を忘れてはならない。極右団体・日本会議のことだ。

安倍の神格化を図る

 日本会議は機関誌「日本の息吹」(令和4年9・10月合併号)を「安倍晋三元総理追悼号」と銘打って発刊したが、その内容は安倍と日本会議の蜜月ぶりを写真等で振り返りつつ、安倍と考えの近い政治家や神社本庁総長等の邪教の代表者、有象無象の安倍支持者たちが寄稿した追悼文を大量に掲載したものであった。
 その余りのおぞましさにドン引きしてしまったが、その一部を紹介しておく。
 「安倍晋三元総理の現身は幽身となりしも、その精神は消ゆることなく、我が国を護られ私共を力強く導かれるであろう」
 「今はただ、安倍元総理による天界からの日本国のご守護と私どもの改憲運動のお導きを願い、朝晩祈り続けている毎日である」
 「あなたはいま、私たちのゆく道を指し示す神様のような存在になられた気がいたします。これからの日本のため、どうかこれからも私たちに力と勇気をお与えください。いつの日か安倍晋三神社ができた折には必ずお参りさせていただきます」
 「安倍氏は日本の希望の星だった……これからは護国の星となって永遠に日本を守ってくれるだろう」
 「安倍氏御自身は肉体の束縛を解かれて高い清らかな世界に昇られて天翔けり国翔けり、日本を護ってくださっていると思います」等々。
 冗談ではなく本当に「安倍晋三壺神社」をこしらえそうな勢いであるが、ここまで安倍を賛美して神格化を図ろうとする〝異常さ〟に、安倍を祭り上げなければならない日本会議の特別な事情が窺われる。

「唯一無二のアイコン」

 なぜ日本会議の面々はここまで安倍に拘るのか。月刊誌「選択」(本年10月号)に掲載された「安倍喪失で『日本会議』の漂流」と題する記事は次のように分析する。
 「理念や理論に体系がなく、明確なリーダーもおらず、時々の政策課題ごとに『会』を作り、署名・集会・地方議会での決議・中央政界への提言を繰り返す日本会議の運動スタイルは、拡散しても求心力が弱いため、シンボル的な存在が欠かせない。安倍氏は唯一無二のアイコンだった。代わりが務まるスターは二度と現れないだろう。安倍氏の喪失は日本会議衰退の始まりを予感させる」と。
 全く以て同意だが、安倍が唯一無二のアイコンであり、その代わりが務まるスターが二度と現れないと考察する理由が省かれているため、少しく補足しておく。
 日本会議の前身団体「日本を守る会」の頃から団体の中核を担っていた邪教生長の家(教祖は谷口雅春)は昭和48年に信者向けのパンフレット「神国への構想 生長の家青年会の任務とその課題」を出版したが、そこには「正統憲法明治憲法)復元を克ち獲らなければならないが、そのためには復憲の大義に、自己生命を捨て得る内閣総理大臣の出現(中略)しなければならない」と記載されているという。
 そして教祖の谷口は〝安倍晋太郎(晋三の父)こそ、自分たちと考えが近い理想的な政治家〟と目をつけ、谷口の意を受けた信者たち(自民党参院議員・衛藤晟一など)は晋太郎に近付き、同人を総理大臣にしようと蠢いた。
 しかし晋太郎が総理大臣になることはなかった。そこで彼らは、谷口が期待を寄せた晋太郎の息子であり後継者の晋三を支えるようになり、ついに同人を「復憲の大義に、自己生命を捨て得る内閣総理大臣」に仕立て上げたのである。

運命共同体

 実際「日本を守る会」の事務局で実務を担当し、日本会議の源流を作ったとされる村上正邦(元自民党参院議員)は次のように述べている。
 「日本会議安倍晋三を支えているのは必然的なんですよ。安倍晋太郎を総理にするための布陣が全て、安倍晋三を総理にするための布陣になったということです
 「日本会議はあくまでも安倍あってのものなんですよ。だから、安倍が総理をやめれば、日本会議はガタガタになるんですよ」と(菅野完「日本会議をめぐる四つの対話」)。
 また日本会議大阪の役員を務めていた籠池泰典森友学園元理事長)は著書「国策不捜査」で「日本会議は、安倍さんが1993年に政界デビューした当初から、『この男をかついで憲法改正を実現させる』と考えていた……日本会議系の人間にとって、この人は他の政治家とは違う存在なのだ」「日本会議憲法改正を)何とか安倍政権の間に実現しなければ、その先は最早、不可能だと考えている……日本会議にとって、組織の存亡を懸けた最後の戦いが始まっている」と記している。
 こうして見れば、日本会議にとって安倍晋三は〝余人を以て代え難し〟の存在であったことがよく解ろう。まさに安倍と日本会議は〝運命共同体〟だったのである。

永遠に潰えた「神国日本」の野望

 しかし安倍は本年7月、浅井先生の62度にわたる諫暁を無視し続け、体調不良を理由に二度も辞任しながら、なおも政権の座を狙い「神国日本」に執念を燃やしていたため、諸天の鉄槌が下り横死した。
 浅井先生は「ここに諸天は許さず。彼はついに銃弾に斃れ、その野望は永遠に潰えた」と仰せられたが、先に述べた安倍と日本会議の関係性を踏まえれば「永遠に潰えた」所以がよくわかる。

崩壊始まる

 余談だが、近年は日本会議を構成する団体の内部トラブルが表面化している。日本会議で中核を担っている神社本庁が代表例だ。
 神社本庁は〝神社本庁が所有する土地を不当に安く売却した背任疑惑〟を告発した幹部職員を懲戒解雇としたが、本年4月、最高裁により懲戒処分の無効が確定した。
 また現在、神社本庁の「総長」(代表役員)の地位を巡り、鷹司尚武統理(日本会議顧問)が指名した新総長と退任を拒絶する田中恆清前総長(日本会議副会長)が法廷でガチンコで争うなど極めて深刻な内部分裂に陥っている。
 そうした混沌とした状況の中、日本会議にとって「シンボル的存在」「唯一無二のアイコン」だった安倍が銃弾に斃れてしまったのだ。今や日本会議の内部が目も当てられないほどガタガタの状態であることは想像に難くない。
 今後、安倍を喪った日本会議は「馬糞の川流れ」よろしく雲散霧消するであろう。(天皷)

汚点として歴史に刻まれた「安倍の国葬」

世相閻魔帳52「顕正新聞」令和4年10月15日号

 本年9月27日、国民の約6割が反対する中、安倍晋三の「国葬」が日本武道館で実施された。
 国葬に法的根拠が無いとか、費用が高額という点を強調して反対の声を上げる人が多く見られたが、そもそも安倍は悪政の限りを尽くして日本の亡国を決定付けた輩であるゆえに国葬に値しないのである。
 自民党衆院議員の村上誠一郎(元行政改革担当相)は、安倍のことを「財政、金融、外交をぼろぼろにし、官僚機構まで壊した。国賊だ」と評し、国葬への反対と欠席を表明したが、これが今回の国葬に際して政治家がとるべき当然の行動と言えよう。
 一方、安倍礼賛記事ばかりの極右雑誌は「国葬反対派はバカか売国奴」と題する記事等を掲載し、SNS上の狂信的なアベ信者に至っては国葬当日に「安倍晋三は日本の神となった!」「人としての安倍さんはおわり今日から日本を護る神として安倍晋三は生きる」などと投稿する始末。嘆息の他ない。

安倍は売国奴国賊

 そもそも安倍は、霊感商法合同結婚式等の反社会的行為で日本を食い物にし、日本人の拉致や日本へのミサイル発射を繰り返す北朝鮮との結び付きまで指摘されている統一教会とズブズブの関係にあり、その総裁・韓鶴子に敬意まで表していた。
 また、安倍は北方領土を巡る交渉において、終戦直前に北方四島を略奪して日本人に非道・暴虐の限りを尽くし、今なお不法占拠を続けるロシアのプーチンに媚び諂うという屈辱的な外交に終始した挙句、北方四島を事実上〝献上〟してしまった。
 これら日本の政治家にあるまじき恥ずべき所行に及んだ安倍が「売国奴」であり「国賊」であることは、もはや誰の目にも明らかだ。
 かかる事実を無視黙殺し、安倍の国葬に反対する人々に「バカか売国奴」などとレッテルを貼って攻撃していた安倍応援団こそ「バカかつ売国奴」と言えよう。

国葬強行の狙い

 思うに、自民党の面々が安倍の国葬を強行した狙いの一つは、国葬の場で皇族や海外要人が安倍の遺影に向かって頭を下げたり献花したりする事実を以て、無智な国民に「安倍は偉大な人物」と誤解させ、数多の悪政や疑惑に蓋をすることにあったのだろう。まさに、安倍のドス黒い疑惑を闇に葬る「黒葬」というわけだ。
 しかし、安倍の国葬は大失敗に終わり、その狙いは不発に終わった。「日本人として恥ずかしくなった」という声まで飛び交う有様で、朝日新聞国葬後に行った世論調査では、国葬実施を「評価しない」は59%、「評価する」は僅か35%に過ぎなかった。
 以下、国葬当日の会場の様子を簡単に振り返る。

グダグダな「酷葬」

 開始時刻になると葬儀委員長の岸田と安倍の遺骨を抱えた安倍昭恵がガラガラの会場に入場。驚いたことに、国葬と言いながら、喪主は「国」ではなく「安倍昭恵」だったのだ。これでは「家族葬」ではないか。
 黙とう等が終わると、会場のスクリーンにあたかも安倍が日本を良い方向に導いたかのような欺瞞と虚飾に満ち満ちた内容の「プロモーションビデオ」が約10分も流れ、その後、岸田や菅義偉前首相らの弔辞等がダラダラと続く。
 開始から約2時間が経過してようやく海外要人の献花が始まったが、ろくに事前説明がなかったのか、献花台の前で困惑し周囲の様子を確認しながら献花する人、面倒くさそうに手早く片手で投げるように献花する人の姿も見られた。
 終には献花を終えた人がなかなか会場から出られず行列ができてしまい、それが献花台の前まで伸びて献花が一時中断する事態に。約2万人の警察官を動員して大規模な交通規制をしていたにもかかわらず、会場前での交通整理をまともに行えず、海外要人が迎えの車にスムーズに乗れなかったというのだ。
 そのため終了時間がどんどん押してしまい、最終的に終了時間は予定より1時間以上もオーバー。時間を持て余して居眠りしたり、大声で談笑したり、安倍の遺影を前にスマホで自撮りしたり、「いつまで待たせるつもりだ。早く献花させろ!」と怒鳴り出す者までいたという。何ともお粗末な「酷葬」だ。

グロテスクな菅の弔辞

 国葬の企画・演出等を担当したのが平成27年から5年連続で「桜を見る会」の会場設営を担当していた政府御用達のイベント会社であったことや、G7(主要7か国)の現職首脳が一人も国葬に参列しなかったため「弔問外交」どころではなかったこと等、言いたいことは山ほどあるが、ここでは「感動的」と称賛された菅の弔辞を取り上げておく。
 「あなたの判断はいつも正しかった。安倍総理。日本国は、あなたという歴史上かけがえのないリーダーをいただいたからこそ、特定秘密保護法、一連の平和安全法制、改正組織犯罪処罰法など、難しかった法案を、すべて成立させることができました」
 「あなたは、常に笑顔を絶やさなかった。いつも、まわりの人たちに心を配り、優しさを降り注いだ」
 「安倍総理、あなたは、我が国日本にとっての、真のリーダーでした」等々。
 菅は、悪政の限りを尽くした安倍の判断を「いつも正しかった」と嘯き、安倍のせいで公文書改ざんを強要された近畿財務局職員の赤木俊夫氏が自殺に追い込まれた際に悔やみの一言も述べなかった安倍の人柄を「まわりの人たちに心を配り、優しさを降り注いだ」と評し、国会での数多の虚偽答弁、国政の私物化、公文書の隠蔽・改ざんや統計偽装、悪法の強行採決等に及んだ安倍を「歴史上かけがえのないリーダー」「日本にとっての、真のリーダー」と持ち上げているのだ。
 また、菅が弔辞の最後に〝山県有朋が長年の盟友である伊藤博文を偲んで詠んだ短歌〟を盛り込んだ点が好評だったらしいが、この山県の短歌は安倍の後ろ盾だったJR東海・名誉会長の葛西敬之が本年5月に亡くなった際、安倍が葛西に宛てた追悼文の中に登場していたという。要するに、菅の弔辞は〝使い回し〟の代物というわけだ。
 しかも、山県は天皇の権威で国民皆兵の軍事国家を作り上げるべく、「天皇のために命を捧げよ」を理念とする国家神道の教典とも言うべき「教育勅語」を作らせ、これを全国民に徹底させた軍国主義の権化のような輩である。
 かような山県の短歌を国葬の弔辞に盛り込んだ菅の感覚はいかがなものか。さすがは安倍と二人三脚で「神国日本」を画策していた輩だけのことはある。安倍が成し得なかった「神国日本」を実現させようと密かに再登板でも目論んでいるのだろうか。

歴史の汚点

 浅井先生は安倍政権の6つの悪政に加え、安倍が東京五輪の招致を巡るスキャンダルで中心的役割を果たしたこと、さらには国家・国民を忘れて己の名利のために国家権力を濫用していたこと等を指弾された上で、「このような安倍晋三国葬にするなど、とんでもない間違いである」と断じられたが、過半数の国民による反対の声を押し切り、安倍の悪行と疑惑に蓋をするための国葬を強行したことは〝日本の歴史に深く刻まれた汚点〟と言わねばなるまい。(天皷)