世相閻魔帳

顕正新聞のコラム「世相閻魔帳」

「大川原化工機事件」に見る警視庁公安部の深い闇

世相閻魔帳105「顕正新聞」令和7年9月5日号

 化学機械メーカーである「大川原化工機」(神奈川県横浜市)を巡る冤罪事件に関し、迫田裕治警視総監は本年8月7日、記者会見を開き、不当に逮捕された同社の社長ら関係者に対し謝罪し、また同日、警察当局は事件に関与した警視庁公安部の幹部ら19人を処分や処分相当とした。警視総監が会見で謝罪するのは異例だという。
 かつて警視庁公安部は、顕正会員を不当に逮捕しては会館等を家宅捜索し、予め関連情報をマスコミにリークしてその状況を撮影・報道させ、顕正会の信用失墜を図った。
 かかる警視庁公安部による「捏造」の実態が断罪され、警察の信用が地に堕ちた近年稀に見る冤罪事件「大川原化工機事件」の概要を以下に記す。

大川原化工機事件とは

 大川原化工機事件とは、大川原化工機の社長ら3人が〝生物化学兵器の製造に転用可能な機械を中国に不正輸出した〟と警視庁公安部に不当に疑われて逮捕、起訴されたものの、後に冤罪であることが判明し、起訴が取り消された事件である。
 大川原化工機は「噴霧乾燥機」(ドライスプレー)と呼ばれる機械の製造に関し、その業界を牽引・主導する立場の会社として知られていた。
 噴霧乾燥機とは、霧状に噴霧した液体を熱風で乾燥させて粉末にするもので、粉末スープやインスタントコーヒー、粉薬等の製造などに使用されている。
 ただし、国際的なルールにより〝生物化学兵器の製造に転用できるほど高性能な機械〟については輸出規制が設けられており、日本においては経産省がその細かい条件を定めている。
 実際には、大川原化工機の噴霧乾燥機は輸出規制の対象ではなかった。
 にもかかわらず、捜査を担当した警視庁公安部外事第一課第5係の捜査員らは、経産省が定めた輸出規制の条件に曖昧な表現があることを見つけ、これを悪用し、大川原化工機の噴霧乾燥機が「輸出規制の対象」になるよう恣意的に解釈した。
大川原化工機の噴霧乾燥機を輸出規制の対象にでっち上げられれば、同社が生物化学兵器の製造に転用可能な機械を中国に不正輸出したというストーリー(外為法違反事件)が完成する。これを立件すれば「経済安保」を推進する安倍政権が大いに喜び、その功績で出世できるかもしれない〟と考えたわけである。
 かくて平成29年5月、当時総理大臣だった安倍晋三が森友事件で窮地に追い込まれていく中、警視庁公安部は先のストーリーありきの捜査、事件の「捏造」を開始したのである。

ストーリーありき

 警視庁公安部のストーリーは最初から破綻していたが、彼らは都合の良い証拠だけを集め、不都合な事実等については「見ざる聞かざる言わざる」を貫いた。
 また高名な学者らに事情を伏せて接触し、都合の良い回答を巧みに誘導して引き出したり、回答内容を曲解したりして、学者らの考えとは全く異なる内容の調書を「作文」した。
 さらに規制の条件を定めた張本人として、その解釈権を有する経産省が公安部の恣意的な解釈を否定すると、警視庁公安部は様々な手段で同省担当者に圧力をかけ、同省の見解を都合の良いものに変更させた。

悪質極まる捜査手法

 かくて平成30年10月、警視庁公安部は大規模態勢で大川原化工機本社等の一斉家宅捜索に踏み切り、その仰々しい光景をマスコミに撮影・報道させたのである。
 令和2年3月には同社社長ら3人を逮捕し、その後は同社取締役が実際には発言していない内容を調書に記載したり、その旨を同人に指摘されて修正を求められても修正したふりをして修正しなかったりと、騙し討ち的な取調べを行なった。
 また警視庁公安部に丸め込まれた検事は大川原化工機と社長らを漫然と起訴し、起訴後も保釈に反対し、裁判官も保釈を許さず、社長らを無実の罪で1年近く拘束した。
 この間、同社顧問は多大なストレスで体調を崩して胃がんを発症したが、そのことを知りながら捜査を担当した検事と裁判官が保釈を許さなかったため、速やかに適切な治療を受けることができず、顧問は死亡してしまった。痛ましい限りである。

「まあ、捏造ですね」

 しかし急転直下、捜査開始から4年以上経過し、第一回公判期日が4日後に迫った令和3年7月30日、東京地検は本事件に関する起訴を全て取り消すという異例の判断を下した。
 事ここに至ってようやく、公判を担当することになった後任の検事が警視庁公安部のストーリーが破綻していることを認識したのだ。
 その後、大川原化工機側は東京都(警視庁公安部)及び国(東京地検)に対し国家賠償請求訴訟を起こした。
 裁判では、恥知らずにも都及び国が〝公安部の捜査は適法〟などと主張する一方、公安部の方針に否定的であった警視庁公安部所属の警部補らが出廷し
 「まあ、捏造ですね
 「立件したのは捜査員の個人的な欲
 「捜査幹部がマイナス証拠を全て取り上げなかった
 などと驚きの証言をする展開となった(遠藤浩二「追跡 公安捜査」参照)。
 結果、東京地裁・東京高裁ともに、警視庁公安部の捜査と検事の起訴はそれぞれ違法であると判断。都及び国の上告断念により、損害賠償として大川原化工機側に合計1億6600万円を支払うよう都及び国に命じた高裁判決が本年6月に確定した。
 そして冒頭記載のとおり、警視総監の謝罪、関与者の処分という異例の事態になったわけである。
 しかし、この程度で幕引きを許してはならない。関与者全員に対し、厳正な刑事処分を行うべきである。
 以上が大川原化工機事件の概要だ。
 ストーリーありきの捜査、不当な家宅捜索、騙し討ち的な取調べ、マスコミを利用した印象操作等、これら警視庁公安部の手口は、かつて顕正会員を不当逮捕した際のものとほぼ同一であり、その変わらぬ悪質さには既視感を覚える。

アベ案件

 また大川原化工機が警視庁公安部に〝中国への不正輸出〟を疑われた時期が、安倍政権が中国を意識した経済安保を推進していた最中であったことも見過ごせない。
 当時安倍に重用されていた「官邸のアイヒマン」こと北村滋(警察庁警備局外事情報部長等を歴任した公安畑の警察官僚)は、自身がトップを務める国家安全保障局(NSC)内に経済安保を担当する「経済班」の新設を安倍と共に構想しており、大川原化工機の社長らを逮捕した一ヶ月後の令和2年4月、これを実現させた。捏造された事件の存在が構想実現の助けになったことは想像に難くない。
 実際、安倍や北村の機嫌を取ることに成功した警視庁公安部は同年7月に「警視総監賞」、同年12月には「警察庁長官賞」を受賞し、捜査を主導した幹部らは狙いどおり出世も果たしている。
 気に入られれば優遇されるという薄汚れた社会を安倍が作り上げたせいで、欲に目が眩んだ警視庁公安部が大川原化工機事件をでっち上げたと言っても過言ではなく、その意味でこの事件は「アベ案件」とも言えよう。

「枉げて辜無きに及ばん」

 その他、検察・裁判所の異常な判断、大川原化工機の言い分を無視して警察発表を垂れ流したマスコミの異常性等、不問に付されてはいけない問題が山ほどあるが、何にせよ立正安国論の
 「一切の人衆皆善心無く、唯繫縛・殺害・瞋諍のみ有って互いに相讒諂し、枉げて辜無きに及ばん
 との仰せを実感する一件である。
 早く広宣流布して、国家権力が妙法化されなければならない。(天皷)