黒川元検事長を〝略式起訴〟した検察の魂胆

世相閻魔帳①「顕正新聞」令和3年4月15日号

 黒川弘務・元東京高検検事長が、本年三月十八日、東京地検特捜部に賭博罪で略式起訴され、同月二十五日、東京簡裁から罰金二十万円の略式命令を受けた。
 検察ナンバー2だった黒川は、森友事件や甘利明衆議院議員の金銭授受問題など、安倍政権に大ダメージを与えかねない事件の裏で暗躍し、それらの事件をことごとく「不起訴」で終結させるのに一役買った。ために、黒川は「官邸の番犬」等の異名を有している。
 黒川は、昨年五月、新聞記者らと賭けマージャンをしたとして刑事告発されたが、東京地検は黒川を「不起訴」としていた。しかし、検察審査会検審)が黒川を「起訴相当」(起訴すべき)と議決したことを受けて処分を一転、略式起訴に至ったのである。
 検審は選挙権を有する国民の中からくじ引きで選ばれた十一人の委員から構成される。そのため、〝検察が市民感覚を汲み取った〟などと、検察の対応を好意的に捉える向きもあるが、それでは検察の思うツボである。検察が処分を一転させた狙いは、「検察組織の防衛」にあり、市民感覚云々は全く関係ないと捉えるべきである。

 どういうことか。検察は検審の議決結果に縛られないため、黒川を再び「不起訴」とすることもできる。しかし、その場合、検審が再び「起訴相当」と議決すると、検事ではなく、裁判所が指定した弁護士が黒川を「強制起訴」することになる。指定弁護士ならば、略式起訴ではなく、正式裁判を求める通常の起訴を選択する可能性が高い。
 正式裁判になるとどうなるか。黒川は公開の法廷に引きずり出され、晒し者状態の中、指定弁護士から賭けマージャンの実態のみならず、検察と新聞記者らとの癒着関係、捜査情報の違法リークの有無等について徹底追及を受けることになる。追い詰められた黒川が、検察にとってマズい事実を吐いてしまうおそれもある。
 そうなれば、国民の批判の矛先は黒川一人にとどまらず、検察組織全体にまで及ぶ。検察にとって黒川の賭けマージャン問題は身内の不祥事、ただでさえ森友事件の関係者を全員不起訴にしたことで国民の信頼を失っている検察にとって、この問題をズルズルと長引かせて傷口を広げることは何としても避けたい。
 ならば、である。いっそ検察の手で黒川を略式起訴してしまい、指定弁護士による「強制起訴」を防ぎ、飽くまでも〝検察が悪を追及した〟というポーズを国民に示しながら、黒川問題を内々かつ早急に終わらせてしまおうというわけである。

 略式起訴の場合、公開の法廷での正式裁判は行われない。非公開の書面審理のみであっという間に終結する。黒川が晒し者になることはなく、元配下の検事によるズブズブな取調べだけで済み、第三者から厳しい追及を受けることもない。検察にとってマズい事実が世間に漏れるおそれも全くない。
 また、略式起訴されると罰金刑となり、その金額は通常数十万円と見込まれる。実際、黒川は罰金二十万円ということになったが、国民から徴収した税金を原資とする約五九〇〇万円もの退職金が支給される黒川にとってはハシタ金であり、賭けマージャンに負けて支払った分の方がよっぽど高額かもしれない。
 しかも、罰金刑で済めば、黒川は莫大な退職金を返納する必要はなく、保有している弁護士登録資格も影響を受けないため、近い将来、「官邸の番犬」と呼ばれた黒川が今度は弁護士となって、安倍前首相をはじめとする悪徳政治家から重宝される未来も残る。
 このように、今回の略式起訴は、黒川にとっては至れり尽くせりの激甘処分であって何ら痛痒を感じるものではなく、検察にとっても〝検察が市民感覚を汲み取った〟という大義名分の下、国民の前で正義のヒーローを気取りながら身内の不祥事をめぐる問題を早急に終わらせて組織防衛が叶うという、両者にとってウィンウィンの処分なのである。
 「検察庁法改正」という安倍政権のイカサマ支援を受けて、バクチを取り締まる「検事総長」の地位にリーチをかけた黒川の賭けマージャン問題は、世間を大いに騒がせた。しかし、組織防衛しか頭にない検察のせいで、結局、黒川は莫大な退職金の獲得に成功し、それで罰金を納付して終幕、「官邸の番犬」シーズン2(弁護士編)の可能性も残ってしまった。さながら出来の悪いB級ヤクザ映画のような顛末には反吐が出る思いである。

 まさに「末法濁悪」、日本の政治・司法の濁悪がすでに極限に達していることは明らかであり、急ぎ広宣流布しなければ…との思いを強くする。(S)