世相閻魔帳

顕正新聞のコラム「世相閻魔帳」

東京五輪の深い闇

世相閻魔帳⑨「顕正新聞」令和3年7月15日号

 平成二十八年のリオ五輪閉会式で安倍晋三前首相は、東京五輪のプレゼン映像が流れた後、ゲームキャラクターの「マリオ」に扮して会場に登場したが(演出費用は合計十二億円)、国内外から嘲笑され、「アニメを使って楽しかったが、最後に汚物が出てきて絶望」などと痛烈な批判を受けた。
 汚物は周囲の汚物と結合して汚染を拡大させるのか、安倍が深く関与した開催目前のオリンピック・パラリンピック東京五輪)はウソと疑惑に満ち、そこで生ずる利権を貪ろうと薄汚い虫どもが群がる事態になっている。以下、その概要を述べる。

大ウソと賄賂で招致

 安倍は平成二十五年九月の国際オリンピック委員会(IOC)総会で、コントロール不能福島原発事故廃炉作業の実態等を知りながら、福島の状況は「アンダーコントロール」と大ウソを吐いて各国を欺き、五輪の東京招致を決定させた。
 このIOC総会の前後(同年七月と十月)、東京五輪招致委員会は、五輪開催地の決定をする上でアフリカ票に絶大な影響力を有するIOC委員の息子が支配する会社に対し、合計約二億三千万円もの大金を提供していた。東京招致を決定付けるための〝賄賂〟とみるべきだろう。
 実際、東京五輪に協力してきた演出家・宮本亞門氏は、「東京の招致決定後、あるトップの方とお会いした時、招致が決まった会場で、裏でいかに大金を渡して招致を決めたか、自慢げに話してくれたのです」と暴露している(「日刊ゲンダイ」六月十九日号)。
 すでにフランス当局は、招致委の理事長を務めた日本オリンピック委員会(JOC)前会長・竹田恒和を贈賄容疑で捜査し、竹田の事情聴取も済ませている。
 他にも、ロイター通信(昨年三月三十一日)によれば、日本最大手の広告代理店「電通」の元専務・高橋治之が、招致委から約八億九千万円もの大金を受け取り、五輪の開催地選定に影響力を持つIOC委員らに対してロビー活動(働きかけ)を行っていたという。
 こうした賄賂の原資を誰がどこから集めたかは不明だが、原資の一部に関して「週刊新潮」昨年二月二十日号は、東京招致が決定した平成二十五年の秋頃、セガサミーホールディングス里見治会長が会合で次のように語ったと報じている。
 「菅義偉官房長官から話があって、『アフリカ人を買収しなくてはいけない。4億~5億円の工作資金が必要だ。何とか用意してくれないか。これだけのお金が用意できるのは会長しかいない』と頼まれた」
 「俺が3億~4億、知り合いの社長が1億円用意して財団(※森喜朗前首相が代表理事を務め、昨年末に閉鎖した「嘉納治五郎財団」)に入れた。菅長官は、『これでアフリカ票を持ってこられます』と喜んでいたよ」と。
 以上のごとく、東京五輪の招致を巡っては、安倍、菅、そして電通等がスポーツマンシップとは程遠い汚い手法をフル活用して〝買収した〟疑惑が燻っている。

JOC経理部長自殺

 その中、本年六月七日早朝、東京五輪を巡るカネの動きを知り尽くしていたとされるJOCの経理部長・森谷靖氏が自殺してしまった。現在、この件に関する報道は不自然なほどになされていない。
 「週刊文春」六月十七日号には、「トップダウンによる不透明な会計処理を背負わされたのが、森谷さんら現場の財務担当者でした」とのJOC関係者の証言が掲載されていた。森友事件で自殺に追い込まれた近畿財務局の赤木俊夫氏のように、汚れ仕事を押し付けられていたのだろうか。

利権に群がる〝政商〟

 東京五輪の利権には〝餓鬼界〟丸出しの企業が群がっているが、その筆頭格は「電通」、そして菅首相の総務副大臣時代の元上司・竹中平蔵が取締役会長を務める「パソナ」だろう。
 電通は開・閉会式の企画・運営のほか、車両事故を複数発生させている迷惑な「聖火リレー」に関する業務等を受託するなど、莫大な利権を獲得しながら東京五輪を裏で仕切っている。「安倍マリオ」も不適切演出案で東京五輪式典統括を辞任した電通出身の佐々木宏氏による演出だった。
 パソナも五輪関連業務を次々と受託し、殊に東京五輪に関する人材派遣業務は独占状態に等しく、悪質な〝ピンハネ〟も囁かれている。
 大会組織委は東京五輪の準備・運営等に当たるスタッフ(責任者クラス)一人の「日給」を三十五万円(八十万円になるとの報道もある)と異常な高額で発注、それをパソナが九割以上ピンハネし、スタッフ本人に支払われるのは約一万二千円程度になるという。
 このように、総経費三兆円以上と試算される東京五輪の開催により、世界最悪の財政状況に陥っている日本経済はより苦しくなると見込まれる一方、亡国の政治家に擦り寄る〝政商〟どもは日本を食い物にして莫大な利益を得るわけである。
 いずれにせよ、大ウソを吐いて東京五輪の招致を決定させた安倍は勿論、己の政権維持と秋の衆院選で勝つための実績作りとして、コロナ禍の中、国民の命を無視して東京五輪の開催を強行する菅首相もまた「佞人」そのものと言わねばならない。(天皷)