世相閻魔帳

顕正新聞のコラム「世相閻魔帳」

利権に群がるアベ友の浅ましさ

世相閻魔帳83「顕正新聞」令和5年9月5日号

 亡国の政治家・安倍晋三の悪政は数知れないが、いずれも「国政の私物化」「オトモダチ優遇」が甚だしい。
 二人三脚で改憲を推し進めた極右団体「日本会議」(日本会議大阪)の役員であり園児に教育勅語を暗唱させるなどしていた籠池泰典が理事長を務めていた学校法人に対し、安倍が評価額約9億6千万円の国有地をほとんどタダ同然で払い下げるよう仕向けたとされる「森友事件」。
 「腹心の友」である加計孝太郎が理事長を務める岡山理科大学獣医学部新設に当たり、安倍が便宜を図ったとされる「加計学園問題」。
 公費で飲み食いする公的行事を私物化し、そこに自身の後援会関係者等を大勢招待したばかりか、その前夜祭として都内高級ホテルで彼らをもてなして飲食費用の補填(公選法違反)をした「桜を見る会問題」等々。
 前回の本コラムで言及したゴタゴタ続きの「大阪・関西万博」で総合プロデューサーを務めている森下竜一・大阪大寄附講座教授もアベ友の一人だ。
 以下、胡散臭い森下と安倍、さらには維新との関係性等について簡単に述べる。

アベ友・森下竜一

 第二次安倍政権で内閣官房の「健康・医療戦略室」の顧問(参与)を務めた森下は、加計孝太郎や日本大学の附属病院の医療機器調達をめぐる背任事件で逮捕された医療法人「錦秀会」前理事長・籔本雅巳らと繋がりのある安倍のゴルフ友達だ。
 平成25年5月、安倍は山梨にある自身の別荘で加計や萩生田光一自民党総裁特別補佐(当時)とバーベキューを楽しんだ翌日、行きつけのゴルフ場にオトモダチを招待してミニコンペを開催。森下も招待され、萩生田や籔本と同じ組でゴルフに興じたという。
 余談だが当日ゴルフに参加していた他のアベ友は、首相秘書官として加計疑惑を「首相案件」と述べておきながら「記憶にない」と誤魔化し続けた柳瀬唯夫(現在はNTTに天下り副社長に収まる)、後に警視総監となった大石吉彦(安倍銃撃事件後に引責辞任)、アベノミクスのバックアップに腐心した御用経済学者の本田悦朗などのお歴々だ。

大失敗した「大阪ワクチン」

 自民党の「補完勢力」「第2自民党」というべき「日本維新の会」の共同代表で「大阪維新の会」代表でもある吉村洋文・大阪府知事が維新の宣伝のために利用したと言い得る「大阪ワクチン」の開発に名乗りを上げたのも、森下が創業し、今なお大量の株を保有している創薬ベンチャーの「アンジェス」だった。
 念のため大阪ワクチンについて簡略に説明しておく。
 これは新型コロナの感染拡大に全国が慄いていた令和2年3月、吉村が唐突に開発計画を宣言して散々宣伝し続けたものの、令和4年9月に開発を断念した代物だ。
 吉村はSNS等で「ワクチン、予防薬ができれば、コロナとの戦いを一気に形勢逆転できる。大阪の力を結集させ、治験、実用化に乗り出す。大阪府市、大学、病院機構。早ければ7月治験、9月実用化、年内量産。最前線の医療関係者から治験。大阪医学は、コロナに打ち勝つ力があることを証明する」(令和2年4月14日)などと大言壮語し、開発を断念した際も「チャレンジしないと成功もない」と平然と開き直る有様。
 かかる吉村の無責任ぶりと、維新が行政を牛耳っている大阪の新型コロナの死者数が実数も100万人当たりの割合も〝全国ワースト〟という悲惨な実態を併せ見れば、維新がいかに口先だけの〝無責任&無能な集団〟であるかが理解できる。

補助金75億円丸取り

 しかしアンジェスの大阪ワクチン開発失敗は「無能」の一言で終わらせてよい話では無い。
 と言うのも、森下が創業して大量の株を保有しているアンジェスは令和2年8月7日、国内大手の「塩野義製薬」や「第一三共」らとともに厚労省から新型コロナワクチン開発の補助金の投入先に決まり、約75億円もの巨額の補助金を受け取っているのだ。
 しかもこの補助金はワクチンの実用化に成功した場合には返還義務が発生するが、失敗した場合には返還義務が発生しないという。
 つまり大阪ワクチンの開発に失敗したアンジェスには巨額の補助金の返還義務が発生せず、これを丸取りすることが許されるわけだが、どうにも納得できる話ではない。
 そもそもアンジェスのようなバイオベンチャー企業に新型コロナに有用なワクチンを開発・実用化できる見込みがあったのか甚だ疑問が残る。仮に失敗することがわかりきった企業に敢えて巨額の補助金を投入したとなれば大問題だ。

開発実績はほぼゼロ

 この点については令和4年4月6日、立憲民主党吉田統彦衆院議員が厚生労働委員会で追及している。その具体的内容は
 「(アンジェスは)医薬品の開発においては、肝細胞成長因子遺伝子治療薬の開発を行って、2008年4月に厚生労働省に承認申請したものの、2009年に申請取下げ。今度は米国中心の国際共同治験の場に移しましたが、想像以上に患者さんが集まらず、2016年に中止となっている。その後、さっき、医薬品条件付早期承認制度を利用して、2019年3月に国内初の遺伝子治療薬、コラテジェンが承認されるまで、実質的に医薬品などを開発した実績はない
 「20期連続赤字で、やけに役員報酬が高くて、こういった経営をしている企業を補助金助成金の対象とするのは、一般の国民からするとちょっと理解がしづらい」というものだ。
 吉田議員の指摘どおりだとすれば、アンジェスに新型コロナに有用なワクチンを開発・実用化できる見込みがあったとは到底考え難い。
 にもかかわらずアンジェスに巨額の補助金が投入されたのは〝アンジェスの創業者であり大株主の森下がアベ友であることが考慮され、不当に行政が歪められたから〟すなわち〝加計学園問題のように「首相案件」「アンジェスありき」だったから〟と疑われても致し方あるまい(令和2年8月7日当時、安倍はまだ首相の座に居座っていた)。
 いずれにせよ、アンジェスに巨額の補助金の返還を求めないのであれば、補助金投入の決定過程に不透明な部分がないか、また無駄遣いがないか(補助金の使途)を徹底検証する必要があろう。

万博の仕切りも森下

 そのような森下は、現在、維新の創設者であるペテン師の橋下徹(弁護士・政治評論家)とその相棒の松井一郎が安倍政権のバックアップを得て誘致に成功した「大阪・関西万博」(令和7年開催)の「総合プロデューサー」に就任しているから唖然とする。
 いったい誰がどういった理由でいかがわしい森下を総合プロデューサーに選任したのか。
 前回の本コラムでも触れたが、見通しの甘さゆえに万博の開催費用はどんどん膨れ上がっており、また万博の目玉と言われているパビリオン(展示館)の建設も開催までに間に合わない可能性が濃厚だ。
 このままでは万博も大阪ワクチンの二の舞になろう。

森功氏が追及する疑惑

 ちなみに、「加計学園問題」を徹底取材してその核心を解き明かしたノンフィクション「悪だくみ」(文藝春秋)の著者である森功氏(ジャーナリスト)は、昨年10月から「大阪万博の『闇』」などと題するスクープ記事を「週刊現代」に数多く掲載している。
 詳細は省くが、森氏は
 「万博の中核となるパビリオン計画に絶大な影響力を振るってきた『2025年日本国際博覧会大阪パビリオン推進委員会』の総合プロデューサー(森下)が、出展企業の顧問を兼務し、顧問料を受け取ってきた――。ごく簡単にいえば、国家イベントのスポンサー選定を巡る疑惑
 「(森下とは)法的な立場の違いこそあるが、東京五輪でスポンサー企業の選定を巡り、顧問契約をしてコンサルタント料を得ていた大会組織委員会元理事の高橋治之は、収賄の罪に問われた。しつこいようだが、森下の顧問先企業のサイエンスが万博のスポンサー企業となっている状況と瓜二つなのだ」(「週刊現代」令和5年2月11・18日号)
 と両者の構図そのものに疑問を呈している。
 大手メディアもこの疑惑を徹底追及すべきだ。

安倍の大罪

 何にせよ、安倍の残滓と評すべきアベ友が今なお幅を利かせ、国家的なプロジェクト等に食い込んで甘い汁を吸おうと企んでいる異常事態は看過できない。
 「オトモダチ優遇」の政治・行政を定着させ、そのことに大半の国民はおろか権力監視の役割を担うメディアすらも違和感を覚えなくさせるほど日本の統治機構を徹底的に破壊し尽くした安倍の罪は計り知れない。(天皷)