世相閻魔帳

顕正新聞のコラム「世相閻魔帳」

安倍・自民党と「電通」の癒着構造(2)

世相閻魔帳57「顕正新聞」令和4年12月5日号

 日本最大手の広告代理店「電通」の元専務・高橋治之(組織委員会元理事)によるIOC委員らへのロビー活動(働きかけ)と多額の賄賂、そして安倍晋三が全世界に向けて発信した「アンダーコントロール」の大ウソなど、汚い手法をフル活用して招致した東京オリンピックパラリンピック東京五輪)の深い闇が、安倍の死後、重しが取れたかのように動き始めた東京地検特捜部の強制捜査等によって次々と暴かれつつある。
 特捜部と公正取引委員会は本年11月25日、東京五輪の組織委が発注したテスト大会関連業務の入札で談合が行われたとして、独占禁止法独禁法)違反の疑いで電通本社等を家宅捜索した。電通本社への家宅捜索は7月末に引き続いて本年2回目となる。
 この談合事件も安倍・自民党電通の癒着がもたらした事件と言い得る。以下、簡単に説明する。

談合事件の概要

 国及び地方公共団体が役務を調達(業務委託)する場合には一般競争入札によって契約相手を決めるのが原則とされている。
 談合(入札談合)とは、個々の発注案件ごとに当該案件を落札する企業を入札参加者間で決めておき、当該企業が受注できるように他の企業が入札参加を辞退するなど協力することを言い、独禁法によって禁止されている。談合をすると競争原理が働かないため、一般的に落札価格は高くなる。
 今回談合の疑いがもたれているのは組織委が平成30年に発注したテスト大会の「計画立案、計画支援業務」(計26件)だ。当該業務は一般競争入札によって電通を含む9社1団体で受注して落札総額は5億円超。このうち電通は5件を計8千万円で落札している。
 だが「朝日新聞」(11月26日付け)によると、テスト大会関連業務の発注側である組織委の「大会運営局」のうち同局次長と、電通から出向していた職員が、受注側の電通本体の入札担当者と協議し、この3人で「どの企業にどの競技を受注させるか」という割り振りを事前調整(談合)した疑いがあるという。

東京五輪の経費が跳ね上がった理由

 談合の結果、計26件の入札の大半は1社だけが参加することとなり、他社との価格競争が行われなかった。とはいえ、その1社に発注しなければ業務(競技)を遂行できないため、受注側の〝言い値〟で落札額が決まり得る状況が完成したのだ。
 要するに、テスト大会関連業務の競争入札は財布の紐を握る発注側と受注側の双方で中心的役割を担っていた電通主導の「お手盛り談合」によって形骸化されたわけだ。
 またテスト大会関連業務(数百万から数千万円)を落札できれば、数億円規模になる本大会の実施・運営業務も受注できることがほぼ確定するため、テスト大会関連業務の談合は実質的に後続の本大会業務という〝巨額利権の山分け〟と言える。
 実際、電通等はテスト大会の時とほぼ同じ競技で本大会の実施運営に関する業務を随意契約競争入札無し)で受注。しかも受注額は組織委が見積もっていた約149億円という最低価格(予定価格)と比較して平均で3割も増加し、計約196億円にまで上ったという。
 このことからも、出向してきた電通等の職員により組織委が牛耳られ、電通等の言い値のまま発注していたことが優に窺われる。まさにこれが「世界一カネのかからない五輪」「コンパクト五輪」などと宣っていた東京五輪の経費が莫大に跳ね上がった理由の一つと言えよう。
 言わずもがな、電通等にぼったくられた分のツケを払わされるのは国民だ。

疑惑は安倍に通ずる

 まさに東京五輪は「電通の、電通による、電通のためのイベント」(本間龍「東京五輪の大罪」)でしかなかったわけだが、そもそも大ウソと賄賂で東京五輪を招致し、これを血税食い散らし放題の「餌場」に整えて電通に提供した犯人は安倍晋三だ。
 連日ワイドショーでは既に受託収賄罪で4回も起訴された東京五輪招致のキーマン・高橋治之を大罪人のごとく報じているが(それは決して間違いではないが)、もともと高橋は逮捕を恐れて招致に向けて暗躍することに消極的だった。
 そんな高橋に「絶対に高橋さんは捕まらないようにします。高橋さんを必ず守ります」と直接電話で確約し、高橋を動かしたのは他ならぬ安倍だ。詰まる所、東京五輪を巡る疑惑の全ては安倍に通ずる。

東京五輪を利用して「神の国」を目指す

 では、なぜ安倍は電通東京五輪という絶好の餌場を提供し、血税を好き放題食い散らかさせたのか。
 その最たる理由は、安倍が「憲法を改正して日本を『神の国』にする」という自身の野望実現を目指す過程で、電通ナチスドイツで宣伝省大臣としてプロパガンダを管轄し大衆をナチス支持に導いた「ゲッベルス」のごとき働きぶりを期待していたからに他ならない。
 具体的に示す。まず安倍は電通と協力してG7首脳を伊勢神宮に招き入れる「伊勢志摩サミット」を開催し終えた翌年(平成29年)、東京五輪が開催される令和2年(2020年)を「新しい憲法が施行される年にしたい」と憲法改正の目標期限に設定した。
 なぜ令和2年の施行を目指すのかと野党議員から問われた際、安倍は「東京オリンピックパラリンピックも予定されている年であります。まさに新しい日本を始めようという機運が漲っている中において一つの目標として掲げている」と回答している。
 だが普通に考えれば、たかが五輪が開催されるだけで「新しい日本を始めようという機運」など漲るはずがない。この回答は図らずも安倍が自身の野望を漏らしたものと言えよう。
 要するに、安倍は国威発揚に利用できる東京五輪の開催までに日本会議の旗振り役である櫻井よしこが共同代表を務める「美しい日本の憲法をつくる国民の会」等による改憲推進運動で憲法改正の機運を高めた上で、電通東京五輪に合わせて醸成するお祭りムードを利用して一気に改憲を成し遂げ、「新しい日本」すなわち「神の国」を始めることを目論んでいたのだ。
 だからこそ安倍は全世界に向けて「アンダーコントロール」との嘘八百を吐き、高橋に嫌々悪事を働かせてでも五輪を東京に招致することに拘ったのだろう。
 そして日本国内で東京五輪を仕切れる企業は電通の他に存在しないため、安倍は自身にとって重大な意義を有する東京五輪の成功を電通に託す他ない。ゆえに安倍は電通に〝チップ(心付け)〟として血税を差し出したとも言えよう。
 所詮、安倍にとって血税は「国民から毟り取ったカネ」。それを電通が大量に吸い上げたところで冷酷非道な売国奴国賊の安倍個人は痛くも痒くもない。むしろ電通血税を大量に吸い上げてくれた方が「恩を売れる」とでも考えていたのではないか。

「政商」電通

 一方、利益至上主義の「政商」たる電通はカネ儲けが出来れば何も文句はない。
 電通の石井直社長(当時)は五輪の東京招致が決定した際、社員に向けたメールで「電通は次期東京オリンピックで、売上高1兆円を達成する」との訓示を出したという。
 このことからも「復興五輪」「コンパクト五輪」などというフレーズはまやかしに過ぎず、電通がありとあらゆる手法で莫大な利益を上げることを目論んでいたことは明白だ。
 加えて東京五輪を仕切って政府に恩を売ることができれば、巨額の血税が投じられる政府事業を新たに受注できる可能性も高まる。

真相解明を

 こうして見れば、目下世間を騒がせている東京五輪を巡る数々の不祥事が〝安倍・自民党電通が相互に利用し合う癒着構造〟に起因して発生したことがよく解ろう。電通単体でここまで大それた悪事を働くことはできない。
 しかし両者の邪な目論見は「総罰」たる新型コロナウィルスの感染拡大、そして安倍の横死という諸天の鉄槌が決定打になって潰えた。
 今後、特捜部は圧力に屈することなく徹底捜査を尽くし、東京五輪の深い闇を全て明らかにしてもらいたい。(天皷)