世相閻魔帳

顕正新聞のコラム「世相閻魔帳」

安倍・自民党と「電通」の癒着構造(3)

世相閻魔帳58「顕正新聞」令和4年12月15・25日合併号

 今回は安倍晋三が「憲法を改正して日本を『神の国』にする」という野望の実現を目指す過程で、国内最大手の広告代理店「電通」にナチスドイツで宣伝省大臣としてプロパガンダを管轄し大衆をナチス支持に導いた「ゲッベルス」のごとき働きを期待し、殊に憲法改正の「国民投票」では電通を使った大規模な広告戦略(世論形成)を画策していたこと等について述べる。

神の国」の画策

 浅井先生は「安倍政権八年の悪政」特集号で次のごとく喝破された。
 「(安倍は)日本最大の極右団体『日本会議』および『神社本庁』と結託して、日本を『神の国』にしようとする魂胆だった。すなわち明治憲法のごとく天皇を絶対化して『国家神道』を復活させ、戦前の日本を取り戻そうとするものであった。
 これを具体的に言えば『天照太神を祀る伊勢神宮を日本の本とする』ということである。
 だから平成28年に日本でG7会議が行われたとき、安倍晋三はわざわざ開催地を東京ではなく伊勢志摩に決め、会議に先立ってG7の全首脳を伊勢神宮に招き入れ、『御垣内参拝』という特別の参拝までさせている。
 これ、日本の国家神道を暗に国際的に認めさせようとして、言葉巧みにG7首脳を誘い入れたものである」と。

伊勢志摩サミット

 そもそもサミット開催地が三重県(伊勢・志摩)に決定したのは、森友事件で国有地がタダ同然で売却されたのと同様、安倍夫妻の意向が強く働いたからだ。
 未だサミットの開催地が決定していない平成27年正月、安倍の妻・昭恵は親しい友人に「来年ね、サミットがあるでしょ。伊勢でできたらいいわねって彼(安倍晋三)と言ってるのよ。でも、三重県が手をあげないのよ」と述べたという。
 また同月5日、安倍は伊勢神宮を参拝した際に「ここはお客さんを招待するのにとてもいい場所だ」と唐突に述べた。
 安倍の取り巻きは「総理のご意向」を忖度し、参拝に同行していた〝安倍の子飼い〟と言い得る鈴木英敬(当時三重県知事。元経産官僚で第一次安倍政権では内閣官房に参事官補佐として出向した)に「サミット候補地として立候補すればいい。いま直接、首相に伝えるべきだ」などと進言した。「今から手を挙げても間に合いますか」と鈴木から尋ねられた安倍は「いいよ」と即答したという。
 これ、もともと〝サミットを伊勢志摩で開催してG7首脳を伊勢神宮に参拝させたい〟と話を進めていた安倍と神社本庁幹部がそれを自ら言い出すわけにはいかないため、神社本庁との距離が近いとされる手下の鈴木に立候補させた「出来レース」と言われている。
 かかる経緯で三重県は最も遅れての立候補となったが、安倍夫妻の意向どおり開催地に正式決定したのだった。

安倍が伊勢志摩に拘った理由

 安倍が伊勢志摩でのサミット開催に拘った理由は、各国首脳が伊勢神宮に参拝する光景を国内外に発信することで、外には日本の国家神道を暗に認めさせ、内には伊勢神宮(神社)に対する国民の関心を昂らせて国家神道への抵抗を取り除き、以て安倍と日本会議神社本庁が結託して進めていた「神の国」の野望を早急に実現させることにあったと言える。
 その証拠に、安倍と結託していた日本会議の顧問で当時「伊勢神宮宮司」であった鷹司尚武(現・神社本庁統理)は、「(伊勢志摩サミットを)機に日本の文化の神髄ともいへる神道が広く理解され、神宮や神社への関心が昂ることを期待してをります」(平成28年1月)、「外国人参拝者の増加」や「国民への神道の理解を促すこととなり、(神札の)頒布に繋がり得る」(同年3月)などと伊勢志摩サミットを利用して国内外に神道を布教する意思を極めて露骨に示していた。

弱腰な日本のマスコミ

 海外メディアの多くは、安倍が各国首脳を伊勢神宮に招き入れて参拝させたことを強く非難している。たとえば英紙ガーディアンは複数の識者のコメントを掲載する形で安倍の所為を次のように厳しく批判している。
 「開催地の選定は、安倍首相と神道の強いイデオロギー的つながりや、神道の修正主義的政治課題と『非常に密接な関係がある』……安倍首相が神道政治連盟に積極的に関与し、神道を政府の中枢に取り込むことを目的としていることと完全に一致する」
 「G7のリーダーが神道を正当化するために利用されるのを見るのは不愉快でしかない」等々。
 本来これらは日本のマスコミが報じなければならない内容だ。しかし日本のマスコミは弱腰ゆえに政府や権力者から圧力をかけられることを過剰なほど恐れ、こうした重要な情報等を報じないばかりか、政府に言われるがまま(G7首脳が伊勢神宮を)「参拝」ではなく「訪問」したと事実を歪曲して報じる始末。実に度し難い。

一気呵成に改憲を目論む

 伊勢志摩サミットの翌年(平成29年)、安倍は満を持して「2020年を新しい憲法が施行される年にしたい」と憲法改正の目標期限を明示した。
 また日本会議の旗振り役である櫻井よしこが共同代表を務めるダミー団体「美しい日本の憲法をつくる国民の会」も全国の神社に櫻井がプリントされた幟旗等を大量に掲げるなどして運動を加速させ、平成30年には憲法改正の賛同署名が1000万筆を超えたと発表した。
 このように、安倍や神社本庁日本会議は伊勢志摩サミットを利用して神社の存在感を高めながら改憲運動を加速させることで、東京五輪開催までに憲法改正の機運を醸成することに腐心していた。
 これ全ては国威発揚に利用できる東京五輪のお祭りムードを利用する形で憲法改正の総仕上げたる「国民投票」を実施し、一気呵成に改憲を成し遂げるためであったと窺われる。

総仕上げを託された電通

 そして国民投票を有利に進める重要な役割を担うのが他ならぬ電通だ。もともと自民党のPRは電通が長年担当している。いざ国民投票となれば改憲派のPRは自民党とズブズブの電通が担うことは疑いない。
 電通ならばゴールデンタイムのテレビCMをはじめ広告媒体(新聞・雑誌・ラジオ・ウェブサイト・交通広告等)の優良枠を事前に押さえることができる。そこを改憲派の広告で埋め尽くすわけだ。
 そのためには莫大なカネが必要となるが、安倍・自民党には改憲のためなら労力もカネも惜しまない神社本庁日本会議等の強力な支援団体がついている。自民党(与党)に媚を売る一般の大企業等も数多く存する。カネの心配はほとんど無い。
 そして改憲派の広告が大量に垂れ流されれば無警戒の国民は広告の影響をもろに受け、いつの間にか「改憲すべし」との世論が圧倒的多数を占めていよう。
 自民党副総裁の麻生太郎は、かつて「ある日気づいたら、ワイマール憲法が変わって、ナチス憲法に変わっていた。誰も気づかないで変わった。あの手口に学んだらどうかね」と発言したこともある(後日撤回)。
 つまり仮に安倍が生存していて国民投票まで辿り着いた場合、安倍は電通を使って世論を誘導し、容易に憲法改正を成し遂げていた可能性が高かったのだ。

〝政商〟電通の暗躍ぶり

 ちなみに電通は安倍の邪な目的を達成するために開催された伊勢志摩サミットでも政商ぶりを発揮している。
 すなわち電通は政府から「国際メディアセンター設営及び運営」すなわち世界中のメディア関係者(約5000人)が集結するサミットの取材・編集拠点の設営及び運営という最重要業務の委託を受けていた(受注額は20億円以上)。
 また「公式ホームページに関する企画・制作」及び「公式ホームページのSNS運営」の業務の委託も受けていた。前述のごとく海外メディアから厳しい批判を浴びせられた伊勢志摩サミットだったが、そのホームページ等ではあたかも安倍が華々しい成果を上げたかのように演出し、各国首脳が伊勢神宮にいる様子等も発信していたのだ。
 さらに電通の職員が毎年出向している「内閣広報室」は首脳会談の様子のみならず、敢えて発信する必要が認められない各国首脳が伊勢神宮日本会議顧問の鷹司と握手している映像等まで全世界に向けて発信し、安倍の狙いを忠実に実現してみせた。

永久に潰えた「神の国」の野望

 しかしその後、周知のとおり安倍は森友・加計・桜・河井等の疑惑が次々と噴出したことで仮病を使って首相を辞任。その後も安倍は「神国日本」に執念を燃やして再々登板を目論むも、ついに本年7月、浅井先生の62度にわたる諫暁を無視し続けた末に諸天の鉄槌が下り横死した。
 これにより安倍らが画策した「神の国」の野望は「永久」に潰えた(詳細は「顕正新聞」令和4年10月25日号掲載の本コラムを参照)。
 今こそマスコミは安倍の悪政のお先棒を担ぎ、政商として自民党と癒着して甘い汁を吸ってきた電通の深い闇を暴くべきである。(天皷)