世相閻魔帳

顕正新聞のコラム「世相閻魔帳」

「第2自民党」を公言する「日本維新の会」の実態

世相閻魔帳82「顕正新聞」令和5年8月25日号

 自民党に対する不信感・嫌悪感から「日本維新の会」(代表は馬場伸幸)が各地で躍進を遂げているようだ。
 しかし本コラムでも何回か指摘したとおり、所詮、維新は自民党と同根であり、その補完勢力に過ぎない。このことは堺市議時代、長らく自民党に所属していた馬場の「(維新は)第2自民党でいい」(本年7月23日、ABEMA的ニュースショー)との発言からも明らかだ。
 ちなみに「週刊文春」(本年8月10日号及び同月17・24日夏の特大号)は、馬場のパワハラ疑惑や維新議員らのお粗末さ、さらには馬場の〝社会福祉法人(資産約15億円)乗っ取り疑惑〟について詳報。
 議員会館で怪しげな宗教儀式を信者仲間と行っていた衆院議員、同じく議員会館マルチ商法セミナーを実施していた衆院議員、SNSで自身の下着姿の写真を販売していた市議の存在には言葉を失ったが、馬場に関する疑惑は今後大きな問題に発展する可能性がある。
 今回は、自民党の補完勢力であることを隠しながら「身を切る改革」だの「既得権益の打破」などと「やってる感」を演出しているだけの自称「改革政党」の維新が、単に無能でお粗末な政治屋集団であることを簡単に述べたい。

ペテン師・橋下が設立

 そもそも自民党大阪府議だった松井一郎らを取り込んで「大阪維新の会」と「日本維新の会」を設立し、それらの初代代表を務めたのはペテン師の橋下徹(弁護士・政治評論家)だ。
 自身のペテン性をよくよく認識している橋下は、著書の中でそれを恥じ入ることもなくアピールしているから唖然とする。
 「私は、交渉の過程で〝うそ〟も含めた言い訳が必要になる場合もあると考えている。自身のミスから窮地に陥ってしまった状況では特にそうだ」「たとえ話で論理をすり替え、相手を錯覚させる!」(「図説 心理戦で絶対負けない交渉術」)
 「政治家を志すっちゅうのは、権力欲、名誉欲の最高峰だよ。……自分の権力欲、名誉欲を達成する手段として、嫌々国民のため、お国のために奉仕しなければならないわけよ」「ウソをつけない奴は政治家と弁護士にはなれないよ!」「ウソをつかない奴は人間じゃねえよ」(「まっとう勝負!」)等々。
 かような輩をテレビ番組に出演させるメディアの見識を疑わざるを得ない。

口利きビジネス?

 余談だが橋下は、本年4月に大阪市長を任期満了で退任して政界も引退した相棒の松井一郎とともに、「株式会社松井橋下アソシエイツ」なるコンサル会社を同月末に設立していた。
 ところが同社のホームページには、二人の経験とノウハウを活かして〝口利きビジネス〟を行うかのごとき宣伝文句が堂々と記載されていたためにたちまち批判が殺到。橋下は「アホくさ」とボヤき、直ちにホームページを閉鎖した。
 立憲民主党・代表の泉健太から「まさか口利きというものではないと思いたい」「政治番組のコメンテーターはやめるべき」などと指摘された橋下はSNS上で怒りのつぶやきを連投した挙句、泉が国会議員を辞めるべきか、それとも橋下が政治番組のコメンテーターを辞めるべきかアンケートを自ら実施した。
 しかしその結果は「辞めるべきは橋下」が60.2%で敗北。地団駄を踏んだ橋下はもう一度同じアンケートを実施するも、またも69.9%で自滅するという散々な結果と相なった。
 潔くアンケートの結果に従って政治番組のコメンテーターを辞めてもらいたい。

目も当てられないコロナ対策

 話を戻す。橋下のDNAが脈打つ維新もペテンまみれで、肝心の行政遂行能力は乏しい。
 現在「大阪維新の会」代表で「日本維新の会」共同代表でもある吉村洋文・大阪府知事は新型コロナ対策をめぐり、連日、在阪テレビに出演して「大阪モデル」だの「大阪ワクチン」だのと宣ってあたかも画期的な対策を講じているかのごとく振舞い、当時メディアもそんな吉村を持ち上げていた。
 しかし蓋を開けてみれば、大阪府は新型コロナの死者数は実数のみならず100万人当たりの割合も〝全国ワースト〟という惨状だった。多くの死者を出した責任など何処吹く風と、未だに府知事に居座る吉村の精神構造は理解に苦しむ。
 ちなみに吉村は令和3年8月、テレビ中継されていた記者会見で「うそみたいな本当の話」としてポビドンヨード入りうがい薬が「コロナに効くのではないかという研究結果が出た」と明言していたが、実際には「吉村知事『コロナに効く』から2年、うがい薬研究ひっそり終了…専門家『推奨できる結果なし』」(読売新聞オンライン令和4年12月25日)とのこと。大阪ワクチンなるものもとっくに開発を断念していた。
 大口を叩くだけで成果はゼロに等しい。「言うだけならタダ」と考えているのか知らないが、彼らの無責任な発言に翻弄される府民はたまったものではない。

万博もゴタゴタ

 松井と橋下が誘致した「大阪・関西万博」(令和7年開催)も御多分に洩れずゴタゴタだ。現在、万博は開催そのものが危ぶまれる事態に陥っている。
 時代遅れの感が否めない万博の目玉は、参加する国や地域が費用を負担して独自に建設するパビリオン(展示館)だが、現時点でパビリオンの建設申請手続きを済ませた国は約50か国のうち僅か1か国だけ。このペースでは開幕までにパビリオン建設が間に合わないと言われている。
 焦った万博協会側は政府に対し、パビリオン建設に関して残業規制の撤廃を求めたというが、労働災害が増えることは目に見えている。万博のスローガンは「いのち輝く未来社会のデザイン」だそうだが「過労死するまで働く暗黒社会のデザイン」の間違いではないのか。国威発揚どころか国威失墜しかねない。

膨れ上がる開催費用

 会場建設費は国、大阪府・市、経済界が三等分して負担するため、多額の税金が投入されるらしいが、すでに当初1250億円と見込んでいた建設費は令和2年末にその約1.5倍となる1850億円に引き上げられ、そこから更に増額する検討が先月末に始まった。見通しが甘すぎだ。
 ついに痺れを切らした経産省が乗りだし、今月2日、海外パビリオン建設を受注した国内建設会社を対象とし「万博貿易保険」なるものを創設することを発表。
 海外の発注元から建設代金が支払われない場合、株式会社日本貿易保険政府系金融機関)がその9割から全額をカバーするとのこと。要するに「最後は国民の税金で補填します」と言うことだ。
 松井と橋下が〝関西圏の経済活性化の起爆剤〟のごとく吹聴して誘致した万博は、もはや単なる〝金食い虫〟でしかなくなりつつある。
 本年4月に松井が任期満了であっさり政界を引退したのは、万博が大失敗したときの責任追及を回避するための〝早逃げ〟という側面もあろう。

松井の独断専行

 ちなみに万博の会場となる「夢洲」(大阪市此花区)は昭和52年以降、大阪市内で発生した廃棄物や工事に伴う掘削残土のほか、大阪港の浚渫土砂等を埋め立てて造った人工島だ。そのため地盤は極めて軟弱。平成30年には高潮で土地の一部が削り取られる被害も発生している。交通アクセスも悪い。
 ために夢洲は平成26年の立地調査の時点で万博の会場候補地から外されていたが、平成28年に松井が独断専行で夢洲を候補地に加え、会場に決定した。当時の報道や「2025年万博基本構想検討会議」の議事録には次の記載がある。
 「(万博の候補地に)府内6カ所が挙がったが、夢洲は含まれていなかった。しかし、松井氏は今年度に入り、夢洲も候補地に追加。今月21日には、東京都内で菅義偉官房長官と非公式に会談し、こうした方針を示したうえで誘致への協力を要請した」(平成28年5月23日付け産経ニュース)
 「夢洲は、要は知事の試案ということで、知事の思いということで、この場所でできないかということでお示しをした場所」(同年7月22日付け議事録)等々。

既得権益集団

 松井が夢洲固執する背景に、維新と夢洲の開発に意欲を示す建設会社等との癒着や利権構造が存在するとの疑いも一部で報じられている。万博会場のみならず大型のIR施設(カジノ)の誘致先も夢洲だ。
 なお松井は「IR、カジノには一切税金使いません」と宣言し、橋下や吉村も同様の発言をしていたが、最終的に夢洲の土壌汚染対策費用の約790億円は大阪市が公金で負担することになった。約790億円に含まれていない夢洲地盤沈下対策費用も大阪市が負担するという。
 カジノで経済発展という考え自体がトチ狂っているが、要はとにかく夢洲を開発する理由を作り、それでカネ儲けしようというのが彼らの狙いなのだろう。
 「既得権益の打破」を掲げる維新こそ「既得権益集団」と言わねばなるまい。
 七月度総幹部会で先生は「今の政治を見てごらんなさい。国を真に憂える政治家はいない。彼らが求めるものは、己れの名誉と利権だけではないか。だから平然と公私混同をする」と指導下さったが、腐敗堕落した日本の政治には暗澹とするばかりだ。(天皷)