世相閻魔帳

顕正新聞のコラム「世相閻魔帳」

岸田の公私混同にみる「異次元」の佞人ぶり

世相閻魔帳75「顕正新聞」令和5年6月15日号

 岸田文雄首相は先月27日、自身の息子で首相秘書官の「岸田翔太郎」(32)が昨年12月30日に首相公邸で親族と忘年会を開き、私的なスペースのみならず公的なスペースでも大ハシャギしていたことを「週刊文春」(本年6月1日号)に報じられて世間からの批判の高まりを受け、翔太郎を更迭した。

首相公邸で「組閣ごっこ

 この「週刊文春」には、首相公邸(旧官邸)の「西階段」と呼ばれる赤絨毯の敷かれた階段で岸田の長男・翔太郎ほか親族らが「組閣時の新閣僚の記念撮影」のように並んだ写真が掲載された。
 西階段は戦前から内閣発足の際に使用されてきた特別な場所だ。本来であれば総理大臣と国務大臣以外は立つことができない。実際、昨年8月にはこの西階段で第2次岸田改造内閣発足の記念撮影が行われている。
 翔太郎は父親と同じ場所・同じ立ち位置(最前列中央)に立って兄弟や従兄弟らを左右・後方に侍らせる「組閣ごっこ」に興じながら自身が首相になった姿でも妄想したのか得意満面だ。
 その他にも前述の「週刊文春」には、翔太郎の従兄弟が西階段でアイス片手に寝転んだり、総理大臣の演説台を使用して総理会見を模したり、かつて閣議が行われていた円卓で大臣を気取りながらくつろいだりしている写真等が掲載されていたが、おイタが過ぎている。
 なお忘年会に参加した岸田の兄弟は、元国税庁長官や大企業幹部(社長候補)など高い社会的ステータスを有し、日頃からセレブ生活を満喫しているらしいが、その子息らはあの悪ノリした写真を見る限り、おバカな小学生と大差ないように見受けられる。

愛息に大甘な岸田

 ちなみに岸田は5月29日に翔太郎の更迭を発表する前日まで「不適切な行動で厳重に注意をした」として愛息を続投させるつもりでいた。
 だが、これまで順調に持ち直してきた内閣支持率が低下してきたことを恐れたのか、一転して「公邸での昨年の行動が政務秘書官として不適切で、けじめをつけるため交代させる」と翔太郎の更迭を決定した。
 しかも岸田は翔太郎を「6月1日付け」で辞職させると発表。これには「6月1日まで在職すればボーナスが満額支給されるからか」と世間から批判が殺到した。もし、そのように考えていたとすれば、いかにも小器の岸田らしい小狡さだ。
 そもそも「首相秘書官」は翔太郎のような政治経験ゼロのボンボンに務まるような役職ではない。
 首相秘書官といえば、首相を補佐し、情報収集や分析、政策支援やマスコミ対応、広報活動など水面下での調整力が問われる重要ポストである。小泉政権では「官邸のラスプーチン」と評された飯島勲、安倍政権では「影の総理」との異名を有する今井尚哉(元経産官僚)などがその職に就いていたが、良くも悪くも霞ヶ関に睨みをきかせ、官邸を仕切るだけの権謀術数や情報操作に長けた人物でないと務まらない。
 一方の翔太郎はと言えば、反社会的邪教集団・反日カルトの統一教会とズブズブの関係が問題となり辞任した山際前経済再生相の〝極秘人事情報〟を首相秘書官に就任して間もない翔太郎が民放女性記者に流出した疑惑が浮上(翔太郎と民放は否定)。
 その後も岸田の外遊に同行した翔太郎が日本大使館の公用車に乗ってパリやロンドンの観光地や老舗百貨店を巡っていたことなど、その脳天気・お粗末ぶりが度々報道されるだけで何の実績もない。
 岸田としては「世襲の準備・箔付け」を目論み、周囲の反対を押し切って翔太郎を首相秘書官に抜擢するという公私混同の情実人事を断行したわけだが、あのような学生気分が抜けないバカ息子を重要ポストに就かせた一事をみれば岸田の底が知れるというものだ。
 一部報道によれば、これまで翔太郎が適正を欠く行動をとっても更迭されなかったのは岸田の妻・裕子がそれを認めなかったからと言われているが、女房の尻に敷かれる岸田の情けなさを物語って余りある。

岸田も忘年会に参加

 ちなみに「FRIDAY」(本年6月16日・23日合併号)がすっぱ抜いた忘年会の集合写真には、前列中央に岸田と妻・裕子が写っている。スウェットにダウンベスト、裸足という寝間着姿の岸田は、親族に囲まれ腑抜けた笑みを浮かべていた。
 しかし、だ。この忘年会のちょうど2週間前、岸田はアメリカからの強い要請を受けて敵基地攻撃能力の保有や防衛費増大を内容とする安全保障関連の三文書を閣議決定し、戦後の防衛政策を大転換している。
 その際の記者会見で岸田は「国家、国民を守り抜くとの総理大臣としての使命を断固として果たしていく」「私は、内閣総理大臣として、国民の命、暮らし、事業を守るために、防衛力を抜本強化していく」などと勇ましく原稿を読んでみせた。
 また忘年会のちょうど1週間前には北朝鮮弾道ミサイル2発を発射。忘年会翌日の朝にも日本海に短距離弾道ミサイル3発を発射している。
 このような事態のさなかであったにもかかわらず、国民の目に晒されないからと自宅(首相公邸)で暢気に過ごし、しかもそこで自身の息子や親族らによる大それた悪ふざけも制止もできなかったのだから、余りに危機感が無さ過ぎである。
 しかも岸田は床屋やリラクセーションサロンに行ったことなどまで事細かく新聞各紙の「首相動静」に報じさせているが、この忘年会の日は「(公邸への)来客なし」と事実と異なる発表をさせているから姑息だ。
 ちなみに岸田は広島サミットの直前の5月13日にバラエティ番組「世界一受けたい授業」(日本テレビ)に出演。官邸と読売系の日テレがタイアップして制作した内閣支持率の上昇を狙った露骨なまでのプロパガンダ番組で、余りに軽薄で邪な底意が見え見えの溜息がでるようなシロモノだった。
 そのなかで岸田は「総理のお仕事クイズ」なるものを出題し、ドヤ顔で「首相は国家と国民の『安全』を守る」などと強調していたが、首相公邸内における自身の息子や親族らの行動すらロクに把握もコントロールもできない岸田に「国家と国民の『安全』を守る」ことが出来るとはとても思えない。

公私混同

 なお今般の首相公邸における忘年会問題に関しては「首相公邸とはいえ自宅なのだから、そこに親戚を招いて忘年会をして何がいけないのか」と擁護する者もいるらしい。
 だが公的スペースを内包し、ために莫大な税金が維持費として投入されている首相公邸は純然たる岸田の自宅ではない。「週刊文春」に掲載されている官邸担当記者の証言を引用する。
 「公邸は『内閣総理大臣の職務の能率的な遂行を確保し』『国の事務及び事業の円滑な運営に資することを目的とする施設』とされています。もちろん首相の私的な居住スペースもありますが、迎賓や執務機能も備え、オンラインでの首脳会談が行われることも。万全の警備体制が敷かれ、年間の維持費は約一億六千万円とされています」と。
 首相秘書官が西階段などの公的スペースを私的スペースであるかのごとく使用した公私混同、そこで悪ふざけに興じるというお粗末さ、またそれらが悪しき事であるとの認識すらできない愚劣さなど、もはや擁護の余地は無かろう。

亡国の政治家

 五月度総幹部会において浅井先生は
 「国の舵取りをする政治家たちも、国を憂える者はなく、己れの地位と利権ばかりを求めている。これを『火宅にあそぶ子』という。家に火が点いているのに火事の恐ろしさも知らず、家の中で遊びたわむれている子供たちである。
 建治三年の富木殿御書には『夫れ賢人は安きに居て危うきを欲い、佞人は危うきに居て安きを欲う』と。
 ―賢人は、たとえ現在が安穏であっても、将来必ず起こるであろう危機を憂える。だが佞人、心の曲がった者は、危機が眼前に迫っていても、なお目先の安逸を貪るものである――と。今の政治家たちはみなこの『佞人』である
 と指導下さったが、まさに岸田こそ「異次元」の佞人と評する他ない。(天皷)