世相閻魔帳

顕正新聞のコラム「世相閻魔帳」

迷走の末、上がり目なしの岸田政権

世相閻魔帳81「顕正新聞」令和5年8月15日号

 七月度総幹部会において浅井先生は
 「今の政治を見てごらんなさい。国を憂える政治家はいない。彼らが求めるものは、己れの名誉と利権だけではないか。だから平然と公私混同をする。いま政治家の世襲が問題視されているが、これは政治を家業と勘違いしているから起こるのである」
 と指導くだされたが、バカ息子の翔太郎を首相秘書官に任命するという公私混同の情実人事を行なった岸田文雄首相も例に漏れず、祖父と父親が衆院議員という世襲議員だ(翔太郎は本年5月27日に首相秘書官を更迭され、現在は岸田事務所の私設秘書になっているらしい)。
 迷走を続ける岸田政権の支持率は28%(毎日新聞)と低下しており、自民党の支持率も24%(毎日新聞)、28%(朝日新聞)、23.6%(時事通信)と軒並み落ち込んでいる。これまで内閣支持率が下がっても政党支持率は下がらなかったことから深刻な状況と言われている(いずれも7月中旬から下旬の調査)。
 岸田はお得意の「聞く力」なるものを発揮して苦しい生活を余儀なくされている国民の声を聞くわけでもなく、本年6月末頃から閣僚や与党幹部と寿司屋や日本料理店で会食を繰り返していた。この一事だけでも、岸田がどこを向いて政治を行なっているのかがよく分かる。
 しかも先月20日には「(支持率は)上がったり下がったりするものだ。いずれ上がる」などと放言する能天気ぶり。上がるのは「物価」と岸田政権に対する国民の「不満」と「怒り」だけと知るべきだ。
 そんな岸田が早急に対処すべき課題は、マイナカードを巡るトラブルだけではない。幾つか簡単に取り上げる。

原発処理水の海洋放出

 福島第一原発の事故処理で発生した放射性物質を含む自称「処理水」の海洋放出は大きな問題だ。
 昨年の参院選公示日、岸田は東北の復興重視をアピールするために福島市内で第一声を上げ、「私はその福島から自民党こそが、国民のみなさんの声をしっかり受けとめる国民政党であるということ……を国民のみなさんに伝えるため、ここに来させていただきました。……福島に対する思いは強く、これからも私たちは大事にしていきます。『東北の復興なくして、日本の再生なし』……この気持ちをしっかり持ちながら、努力を続けていきたい」などと述べていたが、福島県漁連の反対などお構いなしに処理水の海洋放出を強行する岸田の言葉がいかに心にもない口先だけのものかがよくわかる。
 岸田は今年の夏以降に処理水の海洋放出を実施するというが、この処理水には放射性物質トリチウムのほか、それ以上に危険なストロンチウム90、ヨウ素129、セシウム135等の放射性物質が残留していることが判明している。
 経産省の公式サイトでは「ALPS処理水とは……トリチウム以外の放射性物質を、安全基準を満たすまで浄化した水」「トリチウムについても安全基準を十分に満たすよう、処分する前に海水で大幅に薄めます。このため、環境や人体への影響は考えられません」と謳っているが詭弁である。薄めようが薄めまいが総量は変わらない。
 また処理水が安心・安全であるなら、なぜわざわざ総工費400億円もの巨費を投じて1キロ先の沖合まで海底トンネルを堀って放出する必要があるのか。この一事がすべてを物語っている。
 そんな岸田が最近「水戸黄門の印籠」のごとく振りかざしているのが、本年7月4日に国際原子力機関IAEA)が公表した、処理水の海洋放出について「放出に対する日本の取り組みは国際的な安全基準に合致」「計画しているとおりの管理された段階的な放出であれば、人や環境への放射線による影響は無視できる程度」などと記された報告書だが、これもペテンである。同報告書は海洋放出に「お墨付き」を与えたものではない。
 報告書の中で「処理水の放出は日本政府が決定することであり、この報告書はその方針を推奨するものでも承認するものでもない」と強調し、責任逃れを図っていることがその証左だ。

地元は海洋放出に反対

 そもそも経産省と東電は平成27年8月、福島県漁連に対し、処理水について「関係者の理解なしには、いかなる処分も行わない」との方針を示していたが、現在に至るまで「関係者の理解」は全く得られていない。
 本年6月、福島県漁連は処理水の海洋放出について「反対であることはいささかも変わらない」とする特別決議を「全会一致」で決議した。
 宮城県議会もIAEAの報告書が公表されたその日、海洋放出に反対し、地域の理解を得たうえで国が責任を持って対応するよう求める意見書を「全会一致」で可決している。
 NHKによると、県議会議長(自民党所属)は「海洋放出は絶対にしないでほしい」「国際機関が『安全』と認めても住民や漁業者からの不安は大きいので、十分な対策をするよう強く国に申し入れたい」などと述べ、宮城県漁業協同組合の組合長も「海の動植物やさまざまなものにどんな影響を及ぼすか、長期的であるほど不安に思っている」との懸念を示したという。
 岸田は、経産省福島県漁連に示した方針・約束を反故にして、地元の反対を全て聞き流して海洋放出を強行するだろう。
 これ、岸田政権がいかに無責任で信用に値しない政権であるのかを示すものである。

統一教会問題

 岸田が対処すべき課題の中で等閑にしてはならないのが、反社会的邪教集団「統一教会」の問題だ。
 政府は統一教会の解散命令請求の可否を検討すべく、宗教法人法に基づく「報告徴収・質問権」を既に6回行使したが、今なお解散命令請求に踏み切っていない。恐らく最初から解散命令請求をするつもりなどサラサラなく、世論を抑えるために「やってる感」だけを出してアピールしていたのであろう。実に姑息だ。
 ちなみに本年6月28日、安倍晋三が生前「敬意」を表していた統一教会の総裁・韓鶴子(教祖・文鮮明の妻)は信者の前で次のように発言したと報じられている。
 「日本は特に第二次世界大戦の戦犯国だということ。原罪の国なのよ。ならば賠償すべきでしょう、被害を与えた国に
 「政治家たち、岸田を、ここに呼びつけて、教育を受けさせなさい。分かってるわね
 「私を独生女(救世主)だと理解できない罪は許さないと言ったのに、その道に向かっている日本の政治はどうなると思う?(信者「滅びます」)滅びるしかないわよね」と。
 統一教会は「霊感商法」や「合同結婚式」等の反社会的行為で日本を食い物にし(霊感商法等の被害額は令和3年までに1237億円、実際にはこの10倍以上とも言われている)、日本に向けてミサイル発射を繰り返す北朝鮮とも繋がりを有し、今なお反日思想を露骨に標榜する反社会的邪教集団だ。
 かかる邪悪な集団をのさばらせている岸田はそれに与しているとの謗りを免れない。

岸田はやる気ゼロ

 そのことは、岸田が統一教会と深い繋がりを持つ国会議員を重用していることからも明らかだ。
 昨年8月31日、自民党が役員会にて統一教会と「一切関係を持たない」との基本方針を決定した際、岸田は「所属国会議員は過去を真摯に反省し、しがらみを捨て、当該団体との関係を断つ」と明言したが、本年6月末には山際大志郎・前経済再生担当相を神奈川18区の支部長に据え、次の衆院選の公認候補に充てたのだ。
 山際と言えば、統一教会総裁の韓鶴子とともに写真撮影するほど統一教会とズブズブであることがバレて昨年10月に大臣を辞任し、それ以降一度も会見を開くことなく逃げ続けている輩だ。そんな男が過去を真摯に反省し、しがらみを捨て、統一教会との関係を断ったとは到底思えない。
 ちなみに、山際は日ごろ岸田が世話になっている麻生太郎自民党副総裁の派閥に属しているほか、山際と同じく統一教会とズブズブで、過去に「私もご父母様(文鮮明韓鶴子)の願いを果たせるように頑張るから、皆さんも一緒に頑張りましょう」「一緒に日本を神様の国にしましょう」と訴えていた萩生田光一自民党政調会長のお気に入りでもある(山際が大臣辞任直後、萩生田は同人を自民党の新型コロナウィルス等感染症対策本部長に抜擢した)。
 要するに、岸田は麻生や萩生田といった党内実力者に配慮し、山際を再び公認候補に充てたとしか思えない。岸田の頭の中には、政権維持と己の保身しか無いのだろう。

異次元のポチぶり

 その他、岸田の任命責任に発展しかねない「週刊文春」が報じている官房副長官の木原とその妻に関する疑惑をはじめ、岸田の目の前に山積する課題は多い。マイナカードを巡るトラブルも全く以て収束しそうにない。
 そもそも国を憂える気持ちも確固たる信念も政策も無く、頭の中は「己の政治基盤維持」だけで、それゆえアメリカのバイデン大統領や党内実力者、財界の声しか聞かず、国民の声は実に見事に聞き流す岸田に、これらの課題を真っ当に対処することは不可能だ。
 余談だがバイデン大統領は本年6月19日と20日、岸田が昨年12月にドヤ顔で行った「日本の防衛政策の大転換」の舞台裏を唐突に暴露した。
 「私は日本の韓国に対する姿勢や防衛予算、そしてヨーロッパでの関与を変えようとしてきた。今まで起こらなかったことが実現した」(19日)
 「日本は長い間、防衛予算を増やしてこなかったが、私は広島を含めて3回、日本の指導者と会った。私は彼を説得し、彼自身も何か違うことをしなければならないと考えた。日本は防衛予算を飛躍的に増やした」(20日)と。
 国の最重要事項すらも唯々諾々とアメリカの言いなりになる岸田の「異次元のポチぶり」には呆れる他ない。(天皷)