世相閻魔帳

顕正新聞のコラム「世相閻魔帳」

新型コロナに打ち負けた安倍の傀儡政権

世相閻魔帳⑭「顕正新聞」令和3年9月15日号

 本年九月三日、菅首相が事実上の辞任表明をした。
 自分勝手な性格で他人の話に耳を傾けない菅は、官房長官時代から人事権を掌握して気に入らない相手を恫喝・左遷、首相就任後も日本学術会議が推薦した会員候補六名の任命を拒否、記者の質問にも答えずに原稿をただ棒読みするだけと、国民を愚弄する傍若無人な態度を終始取り続けた。
 まして、科学的知見など一切持ち合わせていない菅に新型コロナ対応など務まるはずがないことは最初から明らかだった。

菅の無能ぶり

 菅は専門家の意見等を自分の都合に合うか否かという基準で採否を判断、その結果、国民に外出自粛を呼びかけながら「GoToEat」事業を開始するという支離滅裂な政策を展開、水際対策もユルユルで感染爆発を引き起こし、医療崩壊を招いた。
 失敗を糊塗しようと慌てて全国の首長に「ワクチン接種を進めろ」と号令を発し、その後の感染拡大をワクチン接種が進まない自治体のせいにしようと目論むも、無計画のためにワクチンの在庫があっと言う間に底をつき、かえって自治体から批判を受けるお粗末ぶり。
 挙句、己の政権維持と秋の衆院選で勝つための実績作りとして、国民の命を無視して緊急事態宣言発令中にオリンピックを強行するという前代未聞の異常事態を作り上げた。
 オリンピックの開会三日前には、羽田空港の検疫で新型コロナ陽性と判明したペルー滞在歴を有する大会関係者から「ラムダ株」が国内で初確認された。ラムダ株はペルーなど南米を中心に猛威を振るい十九万人を死に至らしめた最凶の変異株、国民の安全を考えれば速やかにその事実を公表するのが当然だ。
 しかし政府はこれを隠蔽、オリンピック閉会式直前の八月六日まで世間に公表しなかった。オリンピックの中止を求める声や強行開催した菅政権に対する批判がより一層強まるのを避けたかったのだろう。
 この一事から菅政権の劣悪で醜悪な体質が瞭然である。
 最近では異物が混入したワクチンを接種して死者が出たり、自宅療養中の患者が死亡する事案が増加したりと、ポンコツの菅では到底処理し切れない問題が次から次へと発生。
 加えて、菅のお膝元である横浜市長選では菅が全面支援した小此木候補が野党候補に十八万票の大差をつけられ惨敗。この結果に青ざめた、自分の選挙のことしか頭にない自民党議員が「菅では選挙に勝てない」と慌てて「菅おろし」が急加速。菅は権力に固執して無様な醜態を晒すも、これまた身内の反発を買って孤立無援に。
 こうして菅は万策尽き、政権をぶん投げてトンズラする道を選択したわけだが、この期に及んで菅が述べた辞任理由は「コロナ対策に専念したい」というもの。馬鹿も休み休み言え。
 菅政権下において新型コロナが原因で死亡した者は約一万五千人、菅政権の無為無策に起因する「人災」と言っても過言ではない。国民は菅のような陰気臭い上に無能な輩がコロナ対策を行うことなど望んでいない。さっさと退場してもらいたい。

全部アベのせい

 それにしても、何故このようなスッカラカンで全く以て宰相の器でない輩が首相になったのかといえば、それは安倍晋三前首相がモリ・カケ・桜・河井等の問題について責任追及されることを恐れて、仮病を使って政権をぶん投げ、後釜に一連の問題の〝共犯者〟と言うべき菅を据えたからに他ならない。
 そもそも、菅は官房長官として長年仕えた親分の安倍が首相在任中に決定した方針を継承して粛々と実行していただけ。だから先に述べた菅の失態は全て安倍のせいと言っても過言ではない。
 コロナ禍での「GoToキャンペーン」をブチ上げたのも安倍、オリンピックを中止や二年延期するのではなく一年延期として本年に強行する路線を敷いたのも、首相在任期間中にオリンピックを開催して政治的実績にしようと目論んだ安倍だ。
 ところが、本来徹底的に叩かれて然るべき安倍は、世間の批判の矛先が菅に集中しているのを尻目に、現在、菅に続いて自分の息のかかった自民党総裁(次期首相)を誕生させて院政を敷こうとチョロチョロと蠢動し始めている。
 九月六日現在、安倍が総裁選で支持を表明している高市早苗は「神道政治連盟国会議員懇談会」に所属し、「日本会議国会議員懇談会」では副会長を務めるなど「主客転倒の謗法」を目論む急先鋒の輩。岸田や河野といった他の候補者も、その殆どが安倍の息がかかった人物だ。
 しかし、安倍はキングメーカーを気取る前に、まず自分の疑惑について謙虚に丁寧に説明すべきだ。それが政治家として最優先すべきことではないか。
 森友問題では「私や妻が、もし小学校の設立や国有地払い下げに関与していたら、総理大臣はもとより国会議員も辞任する」と大見栄を切ったせいで公文書改ざんを強要された職員は自殺、「桜を見る会」の問題では検察審査会から安倍は「不起訴不当」と突きつけられたばかり、河井夫妻に関する「一億五千万円問題」も未だ真相は闇の中。
 このように安倍が説明責任を果たすべき疑惑はごまんとある。かかる説明責任を全うできないというのならば、国家・国民のために政界から一分一秒でも早く消え失せるべきだ。(天皷)