世相閻魔帳

顕正新聞のコラム「世相閻魔帳」

迷走・漂流し続ける岸田文雄

世相閻魔帳61「顕正新聞」令和5年1月25日号

 岸田文雄首相の迷走が止まらない――。
 岸田は年頭記者会見で「異次元の少子化対策」なるものをブチ上げたが、この名称は「異次元金融緩和」の完全なパクリ。〝何が「異次元」なのか全く分からない〟との批判が噴出するなか、「国が遅い。その一言です」と吠える東京都知事小池百合子に、18歳以下の子供に月5000円を給付する案に続き、0~2歳の第2子の保育料完全無償化を発表され、コケにされる始末。鳶に油揚げをさらわれた格好だ。
 また岸田は成長と分配の好循環による格差是正を中核とする「新しい資本主義」を掲げていたが、結局、格差拡大を加速させる安倍政権の政策を踏襲している。没個性の岸田は他人のマネしかできないらしい。
 そんな岸田は昨年10月、政治経験ゼロの長男(岸田翔太郎・31歳)を首相秘書官に抜擢するという誰もマネできない〝公私混同の情実人事〟を断行して岸田らしさを発揮してみせたところ、各方面から非難が殺到。
 当然である。首相秘書官は、安倍政権では〝影の総理〟と言われた今井尚哉(元経産官僚)が務めた要職であり、政治経験ゼロのボンボンに務まる役職ではないからだ。もしこれが〝世襲の準備・箔付け〟という理由であったら、岸田は真正のバカだ。
 案の定、翔太郎が首相秘書官に就任してから間もなく、翔太郎から民放女性記者への〝官邸極秘情報流出疑惑〟が浮上した(翔太郎と民放は否定)。
 「週刊文春」(令和5年1月5・12日号)には
 「翔太郎は飲み会や合コンが大好きで、テレビ局の記者に女子アナを紹介してくれと頼んでいたことも。商社マン時代は彼女がいたが、今年に入って『彼女が欲しい。出会いがないんだよ』ともらすこともありました」
 という翔太郎の知人の証言が掲載されていたが、仮に翔太郎が女性記者に気を引こうとして官邸の極秘情報を流出していたとしたら大問題だ。彼女が欲しいのであればとっとと首相秘書官を辞めて、夜な夜な合コンに精を出せばいい。

閣僚等の「辞任ドミノ」

 岸田に「人を見る目」が無いことは閣僚の「辞任ドミノ」を見れば説明の必要もない。
 最初に倒れたドミノは山際大志郎自民党麻生派の前経済再生担当相)だった。
 山際は反社会的邪教集団「統一教会」系の集会に参加して教祖の韓鶴子と写真撮影までするなど、統一教会とのズブズブの関係が相次いで発覚したにもかかわらず、保身のために「記憶にない」を連発してゴマカシ続けた。
 あまりに往生際の悪い山際は与党内からも「瀬戸際大臣」と呼ばれるようになり、昨年10月24日に辞任した。
 次いで倒れたのは葉梨康弘自民党岸田派の前法相)。
 葉梨は「法相は朝、死刑(執行)のはんこを押す。昼のニュースのトップになるのはそういうときだけという地味な役職だ」との不謹慎発言のほか、「法相になってもお金は集まらない。なかなか票も入らない」などと述べていたことが発覚。
 世間の注目とカネと票を集めることしか頭にない葉梨は〝ハナシ〟にならない。だから政権にとって〝ヨウナシ〟となり、昨年11月11日に辞任した。
 次いで倒れたのは寺田稔(自民党岸田派の前総務大臣)。
 寺田を巡っては「週刊文春」が7週にわたり寺田の妻の政治団体による脱税疑惑や令和3年秋の衆院選での買収疑惑など「政治とカネ」の疑惑(計10件)を報じていた。
 厚顔無恥な寺田は辞表提出を拒み続けたが、昨年11月20日に辞任を余儀なくされた。
 その後に倒れたのが秋葉賢也自民党茂木派の前復興大臣)。
 秋葉に関しては令和3年秋の衆院選で公設秘書が報酬を受け取って選挙運動に従事した公選法違反疑惑のほか、秋葉の政治団体が秋葉の妻と母親に対し地元事務所の賃料として計約1400万円も支払っていたことが判明。昨年12月27日に辞任した。
 そして秋葉と同じ日に総務大臣政務官を辞任に追い込まれた杉田水脈自民党安倍派)。杉田の下劣・破廉恥ぶりは前号の本コラムで取り上げたとおりだ。
 自民党に人材が払底しているにしても、辞任に追い込まれた議員らはどれもこれもまともではない。このような輩を何食わぬ顔で大臣に据えた岸田の眼力の無さは異常だ。

無為無策のコロナ対応

 岸田は政権維持のため国家・国民を蔑ろにして自民党の有力議員(派閥)に配慮せざるを得ないのだろう。
 例えば、岸田は統一教会との明らかな関係が露呈しても「記憶にない」を連発した山際を、経済再生担当相から辞任させた僅か4日後に自民党の新型コロナ対策本部の本部長に就くことを認めた(指名したのは山際と同じく統一教会とズブズブの萩生田光一)。
 岸田は「その人物の経歴・経験を踏まえ総合的に判断」などと答弁したが、国民を愚弄しているとしか言いようがない。
 恐らく岸田は自民党副総裁の麻生太郎の派閥に属する山際を無下に扱って麻生が機嫌を損ねると自身の立場が危うくなると考えたのだろう。だが記憶喪失の山際が国民の命と健康にかかわるコロナ対策などできるわけがない。
 岸田が首相に就任した令和3年10月4日時点における国内のコロナ死者総数は1万7749名だったが、その後、増加の一途をたどり、現在の「第8波」では死者数が過去最多を記録し、その総数は6万6297名(本年1月25日現在)に上っているが、その原因の一端が岸田にあることは言うまでもない。

統一教会問題

 また昨年8月、岸田は統一教会との関係を断ち切る(断ち切ったように見せる)ことを目的に内閣改造を行った際、統一教会とズブズブだった経産相萩生田光一自民党政調会長にスライドさせた。
 自民党の最大派閥・安倍派の有力議員である萩生田の反感を買えば「岸田降ろし」が始まりかねない。それゆえに岸田は萩生田を政調会長という要職に充てたのだろう。
 しかし萩生田は過去に統一教会の八王子教会で
 「私もご父母様(文鮮明韓鶴子)の願いを果たせるように頑張るから、皆さんも一緒に頑張りましょう」
 「一緒に日本を神様の国にしましょう」
 などと訴えたり、昨年夏の参院選前にも同教会を訪問したりと、日本人から巻き上げたカネを核ミサイル開発に余念がない北朝鮮に提供している〝反日カルト〟の統一教会とまさに「蜜月」の関係にある。
 かかる萩生田を政調会長(党として如何なる政策を打ち出すかを取りまとめる責任者)に充てるとはどうかしている。
 しかもだ。岸田は昨年11月、統一教会の被害者救済の法案提出に向けた自民党内での調整を萩生田に行わせたのだから唖然とする。あたかも泥棒に法律を作らせるようなものだ。
 昨年末に成立した法人寄附不当勧誘防止法が「抜け穴」だらけで実効性がほとんどなく、およそ「被害者救済法」とは評し難い法律になってしまったのも無理もない。
 要するに、岸田は国家・国民のことなど考えていないのだ。

「首相」になることが目的だった岸田

 外相や防衛相などを経て首相になった岸田の「人生最大の挫折」は「東大に3年連続で不合格になったこと」だという。
 また岸田は首相就任前の令和元年、出演したテレビ番組で「首相になったら何をしたいか」と問われて、開口一番「人事がしたい」と回答したというから開いた口が塞がらない。
 岸田の人物像を考察するに、結局のところ国を憂える気持ちも確固たる信念も政策も無く、ただ漫然と「政治家」という家業(祖父も父も衆院議員)を継ぎ、「首相」になることだけを目指して政治家としての人生を歩んできたと思われる。
 そうして初当選から約30年後、ついに「首相になる」目標を達成した岸田は、ただ安倍政権の政策等を踏襲しながら迷走・漂流を続けているのである。
 アメリカからの強い要請を受けて「敵基地攻撃能力」を保有する防衛政策の大転換を行うとも、「立正安国」という根本対策を知らず対症療法に終始している以上、国は亡ぶ。まして岸田のような愚図の宰相が国の舵取りをしていれば尚更である。
 国会答弁等で「検討する」を連発する岸田は〝検討使〟と揶揄されているが、そろそろ自身の出処進退を検討したほうがよい。(天皷)

「欠陥議員」杉田水脈の「製造物責任」と「使用者責任」を問う

世相閻魔帳60「顕正新聞」令和5年1月15日号 

 昨年12月度総幹部会の席上、浅井先生は在日コリアンアイヌ民族に対し下劣極まる差別発言を繰り返す杉田水脈自民党安倍派の衆院議員)が総務政務官に抜擢されていることに言及された(その数日後、岸田首相は杉田を事実上更迭した)。
 今回は「欠陥議員」杉田水脈の「製造物責任」と「使用者責任」の所在等について簡単に述べる。

伊藤詩織さんを中傷

 杉田水脈の人物像は、元TBSワシントン支局長で「安倍礼賛本」を複数出版している山口敬之が平成27年4月、酩酊状態にあって意識のない伊藤詩織さんに性的暴行を加えた事件に関する杉田の言動を見れば多言を要しない。
 山口が性的暴行に及んだ事実は伊藤さんが山口を訴えた民事裁判の判決で認定され、山口は約330万円の損害賠償を命じられている(同判決は昨年7月7日付けで確定)。
 しかし事件発覚当時、安倍応援団は同胞の山口を庇うため被害者の伊藤さんを徹底的に攻撃し貶めた。杉田も例外ではなかった。
 杉田はイギリスの公共放送局BBCの取材に対し「彼女(伊藤さん)の場合は明らかに女としての落ち度があった」「こういうのは男性(山口)のほうがひどい被害をこうむっているのではないかと思う」などと平然と語ってみせたのだ。

下劣な攻撃にも加担

 また杉田は「はすみとしこ」(安倍応援団のヘイト漫画家)による伊藤さんへの攻撃にも積極的に加担した。
 投稿内容を紹介することすら憚られるが、はすみは山口を擁護する目的で伊藤さんを模した女性とともに「そうだデッチあげよう」「枕売って泣くボロい商売」等の文章が描かれたイラストや「自分の望みが叶わないと相手をレイプ魔呼ばわりした卑怯者」「カネをつかまされた工作員」などと伊藤さんを貶めるツイートを投稿し、あたかも伊藤さんが山口を陥れるために虚偽の性被害を訴えているかのような印象操作を行った。
 まさに品性下劣の一言に尽きる。真っ当な人間性を有する者であれば、はすみの投稿には底知れぬ嫌悪感を覚えるはず。だが杉田は違った。
 むしろ杉田ははすみに同調し、インターネット上の番組ではすみと共演して下劣なイラストを題材に伊藤さんを貶めたほか、はすみのゲスなツイート(計25件)に好意的・肯定的な感情を示す「いいね」を押していたのだから唖然とする。
 そして昨年10月、東京高裁は杉田がはすみの下劣なツイートに「いいね」を押したことは「社会通念上、許される限度を超える侮辱行為」と認め、杉田に伊藤さんへの損害賠償として55万円を支払うよう命じた(厚顔無恥な杉田は最高裁に上告等の申立てを行っている)。

人間性を疑う発言の数々

 その他にも杉田は令和2年9月の自民党の会合で性暴力被害者の相談事業をめぐって「女性はいくらでも嘘をつけますから」などと平然と言ってのけたり、在日コリアンアイヌ民族に対する差別発言を公然と行ったりしている。
 平成28年に杉田がブログやSNSに投稿した記事には「小汚い格好に加え、チマチョゴリアイヌの民族衣装のコスプレおばさんまで登場。完全に品格に問題があります」「同じ空気を吸っているだけでも気分が悪くなるくらい気持ち悪く、国連を出る頃には身体に変調をきたすほどでした」「彼らは、存在だけで日本国の恥晒しです」などと記載されている。
 「存在だけで日本国の恥晒し」なのは他ならぬ杉田の方だろう。

欠陥議員の製造過程

 そもそも杉田は平成29年に自民党から出馬する以前は「日本維新の会」をはじめ複数の政党を渡り歩くも当選したのは平成24年の総選挙1回だけで(選挙区では落選、比例復活)、平成26年の総選挙では最下位で落選している。つまり杉田は小選挙区での当選が望めない人望の薄い政治家なのだ。
 もともとノンポリだった杉田は落選中、右翼界隈に媚びを売る活動を展開した。例えば平成28年、杉田は邪教幸福の科学」元常務理事の釈量子(幸福実現党々首)らと共に、国連欧州本部で開かれた女子差別撤廃委員会の会合前に「慰安婦問題」に関する自説をスピーチしたという。
 そうした杉田の右翼活動に目を付けたのが安倍晋三日本会議の旗振り役・櫻井よしこだった。
 安倍は「杉田さんは素晴らしい」と言い、配下の萩生田光一を使って杉田に自民党からの出馬を打診したという。
 また櫻井よしこも杉田に自民党から出馬するよう後押ししていた。
 余談だが櫻井は昨年12月に開催された「すぎた水脈さんを育てる会」なる集会で登壇して満面の笑みを湛えながら杉田を激励したり、杉田の誕生日会をセッティングしてツーショット写真を撮影したりと、まるで愛娘のごとく杉田を溺愛している節がある。
 思うに、櫻井にとってトンデモ発言を繰り返す杉田こそ自身が育てた理想の議員、いわば「最高傑作」なのだろう。櫻井のドス黒い本性が垣間見える。
 かくして平成29年以降、杉田は小選挙区ではなく安倍のお膝元・山口県を含む自民党比例中国ブロックで比例単独候補として出馬し、杉田個人ではなく自民党が獲得した票によって2度も議席を得ている。
 要するに、安倍は選挙区では「検品」ではじかれる杉田を、検品のない比例単独候補という特別優遇レーンに乗せてやることで、欠陥だらけの杉田を2度も国会に「出荷」したのだ。
 杉田水脈という欠陥議員の「製造物責任」が安倍や櫻井らにあることは明白だ。

杉田の役割

 なお「FRIDAYデジタル」(昨年12月2日付け)に掲載された「安倍晋三が『育てた』政治家・杉田水脈が差別発言を繰り返す理由」との記事には「自民の長老議員」の興味深い話が記載されていた。
 「極端に右翼的な発言をする政治家。その役割を果たすことで、杉田は議員バッジが保障されている。小選挙区には出馬せず、比例のみで議員を続けているのはこのためです。差別的な発言を繰り返していては、一般国民からは顰蹙を買うばかりですが、一部支持団体にとっては重宝する存在です」と。
 引用中の「一部支持団体」に日本会議が含まれていることは言うまでもない。
 また杉田は平成28年8月に「幸福の科学統一教会の信者の方にご支援、ご協力いただくのは何の問題もない」などとツイートしている。杉田は先に述べたとおり幸福の科学のほか、反日カルト・反社会的邪教集団の「統一教会」とも接点がある。
 具体的には平成31年、杉田は統一教会のダミー団体「平和大使協議会」の下部組織「熊本ピュアフォーラム」なる団体の講演会に講師として参加していたのだ。同団体の事務局長・稲富安信は統一教会関連の政治団体国際勝共連合 熊本県本部」の代表者である。
 まとめると杉田の役割は、世間の批判を気にして自民党議員が口にしたがらない〝自民党支持邪教団体(日本会議統一教会)等の主義主張に沿った差別的言動〟を積極的に行って自民党組織票を獲得することにあると言えそうだ。

岸田の使用者責任

 岸田は昨年8月、杉田を総務政務官に任命した。安倍の「忘れ形見」のような杉田を政権の要職に充てて使用した岸田の狙いは最大派閥・安倍派への配慮だろう。所詮は己の政権維持のためだ。
 だが総務省は「ネット上の誹謗中傷対策」や「アイヌ政策」等も担当している省庁である。平然と他者を誹謗中傷し、アイヌを愚弄する杉田を同省の政務官に任命するなど、タチの悪い冗談でしかない。
 しかも杉田は総務政務官に就任した後も社民党々首の福島瑞穂を名指しして「LGBT(性的少数者)以上に気持ちが悪い」とした他者のツイートに「いいね」を押しているから度し難い。
 閣僚の辞任ドミノと首相秘書官に起用した長男による〝官邸極秘情報流出疑惑〟で頭を抱える岸田は、無謀にも杉田を総務政務官に任命したことを「適材適所」と言い張って保身を図ったが、最終的には杉田を事実上更迭せざるを得なくなった。
 ロクでもない議員しか見当たらない日本の政界と岸田の人を見る目の無さと無能ぶりにはホトホトうんざりする。
 岸田は閣僚を更迭するたびに「任命責任を重く受け止めている」と口先だけの釈明に終始するのではなく、自ら責任を取って総理大臣を辞めたらどうか。(天皷)

自称「80万体勢」を未だに達成していない宗門の謎

世相閻魔帳59「顕正新聞」令和5年1月5日号 

 令和4年12月9日、「文化庁」による全国の宗教団体の「信者数」等に関する調査結果をまとめた資料「宗教年鑑」(令和4年版)が公表された。
 そこには「日蓮正宗」(宗門)の令和3年12月31日時点の信者数が
 「78万9500人
 と記載されている。
 1年前に公表された「令和3年版」と見間違えたのかと一瞬頭が混乱したが、何度見直してもやはり「令和4年版」の数字なのだ。
 令和2年12月31日時点の信者数が掲載されている令和3年版では「78万2300人」だったので、1年間でわずか「7200人」しか増えていないことになる。しかも100人単位の数字がいかにもテキトーだ。この調子だと1年後も「80万体勢」は未達成だろう。
 「80万体勢」の大法螺を吹いた早瀬日如管長に宗門僧俗が愛想を尽かし、より強力な遠心力が働き、もはや宗門の退潮は歯止めがかからないことが窺われる。
 以下、改めて早瀬日如管長による「80万体勢」の偽計大失敗と末期症状を呈する宗門の実態について触れておく。

大ウソの達成宣言

 早瀬管長は平成21年に「平成三十三年(※令和3年)、宗祖日蓮大聖人御誕生八百年までには、御誕生八百年にちなんで、法華講員八十万人の体勢を築き、大法広布に資していきたい」などと下らぬ思いつきで「80万体勢」なるものをぶち上げた。
 目標とした令和3年が近づいてくると、宗門は「御命題達成の御祈念」なる観念文を拵えて全法華講員に勤行のたびに祈らせてみたり、宗内全僧俗に1日2時間の唱題を百日間行なわせる「百日間唱題行」なる馬鹿げたことを強要したりした。
 かくて早瀬管長は令和3年元旦
 「宗門は、去る平成二十一年七月、総本山に於ける七万五千名大結集の砌、『法華講員八十万人体勢構築』の誓願を立て、(中略)今回、見事に誓願を達成することが出来ましたことを心からお祝い申し上げます」(「大日蓮」令和3年1月号)
 「宗門は此の大佳節を迎えるに当たり、『法華講員八十万人体勢構築』の誓願を立て、僧俗一致・異体同心して、勇猛果敢に折伏戦を展開してきた結果、日本国内寺院所属の法華講員の総計が八十万人を超え、見事誓願を達成することが出来ました」(「大白法」令和3年1月1日号)
 と「80万体勢」の達成宣言をしてみせたわけだが、前述のとおり「宗教年鑑」(令和3年版)で令和2年12月31日時点の宗門の信者数が「78万2300人」と公表されたため、早瀬管長の達成宣言が「大ウソ」だったことがバレてしまったのだ。

眉唾物の信者数

 そもそも文化庁の資料に記載された宗門の信者数はおよそ信用できない。なぜなら宗門の信者数の推移には幾つもの不可解な点があるからだ。
 一例を挙げる。宗門は文化庁に対し〝平成27年には信者が6万人増えた〟と報告しているが、早瀬管長が「全国各講中折伏達成数を総計すると、見事目標を達成」と誇ってみせた翌28年はわずか2000人しか増えていないのだ。
 勧誘成果が前年比97%減などという極端な差異が生じることは通常考えられない。「見事目標を達成」していたのであれば尚更である。

大草一党の謗法与同を追認

 しかも宗門は「80万体勢」の達成宣言後に発出した令和3年1月5日付けの通達に「このたびの総計数には、理境坊妙観講支部折伏によるネパール国在住信徒等が含まれます」と記載したとおり、「80万体勢」なるものに妙観講(講頭は大草一男)のインド・ネパール等における勧誘成果(約10万人)を計上している。
 これまで本コラムが再三指摘しているとおり、大草一党はインド・ネパール等における勧誘でヒンズー教の本尊や釈迦の絵像仏像を祀ったり、邪教の団体を利用したりという謗法与同と騙し討ちに近いデタラメ勧誘(「御授戒」を「改宗」ではなく「祝福」と謀るなどしていた)を行っていた。
 かかる経緯で法華講員として計上された現地人の大半は、当然のことながら未だヒンズー教や釈迦仏法の信仰を保ち続けている。そもそも宗門に入信させられた自覚すら全くない者たちばかりだろう。
 だが早瀬管長はこうした大草一党の謗法与同とデタラメ勧誘の実態を知りながら、宗門僧俗の多くがその実態をよく知らないことをいいことに、帳尻を合わせるためにその勧誘成果を追認しているのだ。早瀬管長が発表した「80万体勢」がいかにデタラメなのかがよくわかる。
 ちなみに早瀬管長は大草一党の謗法与同を黙認する一方、宗門僧俗に対しては「謗法に対して破折もせず、そのまま放置しておくことほど恐ろしいことはありません。したがって、私どもは、大聖人様の仰せのままに謗法厳誡・折伏正規の宗是を厳守し……」(「大日蓮」令和4年10月号)などと偉そうに説法しているのだから、開いた口が塞がらない。

末期症状を呈する宗門

 国内における宗門の実態も惨憺たるものだ。
 例えば能化(次期管長候補)で教学部長の地位にある水島日叡が住職を務める「能安寺」(埼玉県所沢市)では〝信者獲得のために世間ウケのよい「釈尊」を前面に出し、日蓮大聖人の御事は敢えて匿そう〟と考えたのか
 「当寺は、釈尊(お釈迦様)に始まる仏教を唯一正統に伝える伝統宗派である日蓮正宗のお寺です」
 「ほかの伝統的な宗派のお寺と同じく、当寺も日蓮正宗という伝統宗派のお寺です。しかし、当宗は、お釈迦様が教えたとおりの教義を厳正に守り今に伝える唯一の宗派です」
 との摧尊入卑の悪言をホームページに堂々と掲載している。
 余談だが、能安寺所属の法華講員は令和3年10月、顕正会本部に夥しい数の迷惑電話(11日間で895回)をかけて業務を妨害したことを理由に逮捕され、その後、有罪が確定している(偽計業務妨害罪で罰金30万円の略式命令)。
 己の不品行を棚に上げ、信心の欠片も無く、信者の指導・監督もできず、宗門の夏期講習会で国立戒壇の御遺命と顕正会を誹謗・怨嫉しておきながら、顕正会教学部の糾弾から必死に逃げ続けている水島のような輩が「次期管長候補」の一人なのだから、宗門は末期症状だ。
 他にも末寺住職が供養金の着服、下着泥棒、飲酒運転、強制わいせつ致傷といった刑事事件等を引き起こした話もよく耳にするが、宗門の禿人が「俗より出でて俗より俗なり」と言われるのも頷ける。

餓鬼道に堕する

 早瀬管長がこうした国内外のデタラメ勧誘を追認していることを見れば、「80万体勢」なるものが広宣流布を見つめた道念が発露したものでないことは明白だ。
 所詮は「宗祖日蓮大聖人御聖誕八百年」にかこつけて信者を増やし、禿人の食い扶持のために供養を収奪することが目的だったわけだが、むしろ宗門の衰退ぶりはますます深刻な事態に陥っていると言えよう。
 些か古い話になるが「週刊ダイヤモンド」(平成30年3月24日号)には「信者数激減で苦しむ日蓮正宗」と題する記事が掲載され、宗門の困窮ぶりが次のごとく報じられた。
 「かつては公称信者数で国内最大の仏教宗派であった日蓮正宗が今、危機的な状況に陥りつつあるという」
 「懸命に布教を行っても信者数が大きく増えることは期待できない中、『今後、多くの末寺が危機的な状況に陥るだろう』(末寺住職)という懸念が広がっている」と。
 当該記事が掲載されてから既に4年以上経過しているが、正月の初登山者が、早瀬管長が登座した直後の平成18年の約2万7000人から令和2年の約1万7000人と、実に約1万人も激減したことやコロナ禍の影響を踏まえれば、恐らく現在の宗門は当時以上に困窮して更なる危機的な状況に陥っていることは疑いないだろう。

五体投地の懺悔をせよ

 かつて浅井先生は「日蓮大聖人の唯一の御遺命は国立戒壇建立」と未だ宣示しない優柔不断な早瀬管長に対し
 「オママゴトはやめて、ただ御遺命違背の大罪を大聖人様に謝し奉り、真摯に出なおさなければいけない」
 「なぜ御遺命に背いた大罪を、大地に身を投げて大聖人様にお詫び申し上げないのか。この改悔なくしては、弘通など口にする資格もないではないか」
 と強烈に呵責されたが、御遺命違背の大罪につき五体投地の懺悔をしない限り、遠からず宗門の禿人らが餓鬼道に堕することは疑いない。(天皷)

安倍・自民党と「電通」の癒着構造(3)

世相閻魔帳58「顕正新聞」令和4年12月15・25日合併号

 今回は安倍晋三が「憲法を改正して日本を『神の国』にする」という野望の実現を目指す過程で、国内最大手の広告代理店「電通」にナチスドイツで宣伝省大臣としてプロパガンダを管轄し大衆をナチス支持に導いた「ゲッベルス」のごとき働きを期待し、殊に憲法改正の「国民投票」では電通を使った大規模な広告戦略(世論形成)を画策していたこと等について述べる。

神の国」の画策

 浅井先生は「安倍政権八年の悪政」特集号で次のごとく喝破された。
 「(安倍は)日本最大の極右団体『日本会議』および『神社本庁』と結託して、日本を『神の国』にしようとする魂胆だった。すなわち明治憲法のごとく天皇を絶対化して『国家神道』を復活させ、戦前の日本を取り戻そうとするものであった。
 これを具体的に言えば『天照太神を祀る伊勢神宮を日本の本とする』ということである。
 だから平成28年に日本でG7会議が行われたとき、安倍晋三はわざわざ開催地を東京ではなく伊勢志摩に決め、会議に先立ってG7の全首脳を伊勢神宮に招き入れ、『御垣内参拝』という特別の参拝までさせている。
 これ、日本の国家神道を暗に国際的に認めさせようとして、言葉巧みにG7首脳を誘い入れたものである」と。

伊勢志摩サミット

 そもそもサミット開催地が三重県(伊勢・志摩)に決定したのは、森友事件で国有地がタダ同然で売却されたのと同様、安倍夫妻の意向が強く働いたからだ。
 未だサミットの開催地が決定していない平成27年正月、安倍の妻・昭恵は親しい友人に「来年ね、サミットがあるでしょ。伊勢でできたらいいわねって彼(安倍晋三)と言ってるのよ。でも、三重県が手をあげないのよ」と述べたという。
 また同月5日、安倍は伊勢神宮を参拝した際に「ここはお客さんを招待するのにとてもいい場所だ」と唐突に述べた。
 安倍の取り巻きは「総理のご意向」を忖度し、参拝に同行していた〝安倍の子飼い〟と言い得る鈴木英敬(当時三重県知事。元経産官僚で第一次安倍政権では内閣官房に参事官補佐として出向した)に「サミット候補地として立候補すればいい。いま直接、首相に伝えるべきだ」などと進言した。「今から手を挙げても間に合いますか」と鈴木から尋ねられた安倍は「いいよ」と即答したという。
 これ、もともと〝サミットを伊勢志摩で開催してG7首脳を伊勢神宮に参拝させたい〟と話を進めていた安倍と神社本庁幹部がそれを自ら言い出すわけにはいかないため、神社本庁との距離が近いとされる手下の鈴木に立候補させた「出来レース」と言われている。
 かかる経緯で三重県は最も遅れての立候補となったが、安倍夫妻の意向どおり開催地に正式決定したのだった。

安倍が伊勢志摩に拘った理由

 安倍が伊勢志摩でのサミット開催に拘った理由は、各国首脳が伊勢神宮に参拝する光景を国内外に発信することで、外には日本の国家神道を暗に認めさせ、内には伊勢神宮(神社)に対する国民の関心を昂らせて国家神道への抵抗を取り除き、以て安倍と日本会議神社本庁が結託して進めていた「神の国」の野望を早急に実現させることにあったと言える。
 その証拠に、安倍と結託していた日本会議の顧問で当時「伊勢神宮宮司」であった鷹司尚武(現・神社本庁統理)は、「(伊勢志摩サミットを)機に日本の文化の神髄ともいへる神道が広く理解され、神宮や神社への関心が昂ることを期待してをります」(平成28年1月)、「外国人参拝者の増加」や「国民への神道の理解を促すこととなり、(神札の)頒布に繋がり得る」(同年3月)などと伊勢志摩サミットを利用して国内外に神道を布教する意思を極めて露骨に示していた。

弱腰な日本のマスコミ

 海外メディアの多くは、安倍が各国首脳を伊勢神宮に招き入れて参拝させたことを強く非難している。たとえば英紙ガーディアンは複数の識者のコメントを掲載する形で安倍の所為を次のように厳しく批判している。
 「開催地の選定は、安倍首相と神道の強いイデオロギー的つながりや、神道の修正主義的政治課題と『非常に密接な関係がある』……安倍首相が神道政治連盟に積極的に関与し、神道を政府の中枢に取り込むことを目的としていることと完全に一致する」
 「G7のリーダーが神道を正当化するために利用されるのを見るのは不愉快でしかない」等々。
 本来これらは日本のマスコミが報じなければならない内容だ。しかし日本のマスコミは弱腰ゆえに政府や権力者から圧力をかけられることを過剰なほど恐れ、こうした重要な情報等を報じないばかりか、政府に言われるがまま(G7首脳が伊勢神宮を)「参拝」ではなく「訪問」したと事実を歪曲して報じる始末。実に度し難い。

一気呵成に改憲を目論む

 伊勢志摩サミットの翌年(平成29年)、安倍は満を持して「2020年を新しい憲法が施行される年にしたい」と憲法改正の目標期限を明示した。
 また日本会議の旗振り役である櫻井よしこが共同代表を務めるダミー団体「美しい日本の憲法をつくる国民の会」も全国の神社に櫻井がプリントされた幟旗等を大量に掲げるなどして運動を加速させ、平成30年には憲法改正の賛同署名が1000万筆を超えたと発表した。
 このように、安倍や神社本庁日本会議は伊勢志摩サミットを利用して神社の存在感を高めながら改憲運動を加速させることで、東京五輪開催までに憲法改正の機運を醸成することに腐心していた。
 これ全ては国威発揚に利用できる東京五輪のお祭りムードを利用する形で憲法改正の総仕上げたる「国民投票」を実施し、一気呵成に改憲を成し遂げるためであったと窺われる。

総仕上げを託された電通

 そして国民投票を有利に進める重要な役割を担うのが他ならぬ電通だ。もともと自民党のPRは電通が長年担当している。いざ国民投票となれば改憲派のPRは自民党とズブズブの電通が担うことは疑いない。
 電通ならばゴールデンタイムのテレビCMをはじめ広告媒体(新聞・雑誌・ラジオ・ウェブサイト・交通広告等)の優良枠を事前に押さえることができる。そこを改憲派の広告で埋め尽くすわけだ。
 そのためには莫大なカネが必要となるが、安倍・自民党には改憲のためなら労力もカネも惜しまない神社本庁日本会議等の強力な支援団体がついている。自民党(与党)に媚を売る一般の大企業等も数多く存する。カネの心配はほとんど無い。
 そして改憲派の広告が大量に垂れ流されれば無警戒の国民は広告の影響をもろに受け、いつの間にか「改憲すべし」との世論が圧倒的多数を占めていよう。
 自民党副総裁の麻生太郎は、かつて「ある日気づいたら、ワイマール憲法が変わって、ナチス憲法に変わっていた。誰も気づかないで変わった。あの手口に学んだらどうかね」と発言したこともある(後日撤回)。
 つまり仮に安倍が生存していて国民投票まで辿り着いた場合、安倍は電通を使って世論を誘導し、容易に憲法改正を成し遂げていた可能性が高かったのだ。

〝政商〟電通の暗躍ぶり

 ちなみに電通は安倍の邪な目的を達成するために開催された伊勢志摩サミットでも政商ぶりを発揮している。
 すなわち電通は政府から「国際メディアセンター設営及び運営」すなわち世界中のメディア関係者(約5000人)が集結するサミットの取材・編集拠点の設営及び運営という最重要業務の委託を受けていた(受注額は20億円以上)。
 また「公式ホームページに関する企画・制作」及び「公式ホームページのSNS運営」の業務の委託も受けていた。前述のごとく海外メディアから厳しい批判を浴びせられた伊勢志摩サミットだったが、そのホームページ等ではあたかも安倍が華々しい成果を上げたかのように演出し、各国首脳が伊勢神宮にいる様子等も発信していたのだ。
 さらに電通の職員が毎年出向している「内閣広報室」は首脳会談の様子のみならず、敢えて発信する必要が認められない各国首脳が伊勢神宮日本会議顧問の鷹司と握手している映像等まで全世界に向けて発信し、安倍の狙いを忠実に実現してみせた。

永久に潰えた「神の国」の野望

 しかしその後、周知のとおり安倍は森友・加計・桜・河井等の疑惑が次々と噴出したことで仮病を使って首相を辞任。その後も安倍は「神国日本」に執念を燃やして再々登板を目論むも、ついに本年7月、浅井先生の62度にわたる諫暁を無視し続けた末に諸天の鉄槌が下り横死した。
 これにより安倍らが画策した「神の国」の野望は「永久」に潰えた(詳細は「顕正新聞」令和4年10月25日号掲載の本コラムを参照)。
 今こそマスコミは安倍の悪政のお先棒を担ぎ、政商として自民党と癒着して甘い汁を吸ってきた電通の深い闇を暴くべきである。(天皷)

安倍・自民党と「電通」の癒着構造(2)

世相閻魔帳57「顕正新聞」令和4年12月5日号

 日本最大手の広告代理店「電通」の元専務・高橋治之(組織委員会元理事)によるIOC委員らへのロビー活動(働きかけ)と多額の賄賂、そして安倍晋三が全世界に向けて発信した「アンダーコントロール」の大ウソなど、汚い手法をフル活用して招致した東京オリンピックパラリンピック東京五輪)の深い闇が、安倍の死後、重しが取れたかのように動き始めた東京地検特捜部の強制捜査等によって次々と暴かれつつある。
 特捜部と公正取引委員会は本年11月25日、東京五輪の組織委が発注したテスト大会関連業務の入札で談合が行われたとして、独占禁止法独禁法)違反の疑いで電通本社等を家宅捜索した。電通本社への家宅捜索は7月末に引き続いて本年2回目となる。
 この談合事件も安倍・自民党電通の癒着がもたらした事件と言い得る。以下、簡単に説明する。

談合事件の概要

 国及び地方公共団体が役務を調達(業務委託)する場合には一般競争入札によって契約相手を決めるのが原則とされている。
 談合(入札談合)とは、個々の発注案件ごとに当該案件を落札する企業を入札参加者間で決めておき、当該企業が受注できるように他の企業が入札参加を辞退するなど協力することを言い、独禁法によって禁止されている。談合をすると競争原理が働かないため、一般的に落札価格は高くなる。
 今回談合の疑いがもたれているのは組織委が平成30年に発注したテスト大会の「計画立案、計画支援業務」(計26件)だ。当該業務は一般競争入札によって電通を含む9社1団体で受注して落札総額は5億円超。このうち電通は5件を計8千万円で落札している。
 だが「朝日新聞」(11月26日付け)によると、テスト大会関連業務の発注側である組織委の「大会運営局」のうち同局次長と、電通から出向していた職員が、受注側の電通本体の入札担当者と協議し、この3人で「どの企業にどの競技を受注させるか」という割り振りを事前調整(談合)した疑いがあるという。

東京五輪の経費が跳ね上がった理由

 談合の結果、計26件の入札の大半は1社だけが参加することとなり、他社との価格競争が行われなかった。とはいえ、その1社に発注しなければ業務(競技)を遂行できないため、受注側の〝言い値〟で落札額が決まり得る状況が完成したのだ。
 要するに、テスト大会関連業務の競争入札は財布の紐を握る発注側と受注側の双方で中心的役割を担っていた電通主導の「お手盛り談合」によって形骸化されたわけだ。
 またテスト大会関連業務(数百万から数千万円)を落札できれば、数億円規模になる本大会の実施・運営業務も受注できることがほぼ確定するため、テスト大会関連業務の談合は実質的に後続の本大会業務という〝巨額利権の山分け〟と言える。
 実際、電通等はテスト大会の時とほぼ同じ競技で本大会の実施運営に関する業務を随意契約競争入札無し)で受注。しかも受注額は組織委が見積もっていた約149億円という最低価格(予定価格)と比較して平均で3割も増加し、計約196億円にまで上ったという。
 このことからも、出向してきた電通等の職員により組織委が牛耳られ、電通等の言い値のまま発注していたことが優に窺われる。まさにこれが「世界一カネのかからない五輪」「コンパクト五輪」などと宣っていた東京五輪の経費が莫大に跳ね上がった理由の一つと言えよう。
 言わずもがな、電通等にぼったくられた分のツケを払わされるのは国民だ。

疑惑は安倍に通ずる

 まさに東京五輪は「電通の、電通による、電通のためのイベント」(本間龍「東京五輪の大罪」)でしかなかったわけだが、そもそも大ウソと賄賂で東京五輪を招致し、これを血税食い散らし放題の「餌場」に整えて電通に提供した犯人は安倍晋三だ。
 連日ワイドショーでは既に受託収賄罪で4回も起訴された東京五輪招致のキーマン・高橋治之を大罪人のごとく報じているが(それは決して間違いではないが)、もともと高橋は逮捕を恐れて招致に向けて暗躍することに消極的だった。
 そんな高橋に「絶対に高橋さんは捕まらないようにします。高橋さんを必ず守ります」と直接電話で確約し、高橋を動かしたのは他ならぬ安倍だ。詰まる所、東京五輪を巡る疑惑の全ては安倍に通ずる。

東京五輪を利用して「神の国」を目指す

 では、なぜ安倍は電通東京五輪という絶好の餌場を提供し、血税を好き放題食い散らかさせたのか。
 その最たる理由は、安倍が「憲法を改正して日本を『神の国』にする」という自身の野望実現を目指す過程で、電通ナチスドイツで宣伝省大臣としてプロパガンダを管轄し大衆をナチス支持に導いた「ゲッベルス」のごとき働きぶりを期待していたからに他ならない。
 具体的に示す。まず安倍は電通と協力してG7首脳を伊勢神宮に招き入れる「伊勢志摩サミット」を開催し終えた翌年(平成29年)、東京五輪が開催される令和2年(2020年)を「新しい憲法が施行される年にしたい」と憲法改正の目標期限に設定した。
 なぜ令和2年の施行を目指すのかと野党議員から問われた際、安倍は「東京オリンピックパラリンピックも予定されている年であります。まさに新しい日本を始めようという機運が漲っている中において一つの目標として掲げている」と回答している。
 だが普通に考えれば、たかが五輪が開催されるだけで「新しい日本を始めようという機運」など漲るはずがない。この回答は図らずも安倍が自身の野望を漏らしたものと言えよう。
 要するに、安倍は国威発揚に利用できる東京五輪の開催までに日本会議の旗振り役である櫻井よしこが共同代表を務める「美しい日本の憲法をつくる国民の会」等による改憲推進運動で憲法改正の機運を高めた上で、電通東京五輪に合わせて醸成するお祭りムードを利用して一気に改憲を成し遂げ、「新しい日本」すなわち「神の国」を始めることを目論んでいたのだ。
 だからこそ安倍は全世界に向けて「アンダーコントロール」との嘘八百を吐き、高橋に嫌々悪事を働かせてでも五輪を東京に招致することに拘ったのだろう。
 そして日本国内で東京五輪を仕切れる企業は電通の他に存在しないため、安倍は自身にとって重大な意義を有する東京五輪の成功を電通に託す他ない。ゆえに安倍は電通に〝チップ(心付け)〟として血税を差し出したとも言えよう。
 所詮、安倍にとって血税は「国民から毟り取ったカネ」。それを電通が大量に吸い上げたところで冷酷非道な売国奴国賊の安倍個人は痛くも痒くもない。むしろ電通血税を大量に吸い上げてくれた方が「恩を売れる」とでも考えていたのではないか。

「政商」電通

 一方、利益至上主義の「政商」たる電通はカネ儲けが出来れば何も文句はない。
 電通の石井直社長(当時)は五輪の東京招致が決定した際、社員に向けたメールで「電通は次期東京オリンピックで、売上高1兆円を達成する」との訓示を出したという。
 このことからも「復興五輪」「コンパクト五輪」などというフレーズはまやかしに過ぎず、電通がありとあらゆる手法で莫大な利益を上げることを目論んでいたことは明白だ。
 加えて東京五輪を仕切って政府に恩を売ることができれば、巨額の血税が投じられる政府事業を新たに受注できる可能性も高まる。

真相解明を

 こうして見れば、目下世間を騒がせている東京五輪を巡る数々の不祥事が〝安倍・自民党電通が相互に利用し合う癒着構造〟に起因して発生したことがよく解ろう。電通単体でここまで大それた悪事を働くことはできない。
 しかし両者の邪な目論見は「総罰」たる新型コロナウィルスの感染拡大、そして安倍の横死という諸天の鉄槌が決定打になって潰えた。
 今後、特捜部は圧力に屈することなく徹底捜査を尽くし、東京五輪の深い闇を全て明らかにしてもらいたい。(天皷)