世相閻魔帳

顕正新聞のコラム「世相閻魔帳」

安倍の〝おもちゃ〟にされた河井案里

世相閻魔帳㉙「顕正新聞」令和4年2月25日号

 令和元年七月の参院選で発生した「河井事件」(大規模買収事件)の犯人であり、すでに公職選挙法違反で有罪(懲役一年四ヶ月、執行猶予五年)が確定して当選無効となった河井案里が、令和四年一月二十日、都内の自宅マンションにおいて睡眠薬を大量に服用して自殺を図り、救急搬送された。命に別状はなかったという。
 公判で案里は、長らく「うつ状態」で適応障害を患っている旨を供述していたが、事件発覚後は症状悪化に拍車がかかっていたように窺われる。
 夫の克行も懲役三年、追徴金一三〇万円の実刑判決が確定。現在は塀の中にいる。
 犯罪に手を染めた河井夫妻に同情の余地はないが、後述する事情を考慮すれば、河井夫妻(殊に案里)は安倍晋三の私怨を晴らすための「捨て駒」に過ぎなかったとも言い得る。

河井事件の発端は安倍の私怨

 河井事件の発端は、安倍が〝仇敵〟である溝手顕正氏(国家公安委員会委員長、防災相、自民党参議院議員会長等を歴任した自民党重鎮)の落選を画策したことにあると言われている。執念深い安倍は、平成十九年の参院選で惨敗した際、溝手氏から「首相本人の責任」と批判され、平成二十四年二月には「もう過去の人だ」などとこき下ろされたことをずっと根に持っていたという。
 令和元年七月の参院選で広島選挙区に溝手氏が立候補すると、安倍は溝手氏を落選させるため、自身の補佐官を務めた克行の妻・案里を溝手氏と同じ選挙区に〝刺客〟として送り込んだ。
 安倍と克行の関係は、平成二十四年の自民党総裁選の際、克行が「安倍支持」を早々に表明して安倍陣営に入り込んだことに始まったと言われている。そこでの働きぶりを安倍に評価されたことで、克行は第二次安倍政権の中枢に食い込むことに成功。それまで克行はパッとしない政治家だったが、安倍のおかげで世間からの注目度もアップした。
 かかる経緯ゆえに安倍に諂う克行は、安倍の意向を汲み、溝手氏を落選させて案里を当選させるべく、約二九〇〇万円をバラまいて票の買収をする犯罪に手を染めた。
 買収原資は、自民党本部が河井夫妻に提供した異例の大金「一億五千万円」の可能性が高い。この大金は党本部と言うよりも、当時総裁だった安倍が提供したと言うべきだろう。
 党本部からの一億五千万円の支出をスッパ抜いた「週刊文春」は「党の金の差配は幹事長マターですが、河井陣営への1億5千万円にのぼる肩入れは安倍首相の意向があってこそです」との自民党関係者の話を紹介している。実際、カネが振り込まれる度に、安倍と克行は単独で面会していた。
 安倍も安倍事務所から筆頭秘書・配川博之ら複数名を広島に派遣し、克行からカネを受け取った相手のもとを訪問して案里の支援を要請して回らせたり、自ら広島に駆け付けて案里の応援演説をしたりと、溝手陣営の切り崩し及び案里の支援に全力を尽くした。
 地元の政界関係者は「この安倍事務所の秘書らが先頭に立って、溝手氏の支持団体を切り崩し、次々と案里陣営に寝返らせていった。また、案里氏の応援演説の際には、溝手氏の所属派閥代表で広島県連のリーダー的存在でもある岸田氏を自分と一緒に立たせ、案里氏を応援させるという、ありえないことまでやっていた。このときは、そのかわりに、安倍首相は横で満足そうに『令和の時代のリーダーは岸田さんだ』ともちあげていましたが……」と証言していた。
 結果、安倍が総力をあげて支援した案里が当選し、溝手氏は落選した。しかし、買収の事実が露見したことで河井夫妻は刑事訴追され、夫妻揃って有罪が確定した。

権力闘争のおもちゃ

 先日出版されたノンフィクションライター・常井健一氏の書籍「おもちゃ 河井案里との対話」(文藝春秋)には、案里が常井氏に送信したメールの一節が紹介されていた。
 「黒川さんも私も同じように権力闘争のおもちゃにされてしまって、権力の恐ろしさ痛感します」と。
 常井氏は、案里の中には「黒川が検事総長になれば、自分の嫌疑も晴れるかもしれないという淡い期待もあるように思えた」と前記書籍に記している。
 思うに、河井夫妻が大規模かつ大胆な買収行為に及んだのは、それが「溝手氏を落選させる」という安倍の意向に沿うものである以上、犯行が露見したとしても、安倍と「官邸の番犬」が守ってくれるという安心感のようなものがあったからではないだろうか。
 もっとも、黒川は「賭けマージャン」発覚を受けて辞任、賭博罪で略式起訴されて罰金二十万円の略式命令を受けている。黒川が辞任したことで自身の様々な疑惑を追及されることに恐怖した安倍は、令和二年八月、仮病を使って首相を早々に辞任する〝緊急避難〟に及んだ。かくして河井夫妻を守る者は消え失せ、断罪されたわけである。
 余談だが、克行は幼少の時にキリスト教の洗礼を受け、一日に二度の祈りを欠かさず、ローマ教皇の来日実現に向けて奔走するほどゴリゴリのクリスチャンだという。
 克行は公判でも「神の前で誠実であることが第一」などと世迷い言を吐いていたが、令和三年九月二十二日、夫妻連名で自民党に〝買収原資は一・五億円ではない〟と結論付ける欺瞞だらけの報告書を提出している。〝誠実さ〟など欠片もないではないか。
 どうやら克行にとって、今なお安倍は自身の信仰対象よりも上位の存在らしい。安倍からすれば、河井夫妻ほど扱いやすい「おもちゃの兵隊」は無かったことだろう。

安倍の冷酷さと無責任

 安倍の冷酷さは「森友事件」の対応を見ても一目瞭然だ。
 安倍は「私や妻が、もし小学校の設立や国有地払い下げに関与していたら、総理大臣はもとより国会議員も辞任する」と答弁して大見栄を切ったが、その直後より財務省で公文書の改ざんが行われ、改ざん作業を強いられた近畿財務局職員は自責の念に耐えかねて自殺してしまった。
 財務省の調査報告書には、安倍の答弁が改ざんの発端となった旨が記載されているにもかかわらず、安倍は「答弁が改ざんのターニングポイントとは(赤木氏の)手記に書いていない」と平然と開き直っている。これほど冷酷な政治家は他にいないだろう。
 また、安倍は河井夫妻が逮捕されたあとの記者会見でこのように述べている。
 「本日、我が党所属であった現職国会議員が逮捕されたことについては、大変遺憾であります。かつて法務大臣に任命した者として、その責任を痛感しております。……この機に、国民の皆様の厳しいまなざしをしっかりと受け止め、我々国会議員は、改めて自ら襟を正さなければならないと考えております」
 よくも、いけしゃあしゃあと他人事のように言えるものだ。現職の国会議員二人が公職選挙法の買収の罪に問われて同時に逮捕され、ことに夫の克行は前法務大臣という前代未聞の事件である。
 しかも、この事件は安倍が己の私怨を晴らすために二人を利用したのではないのか。安倍は、河井夫妻の哀れな末路を見ても何ら痛痒を感じないだろう。もはや河井夫妻のことなど頭の中に一ミクロンも残っていないのではないか。
 この男には、政治家として国家・国民を思う志など微塵もなく、ただ国政を私物化してオトモダチを優遇するだけの個利個略しかない。しかも、己に累が及ぶとなれば子分ですら切り捨てる。
 このようなゲス男が未だに政界で幅を利かせていること自体、日本にとって害でしかない。日本を穢す汚物は早く塀の中にぶちこむべきである。(天皷)

日本を財政破綻に陥れるアベノミクスの大罪

世相閻魔帳㉘「顕正新聞」令和4年2月15日号

 一月度総幹部会において浅井先生は
 「まさに米国の利上げが始まる本年こそ、日本が金融崩壊・経済崩壊へ向かうターニングポイントになる」
 と指導下されたが、今一度、アベノミクスで日本を財政破綻に陥らせる安倍晋三の大罪について、簡単に整理しておきたい。

大失敗のアベノミクス

 アベノミクスとは、第二次安倍政権が「大胆な金融政策」「機動的な財政政策」「民間投資を喚起する成長戦略」を「3本の矢」として打ち出した経済政策である。
 日本銀行(日銀)に異次元金融緩和を推進させるにあたり、経済オンチの安倍はアベノミクスの指南役としてイェール大学名誉教授の浜田宏一内閣官房参与に任命し、日銀の総裁に黒田東彦を据えた。
 日銀はデフレ脱却のために2%の物価目標を掲げて異次元金融緩和を行ったが、結局、何年やっても物価は上がらなかった。むしろ、当初2年で終わらせると言っていた大規模な金融緩和を8年以上もの間ズルズルと続けた結果、日銀の財務内容を著しく悪化させるという最も深刻な副作用をもたらした。
 令和4年2月現在、日銀は523兆円とGDPと同等の国債保有するに至った。仮に日銀が短期金利を1・2%に引き上げるだけで、毎年度5兆円の損失を被ることになると指摘する学者もいる。日銀の自己資本は10兆円しかないので、1・2%の短期金利を2年程度維持するだけで日銀は債務超過に陥るという。
 また、日銀はETF(上場投資信託)を通じて日本株を大量に購入し続け、日本の株高を演じ、株価維持に励んできた。その結果、令和4年2月現在で36兆円ものETF保有するに至った。仮に日本の株価が暴落すれば、日銀は当期赤字、或いは債務超過に転落することにもなり得る。
 主要国の中央銀行ETFを通じて価格変動の大きな株式を購入した事例は他にない。日銀が行っている金融政策はそれほどまでに異常なのだ。
 このようにアベクロコンビがやってきた異次元金融緩和により、日銀は永遠にデフレ・株高でないと持たない状況に陥ってしまった。

進退両難に陥る日銀

 そうしたところに、今般のアメリカをはじめとする世界的なインフレ局面に直面してしまった。黒田が「金利を上げられる状態にはない」と言ったところで、アメリカ等の主要国が利上げをしていった時、日本だけ「利上げをしない」では済まされない。
 アメリカの金利が上昇して日本との金利差が拡大すれば、お金は低金利の日本から高金利アメリカに流れるため、円が売られドルが買われて円安となる。たとえ国内経済が弱くても、円安によって輸入物価等が上昇すれば国内物価も上昇に転じる。
 その時、中央銀行短期金利を引き上げられなければ、国内の物価上昇は抑えられず、一段と円安が加速する。財政事情が悪い日本から大規模な資金流出も起きかねない。生き馬の目を抜くような海外の投機筋が円売りを仕掛け、激しい円安となることも予想される。
 かくて賃金が上がらない国民の生活は「悪い物価上昇」に喘ぎ、ひいては激しいインフレに見舞われる。
 一方、日銀が金利を上げれば、前述の通り日銀自体が「債務超過」に陥ってしまう。
 債務超過に陥った中央銀行の紙幣は信用を失い、紙くず同然となる。主要国の中央銀行債務超過など前代未聞の事態だ。
 同時に長期金利が上昇して国債価格が下落すれば、GDPの2倍を超す1200兆円もの巨額債務を抱える政府は、国債の利払いと借換債の発行が出来なくなり、財政危機に向かう。
 このように、物価が上昇してきたときに短期金利を上げなければ「悪い物価上昇」、かたやそのとき金利を上げれば日銀の「債務超過」、まさに進退両難である。

アベクロのタバカリ

 本年四月以降、物価上昇率が目標の2%に到達することが確実視されているが、黒田は2023年度中の「物価上昇率2%」の達成はないと平然と否定している。まさかとは思うが、政策失敗の事実を隠蔽するため、国交省厚労省のようにデータを「改ざん」して物価上昇率を誤魔化す腹積もりなのかと勘ぐりたくなる。
 一方、安倍は、矢野康治・財務事務次官の「このままでは国家財政は破綻する」との捨身の論文を攻撃することで、アベノミクスの失敗を誤魔化そうとしている。具体的には
 「あれ(矢野氏の論文)は間違った見解だよ。日本国債は自国通貨建て(円建て)なんだから、デフォルト(債務不履行)などはない。ああいう形で発表するのは非常識だ」
 「借金を全部背負っているのは日本銀行だ。荒っぽい言い方だが、日本銀行は国の子会社。立派な中央銀行だが、5割は政府が株を持っているから、連結決算上は債務で
はないという考え方も成立する」と。
 バカも休み休み言え。〝一万円札を無限に印刷できる「打ち出の小槌」の日銀が赤字国債を買えなくなる事態など起こり得ない。政府と日銀は一体だから(日銀の私物化は完了したから)、国は日銀に借金を全額背負わせて無限に借金でき、返済の必要もない〟と言いたいらしいが、この理屈がまかり通るのであれば、国家運営に税は一切不要という話になる。
 また、財政法第五条は、先進各国と同様、政府が借金をするため新たに発行した国債(新発国債)を日銀が直接引き受ける「財政ファイナンス」を明確に禁止している。その理由は、財政ファイナンスを行った第一次大戦後のドイツ等が天文学的なハイパーインフレに襲われた教訓を踏まえ、「中央銀行の独立性」を高めるためだ。
 安倍のトンデモ発言は財政ファイナンスを事実上容認し、中央銀行の独立性を完全否定するものに他ならない。

氷山に激突寸前の日本

 矢野氏は先の論文で、「今の日本の状況を喩えれば、タイタニック号が氷山に向かって突進しているようなものです。氷山(債務)はすでに巨大なのに、その山をさらに大きくしながら航海を続けているのです」「このままでは日本は沈没してしまいます」と記している。
 安倍のペテン政治によって、日本国民は8年近くもアベノミクスが成功しているような虚偽の景色を見せられてきたが、実際には安倍が作り上げた巨大な氷山に激突寸前、沈没不可避の状況に追い込まれている。
 本年からは、総罰たる新型コロナウィルスの感染拡大に起因する〝米国の利上げ〟という大波が日本に押し寄せてくる。氷山までの距離は一気に縮まった。
 文字通り国を亡ぼす行為に及んだ亡国の政治家・安倍の罪は極めて重い。政界から追放し、絶海の孤岩にでも追いやらねばならない。(天皷)

国交省統計改ざん発覚で馬脚を露わすアベノミクス

世相閻魔帳㉗「顕正新聞」令和4年2月5日号

 令和3年12月、国が特に重要と位置付ける基幹統計の一つで国内総生産(GDP)の算出等にも使われる「建設工事受注動態統計」(建設業者が公的機関や民間から受注した工事実績を集計したもの)を、国交省が不正に改ざんしていたことが発覚した。
 改ざんして数字を大きくすれば、その分GDPが増加する。GDPの増加は日本経済が成長したことを意味する。つまり、改ざんして数字を大きくすればするほど、日本経済がどんどん成長しているかのように偽ることができる。
 国交省は、都道府県の担当者に対し、「すべての数字を消す」「全ての調査票の受注高を足し上げる」などと指示し、建設業者が提出した調査票(原票)に記載された数字を「消しゴム」で消し、より大きい数字に改ざんしていた。
 第二次安倍政権発足後の平成25年4月からは「二重計上」も行われた。
 安倍は、期限までに提出がなかった事業者のデータをゼロとして処理する従来のルールを変更し、ゼロではなく「推計値」を入力するようにさせた。
 一方、都道府県は、期限に遅れて提出されたデータを翌月以降に合算するよう指示していた。ために、同じ業者について「推計値」と「遅れて提出されたデータ」の二つが計上されることとなった。
 令和元年11月、改ざんに気付いた会計検査院が注意したことにより、都道府県の担当者による改ざんは中止されたが、国交省の本省職員らは、会計検査院から指摘を受けてもなお改ざんを続けていたというから狂っている。
 統計法60条は「基幹統計の作成に従事する者で基幹統計をして真実に反するものたらしめる行為をした者」を、「六月以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する」と規定している。改ざんは歴とした犯罪で、大問題であることは論を俟たない。
 しかるに、政府に諂う大手メディアは、未だに国交省の統計改ざんを「不正問題」「書き換え」などと甘ったれた言葉で報じ、事件の矮小化をアシストしている。何とも情けない。

改ざんの影響は甚大

 政府は、統計改ざんによって〝かさ上げ〟されたGDPについて「影響は軽微と判断している」と嘯いていたが、これは真っ赤なウソだ。大体、正しい数字を消してしまっている以上、影響の軽重など判断できるはずがない。
 しかも、直近の令和3年度の統計について、朝日新聞が公表データを基に複数の専門家の助言を得て試算したところ、なんと同年度の統計が約4兆円も過大になっていることが判明した。4兆円という金額は実績全体(79兆5988億円)の5%にも相当する。
 会計検査院から指摘を受けた後、国交省の本省職員だけが改ざんするようになってからの過大分が4兆円となると、都道府県の担当者も改ざんを行っていた平成25年度から令和元年度の過大分は、より大きい金額であることは疑いない。
 結局、第二次安倍政権発足以降、政府が国内・国外に向けて公表してきたGDPやGDP成長率は、その全てが改ざんされたデータを前提とするデタラメな数字だったわけだ。

目的はアベノミクスの成果捏造

 では、国交省の職員が統計改ざんに手を染めた目的・理由は何か。
 国交省の職員にとって、建設業の受注実績の良し悪しは自身と全く関係がない。ゆえに、国交省の職員には、懲役刑等になるリスクを背負ってまで全国の業者が提出した正確な数字を改ざんする理由など全くない。
 そうすると、森友事件において財務省が公文書を改ざんした事件と同じく、統計改ざんも政権の意向が働いたと考えるほかない。
 要は、「アベノミクスによって経済が大きく成長した」との〝虚偽の演出〟をする目的で、政権の指示、または国交省が安倍の強い意向を忖度し、国交省の職員が統計改ざんに手を染めたというのが事の真相だろう。
 会計検査院から指摘を受けた後も、国交省の本省職員が改ざんを強行していた理由は、全ての改ざん作業を一時に中止すると「アベノミクスの失敗」が露呈するとの懸念から、中止しようにも中止できなかったのではないか。
 実際、第二次安倍政権発足以降、安倍のために改ざんを続けてきたと思しき国交省総合政策局の局長は現職を含めて9名いるが、全員揃って国交省事務次官や復興庁事務次官等に大出世を遂げている。
 これまさに、統計を改ざんしてGDPをかさ上げし、アベノミクスのペテンに加担したことに対する〝論功行賞〟であることは疑いようがない。

安倍ペテン政権の大罪

 安倍の政策の一丁目一番地はアベノミクスであるから、その失敗が露呈すれば、政権の崩壊のみならず、安倍個人の政治生命終焉に直結し得る。
 だからこそ、安倍はGDPのかさ上げに躍起になっていたのだろう。
 あまり知られていないが、安倍は平成28年に〝GDPの算出方法変更〟という大胆な奇策まで弄している。
 振り返れば、平成30年には、厚労省の「毎月勤労統計」(GDPの算出等に使われる)も、統計をまとめる過程で不正が発覚していた。今後、他の省庁においても不正に手を染めていた事実がどんどん明るみに出るかもしれない。
 言わずもがな、統計や公文書は国家・国民が共有する知的資源であり、それらは客観的なデータ・事実を正確に記録したものであることが大前提だ。
 時の権力者が私利私欲のために改変、改ざんすることは断じて許されず、公務員も「国民全体の奉仕者」である以上、権力者の横暴を断固阻止しなければならない。
 しかるに、安倍政権以降、こうした常識・大原則は尽く破壊され、公務員が政府の意向で公文書や統計を改ざん・隠蔽する異常事態が相次いでいる。加えて、大手メディアまでも政府に諂う有様。この国が腐りつつあることは火を見るよりも明らかだ。
 諸悪の根源である安倍を早急に政界から追放、いや逮捕する必要がある。(天皷)

学会・公明党に甚大な影響もたらす遠山問題

世相閻魔帳㉖「顕正新聞」令和4年1月25日号

 昨年十二月二十八日、東京地検特捜部は、公明党衆議院議員で元財務副大臣遠山清彦ら四名を貸金業法違反の罪で起訴した。
 遠山といえば、昨年一月、新型コロナウィルス感染拡大に伴う緊急事態宣言が発令されている最中、銀座の高級クラブに深夜まで滞在していたことが発覚したほか、資金管理団体からキャバクラ代まで支出していたことも判明し、議員辞職した破廉恥漢だ。
 学会・公明党関係者は、創価高校創価大学卒という経歴を有する遠山を「公明党ホープ」「公明党のプリンス」「次世代のリーダー」などと絶賛し、その将来を大いに期待していた。
 その遠山が議員辞職、加えて刑事裁判にかけられることが決まったのだから、学会・公明党が受けるダメージは計り知れない。
 公明党は遠山を除名処分にするなどしてダメージ緩和を図っているが「時すでに遅し」だ。今後ますます学会崩壊に拍車がかかることは必至であろう。

遠山らの犯行手口

 遠山らが犯した事件について簡単に説明する。
 「貸金業法違反罪」は「ヤミ金融」を想定した犯罪。ヤミ金融とは貸金業の登録をしていない業者、或いは、登録はしているが法外な金利で貸付を行う業者のこと。暴力団の資金源となる場合が多いため、規制や罰則の強化が社会的に要請されている。
 なぜ、遠山らがヤミ金融を取り締まる貸金業法違反罪で起訴されたかというと、財務副大臣だった遠山らは、貸金業の登録を受けないまま、つまりヤミ金融として、百回以上にわたり、日本政策金融公庫(財務省所管の特別会社)の「新型コロナ対策の特別融資」を複数の企業に仲介していたのだ。
 しかも、遠山らは複数の企業に「国会議員の紹介でほぼ確実に融資を受けられる」などと話を持ち掛け、融資が下りた後は「大きな声じゃ言えないですけど、菓子折りの中の現金も歓迎です」などと言って、口利きの見返りとして融資額の三ないし五%のカネを要求、合計一千万円余も懐に収めた。
 そのカネで遠山は高級クラブに通っていたのだろう。遊び人の「遠山」といえば「この桜吹雪に見おぼえがねぇとは言わせねぇぜ!」と悪人たちを処断していく江戸町奉行の「遠山の金さん」が想起されるが、遠山清彦は裁きを受ける悪代官だったようだ。

検察の過剰な忖度

 しかし、一連の事実関係を前提にすれば、今回の事件は「貸金業法違反」ではなく「贈収賄」(汚職事件)として事件化し、遠山を逮捕して徹底的に捜査すべきだったと言える。
 実際、東京地検特捜部は、当初は職務権限の指示に基づく贈収賄での事件化を目指していたようだが、結局は遠山を逮捕しないまま、国民が耳慣れない「貸金業法違反罪」で起訴するという大甘処分を下した。
 〝遠山が汚職事件で逮捕・有罪となれば、公明党は大打撃を受ける。そうすると、学会票が無いと選挙に勝てない自民党も困る。夏の参院選に影響が出てはマズイ。汚職事件にはせず、遠山の逮捕もしないまま別の罪で起訴してパッと終わらせよう〟との特捜部の下心が見え見えだ。
 このような過剰な忖度こそ「厳正公平・不偏不党」を理念とする検察の正義が地に堕ち、時の政権に尻尾を振るだけの番犬集団に成り下がった証左といえる。
 腑抜けたマスコミと同様、権力に媚び諂う検察もまた日本を狂わせている原因の一つだ。全く以てだらしない。

秘伝の汚い手口

 今回、遠山と共に起訴されたのは、元公明党最高顧問・藤井富雄(昨年七月死亡)の側近だった牧厚、公明党衆議院議員太田昌孝政策秘書だった澁谷朗、複数の金融機関から約二十二億円も騙し取った会社「テクノシステム」の顧問だった川島裕の三名。
 殊に、牧は「テクノシステム」の元顧問でもあり、今回起訴された後も「何が悪いことなのか納得いっていない」と平然と言い放つ札付きの男だが、この男こそ遠山の応援団長でスポンサーだったというから聞いて呆れる。
 その牧と遠山を繋げ、遠山に口利きの手法を伝授したとされる人物が、元公明党最高顧問で「池田大作に最も近い議員」と言われた故・藤井富雄だ。
 藤井は、「闇の帝王」と呼ばれた元学会顧問弁護士・山崎正友の造反後、池田の意を受けて山崎が行っていた日本最大の暴力団山口組傘下の「後藤組」との交渉等の〝黒い仕事〟を引き継いだ正真正銘の悪党だ。
 思うに、遠山は反社会的勢力とも繋がる藤井から「闇の帝王学」とでも言うべき〝国を食い物にして学会員に様々な恩恵を与えるための手法〟を伝授され、一部の学会・公明党関係者にとって使い勝手のよい「ATM」に変貌したのではないか。
 実際、牧は企業に融資話を持ち掛ける際、「遠山先生が副大臣であるうちにパワーを使わないと」と口にしていたという。
 余談だが、昨年公明党がブチ上げて著名な評論家等が「天下の愚策」と断じた「十八歳以下への十万円給付」も、選挙に協力してくれた学会員への見返りという側面が強い。国からカネを引っ張り出して学会員に恩恵を与えるという手口は、学会の政治部たる公明党の十八番と言えそうだ。
 そうすると、かかる手口に長けた遠山が「次世代のリーダー」「次の次は党代表」として学会・公明党関係者から絶賛され、持ち上げられていたことも合点がいく。
 所詮、遠山の正体は〝カネ・女・酒に溺れた典型的なクズ〟でしかない。理由はどうであれ、このようなクズを持ち上げていた学会・公明党の程度の低さには失笑を禁じ得ない。
 いずれにせよ、遠山問題が学会・公明党に及ぼす影響は底知れない。本年夏の参院選が見物である。(天皷)

一億円もの血税で安倍晋三を守った国の卑劣

世相閻魔帳㉕「顕正新聞」令和4年1月15日号

 森友問題で公文書の改ざんを強いられた近畿財務局職員・赤木俊夫氏の妻である雅子さんが国を相手取って一億一千万円余りの損害賠償を求めた裁判で、令和三年十二月十五日、国は徹底抗戦の構えを一転させ、雅子さんの請求を「認諾」した。
 「認諾」とは、訴えられた者(被告)が訴えた者(原告)の請求を全面的に認め、賠償金を全額支払い、原告勝訴という形で裁判を直ちに終結させる手続のことをいう。
 国の「認諾」によって、約一年九ヶ月にわたる裁判は雅子さんの勝訴で終結した。
 国が賠償責任を全面的に認めたことは良い判断で、雅子さんにとって望ましい結果になったと思う人がいるようだが、決してそうではない。勘違いをしてはならない。
 かかる国の所為は卑劣極まりなく、許されざるものだ。雅子さんは「ふざけんな」と憤っている。なぜか。以下、詳述する。

卑劣極まる〝認諾〟

 はじめに、雅子さんが国を訴えたのは「夫がなぜ死んだのか」を知るため、つまり俊夫氏が自殺を余儀なくされた原因と経緯、俊夫氏の抵抗に財務省がどう対応したか等について、裁判手続を通して明らかにするためだった。
 検察が安倍晋三元首相らに忖度して公文書改ざんに関与した財務省関係者を全員不起訴とし、政府も森友事件の再調査を断固拒絶している以上、真相に迫る術は国に対する裁判しかない。
 しかし、裁判では相手に対して「事件の真相を話せ」とストレートに請求することができないルールとなっている。そのため、真相に迫るためには、「賠償金を支払え」という形で相手を提訴して、裁判内の手続で相手が所持する資料の提出や事件関係者に対する尋問の実施を求めていくしかない。
 ゆえに雅子さんは、俊夫氏の死の真相に迫るために国家賠償請求訴訟を起こした。何もお金が欲しかったわけではない。
 当然、国は雅子さんが提訴に踏み切った目的等を百も承知している。しかし、事件の真相を隠蔽したい国にとって、雅子さんが起こした裁判は迷惑以外の何物でもない。裁判が続けば隠蔽した資料の提出や公文書改ざんに関与した財務省関係者に対する尋問の実施は避け難く、不都合な事実が次々と明らかになるおそれがあるからだ。
 かくして国は約一年九ヶ月にわたり、資料を「探索中」と誤魔化すなどして出し渋り、裁判を遅延させるという姑息な戦略も用いながら徹底抗戦を続けてきた。
 しかし、本年二月以降に財務省関係者の尋問等を実施することとなり、国がどう足掻いても尋問は避けられない見通しとなったという。
 そこで今般、国は背に腹は代えられないゆえに、雅子さんの請求を「認諾」するという〝奇策〟に打って出た。
 要するに、国自ら「全面敗訴で構いません」と宣言し、税金で賠償金一億一千万円余りを雅子さんに支払って、裁判を即時かつ強制的に終結させ、森友事件の真相に迫る唯一の道を完全にシャットアウトしたのだ。卑劣・非情な仕打ちと言うほかない。
 〝敗訴の汚名も何のその。森友事件の真相に蓋をして揉み消せるのなら一億円なんて安い安い。その原資は国民から徴収した税金だから、俺たちの懐を痛めるわけではない。遺族の気持ちなど知ったことか。急いで認諾してしまえ〟
 そうした打ち合わせを国の関係者らが謀議している様がありありと目に浮かぶようだ。

「認諾」は最終手段

 余談だが、国は、裁判を通して国にとって極めて不都合な事実が明らかになりそうになると、徹底抗戦の構えを一転して「認諾」することが稀にある。
 過去の例を示す。あるNPO法人は、日米両政府間の協議機関であり、一部からは〝日本政府の上に君臨する闇の組織〟とも言われている「日米合同委員会」の議事録を情報公開請求するも「不開示」だったため、国を提訴した。
 当初、国は徹底抗戦の構えだったが、日米当局間のメールの内容を裁判官が閲覧する手続の実施が決まった途端、突然「認諾」して裁判を強制的に終結させ、同手続を回避している。
 このように、「認諾」は裁判で国が隠蔽したい事実・情報の漏洩を防ぐときに用いられる最終手段なのだ。

不都合な真実

 では、国が雅子さんとの裁判、すなわち森友事件について最終手段に及んでまで隠蔽しようとした事実は何だったのか。
 そもそも、森友事件は園児に「教育勅語」を朗唱させるなど愛国教育をしていた「森友学園」(理事長は日本会議大阪の役員であった籠池泰典氏)の教育方針に共鳴した安倍晋三が、同学園にほとんどタダ同然で国有地を払い下げるよう仕向けた疑いのある事件だ。
 その疑惑を裏付けるかのように、財務省は安倍が国会で「私や妻が、もし小学校の設立や国有地払い下げに関与していたら、総理大臣はもとより国会議員も辞任する」と大見栄を切った直後より、国有地取引の経緯を記した公文書を改ざんした。
 具体的には、現在、明らかになっていることだけでも、学園の理事長・籠池泰典氏が所属していた日本会議大阪と日本会議の関係、「日本会議国会議員懇談会」の副会長に安倍が就いていること、同懇談会の会長・平沼赳夫が秘書を通じて財務省に圧力をかけたこと、安倍の妻・昭恵が籠池氏と一緒に現地の前で並んで写真撮影したこと、昭恵が森友学園の教育方針に感涙したことを紹介する記述等を削除したのだ。
 こうして見ると、財務省が公文書改ざんに及んだ理由は、偏に安倍の政治生命を守るためだったとしか考えられない。その挙句、改ざん作業を強要された俊夫氏は自殺に追い込まれた。
 要するに、「悪事を企む時の最高権力者の政治生命を守るという下劣な理由で、国が真面目な近畿財務局の職員を死に追い込んだ」という国による殺人行為、これこそ国が隠蔽したい事実ではないのか。そうであれば、諸悪の根源である安倍が未だに政界にのさばっていることは断じて許されない。
 しかしながら、岸田首相は安倍に諂ってか森友事件の再調査を拒絶している。今般の「認諾」もその前日に報告を受けていた。「『聞く力』は誰よりも優れている」と宣う岸田は、雅子さんの悲痛な叫びや国民の怒りの声を聞く力は皆無らしい。
 また、国家権力を監視すべき大手マスコミは政府の広報機関に成り下がり、森友事件における安倍の責任等を厳しく追及しない。かかる腑抜けた報道姿勢がこの国を狂わせている原因の一つである。
 安倍の逃げ切りを絶対に許してはいけない。(天皷)